sanso114の日記

日々気になったことを気楽に書き留めています。

懐かしく青い日々(29)・・・R2年1.23④

          第3章  その8

 

        成績に上がり下がりは付き物で
        一喜一憂し過ぎないこと

 

 高2になってから成績が急激に上がった藤沢慎二は、成績においては他人から十分に意識される存在になった。そのときに同じクラスになった下山学は、定期試験の答案が返される度に慎二の得点を確かめに来るようになった。

 高2の間ずっと、慎二は下山より下になることはなく、試験の結果が分かる度に下山は大袈裟に悔しがって見せた。

 高3では違うクラスになったが、それでも下山は慎二をライバル視していたようで、何時も成績を確かめに来ては、その都度やはり同じ様に悔しがった。

 そして、何時の間にか慎二はすっかり、出来る方だと自負するようになった。

 高3の夏の終わりの実力試験で慎二は、自分には漸く実力も伴うようになったと自信を持つようになる。

 秋に受けた旺文社の実力試験でも高得点を取り、北河内高校の理系で3番になり、国立浪速大の理学物理学科を目指す受験生の中でも22番になった。定員が40名であることから考えると、全受験生が受けたのではないにしても、かなりの可能性がある。旺文社が弾き出した合格率も75%以上になっていた。

 それで調子に乗ったのか? 冬休み中に四天王寺にある予備校まで受けに行った模擬試験では物理の応用問題で引っ掛かり、合格率が25%から49%の間にまで落ちてしまった。予備校系の模擬試験で少しはひねりが効いていたとしても、あっさり引っ掛かってしまったのである。

 慎二に比べて柔道部で同学年の優等生、松本昭雄、それに下山はすんなり通過出来たようである。学校が始まって確認してみると、両者とも同じ試験を受けていて、慎二が引っ掛かったところは既に当時流行りの参考書、「親切な物理」で勉強していたので簡単に出来たと言う。それに、総合点でも2人とも慎二を上回っていた。

 元々実力的には自分より上だと思っていた松本は兎も角、下山にまで抜かれて、慎二はすっかり落ち込んでしまった。

 

        落ち込んだ我を励ます友の手の
        温もり感じまた立ち上がり        

 

 嗚呼、後1か月ちょっとしかない。それなのに、まだまだ応用問題には手が付いていない。分からないところだらけやぁ。一体どうすればええんやぁ~!?

 慎二はすっかり地に足が着かなくなってしまったが、それがはっきり分かったのか、帰りの電車で隣り合わせた松本が慎二の膝に手を置きながら、力を込めてゆっくりと言う。

「藤沢、もしかして落ち込んでないやろなあ!?」

「いや、そんなことないよ・・・」

 その時は気弱な笑いを浮かべながらそう返すのが精一杯であったが、慎二はそれでまた何とか勉強が手に付くようになった。