sanso114の日記

日々気になったことを気楽に書き留めています。

台風一過(エピソード30)・・・R2.2.19②

            エピソード30

 

 弓道は元々武術の中のひとつ。その戦う、或いは闘う為の技術、および道具である弓矢に、所作、精神、空気と言ったものが加わり、更にそれが渾然一体となって長い年月の間に昇華した結果、弓道となった。

 生物は生きる為に闘って行かなければならない。その生物の中でも動物は自らの体内で栄養分を作ることが出来ないから、何らかの動作を起こし、必要な栄養源を確保しなければならない。人間も動物の一種であるから、当然、自ら動くことにより何とか食べ物を得るしかないのである。

 初めは手や足、更に牙や歯、爪等まで動員して闘ったのであろうか? 他の動物に比べ、体の大きさの割に筋力が弱く、歯や牙、爪等も鋭くないから、単独かつ素手では不利だったのが容易に想像される。

 そこで並外れて発達した知能を使ったのであろうが、先ずは群れたり、手足や歯牙、爪等の代わりになりそうで、もっと強い物を探したりしたはずである。

 しかし、群れることによる効果はともかく、所詮人間の筋力など高が知れている。道具を手に持って使っている間はもどかしい思いもしたであろう。

 その時、もしかしたら弾みで手を離れた石器や骨角器の意外な動きや、意表を突いた効果がヒントになったのかも知れない。

 もしかしたら、手より足を使って飛ばした時の効果を知り、それがヒントになったのかも知れない。

 もしかしたら、弦にぶら下がって遠くに移動する動物を見て、意外な動きにヒントを得たのかも知れない。

 何れにしても、経験知に、私のような凡人では計り知れない融合が加わって、現在も見られるような弓矢へと結実して行ったのであろう。

 ただ、それだけでは単なる武器に過ぎず、それを扱う技術も武術に過ぎないが、そこに加わったのが魂、更に精神性である。これを発達し過ぎた脳の所為、すなわち自然な流れにして安心したがる輩も多いのが世の常ではあるが、それでは単なる原子や分子の集合が細胞となり、またその集合があるレベルを超えると勝手に魂が加わると考えることに不思議はないのか!?

 筆者のように自然を超えたものを畏れる古いタイプの人間にとっては、偶然に偶然が重なると、それはもう必然である。不思議に思い、畏怖、更に敬慕、敬愛へと進む方が自然なように思われる。

 幸い、原初の人間は純朴で健全であった。武器、武術をただ人間が生み出した闘う為の道具、技術としては捨て置かず、そこに呪術性、宗教性を加えた。

 何故先ず精神性が来ないのか? と疑問に思うかも知れないが、それはもう近代人故の傲慢さである。言葉も未分化の原初の人たちだからこそ、本質を見抜く鋭い勘が養われていたということも十分に有り得る。これをあながち否定し切れないのは、言葉を習得していない乳幼児や障碍児者にこの種の勘の鋭さが感じられるからである。彼らの、他人の悪感情、体に合わない食べ物等に対する激しい拒絶反応を見たとき、むしろ我々健常者に分類される大人の方にこそ、中途半端な知識故の危うさを思い知らされるであろう。そしてこの種の勘の鋭さは、精神性と言うより動物本来の霊性と言った方がより近いように思われる。

 近代になるに連れ、知識が確立され、技術が進んだ。また子どもという未発達、かつ未教育な存在がクローズアップされ、知識、技術を効率好く伝えるべく学校教育が発達した。その過程で言葉の世界では表し切れない呪術性、宗教性と言ったものは精製され、魂、精神性と言ったものへと昇華されて、武術も武道へと移行して行ったわけである。

 たとえば、我が国において相撲に勝るとも劣らないぐらい国技的とも言えるスポーツとなった柔道は、明治期に一等の知識人でもある嘉納治五郎の尽力によって柔術から引き上げられ、更に学校教育にまで取り入れられた。剣道や弓道合気道、空手道等にも、歴史や規模はともあれ、同様の過程があったはずである。

 話が大きく変わるようであるが、性および性教育に関しても同様のことが考えられる。

 いや、闘う前に生物は殖えなければならないから、むしろ闘うよりもっと大事なことで、此方が先に来るべきかも知れない。だからこそ性欲は、食欲、睡眠欲と合わせて、人間の三大本能のひとつとして位置付けられている。

 性行為は類人猿から分かれたばかりの原初の人たちにとって、コミュニケーションの一手段、更に歓びのひとつであるだけではなく、矢張り生殖と言う本来の意味から来る、或いは死と隣り合わせであることから来る畏怖の対象でもあり、呪術性、宗教性が加わっている。今でも我が国では古い神社の祭りとして彼方此方にその痕跡が残っているし、新興宗教における怪しげな儀式としても多々見られる。

 そこから霊性を取り払って倫理性を加え、性教育として学校教育に取り入れ出したところまで、遅れ馳せながら武道により近付いているのではないか!?

 そして何より筆者が言いたいことは、武道、性の道共に、実は未だに奥深く、広く霊性を含んでおり、果たして学校教育として飼い馴らすことが可能なのか? ということである。

 先にも簡単に触れたが、元々学校教育とは経験知、技術等を次世代に、効率よく、安上がりに伝えて行く為のものである。要するに、西洋科学に基づくマニュアル化、およびより広くの人に伝わり易い鋳型化の実践だとも言える。絵や音、言葉として表し得るからこそ、子どもにも容易に伝えられるのであるが、果たして霊性がそう易々と言葉になるのか!? と言うことである。

 筆者としては、完全否定まではしないが、かなり限られた範囲でしか無理ではないか? といささか後ろ向きな発言をしたくなる。関西人的にいわゆるええ格好しいの筆者は、表向き出来る限り前向きな発言で通したいタイプなのであるが、我が国の学校教育においてマニュアル化、鋳型化が更に進みがちな昨今、どうしても否定的にならざるを得ない。

 たとえば、性教育において、大勢の前に反り返って道鏡も真っ青になりそうな歌麿級の張り型を置き、順番に避妊具をはめさせているところを参観させて貰ったことがあるが、気恥ずかしくて頭がくらくらして来た。救いは若い指導教員が照れまくり、舞い上がっていたことぐらい。生徒たちも茫然自失。ただ淡々と従っていただけのように見えた。

 更に、経済的、社会的に妊娠が許されない今は出来る限り性交を避けた方がよいが、どうしてもそう言うことになったら、きっちり避妊しましょうねという、極めて現実的な指導をしながら、学校、社会において男女交際に神経質なほど縛りをかけ、昔ながらの純潔性も求めている混乱。当たり前の話であるが、社会的に見て決して得意とは言えない層の集まりであるように見える教員にとり、性教育は極め付けに扱い難い分野であるように思われる。

 要するに、性は歓び、畏怖等も伴ってこそ本当の世界が開け、それを排除した性教育は単に欲求不満解消術、危機回避術に陥ってしまいがちになる、と言うことである。

 或いは度を過ぎた不妊治療のように、あまりに理性的で機械的な性行為は、味もそっけもない、(本当はそれが一番大切なはずのに)極めて事務処理的な生殖行為に陥ることもある。

 声を大にして何度でも言う! 理性を超えてこそ本来の姿を見せてくれる、目くるめく性の世界を、現代における出来る限り行間を排除した言葉で表そうとしても、ごく一部、それも本質から遠い部分しか伝わり難いと言うことである。

 筆者にとっても大いに苦手科目であり、だからこそ惹かれ過ぎるきらいがある所為か、思わず熱くなってしまった・・・。反省。ここは努めて冷静に、霊性に感謝、感謝である。

 さて、そんなことには全く頓着なく、この話の主人公、藤沢浩太は今日も呑気に弓道の練習に打ち込んでいた。

 そしてクラブ活動が終わった後は、独りでグランドを黙々と走り込み、更に体育に重点を置いた学校でもある県立西王寺高校ならではのフィットネスマシンを使って、ウエイトトレーニングに勤しんだ。

 それは他の部員が帰った後、黙々と矢を射るそれは弓道部顧問の安曇昌江を待つ為であった。浩太は既に、一端のナイトの気分になっていたのである。勿論、昌江が練習を終えた後は、この頃の習慣になりつつある、王寺駅近辺における2人だけの夕食を楽しむのであろう。

 しかし、2人とも今はそれで十分なのか? 決してそれ以上は進もうとしなかった。お互いが相手を大事に思い、また今の時間を今しか出来ないことで楽しみたかったのである。

 何も頭ではっきりと考えたわけではない。特に浩太はそうで、何となく、それ以上求めると、全てが壊れてしまいそうで、怖かったのである。それを言葉があまり得意ではない彼特有の勘が鋭く教えていた。

 流石に教師である昌江は言葉を商売道具としているだけあって、もう少しくはっきりと言葉として捉えてはいたが、浩太を大事に思う気持ちが強い歯止めになっていた。それに我が国の女性は一般的に元々自分から求めるタイプでなく、未通女の場合、余計にそうであった。まして教養に優れ、求める世界が別にしっかりとある昌江であるから、それで少しも困ることはなかった。

 そして2人とも、傍から見て何とも言えないほどむず痒くても、それを言わせないほどに幸せな顔をしていた。こんな輩には武道がどうとか、性教育がどうとか、全く関係なさそうであった。この究極の世界に最早、教育の入り込む余地などなかった。どうやら2人の相性は性的なところで一致しているわけでなく(2人とも淡いという意味では一致しているが)、魂の部分で一致していたようである。

 

        言葉には表し切れぬ世界あり

        感じることが大事なのかも

台風一過(エピソード29)・・・R2.2.19①

            エピソード29

 

 秋の馬見丘陵、竹取公園の辺りは風が甘やかで、気候、気温共に申し分なく、奈良方面だけではなく、大阪方面からも多くの家族連れが訪れる。ほど近くに日帰りの温泉施設、虹の湯もあり、観光地と言えなくもない。

 しかし、奈良県立西王寺高校の生徒達にとっては、ちょっとした距離のところにあるちょっとした広さの公園に過ぎない。偶々立ち寄れば遊具に興じても、それは一緒に遊ぶ相手が気持ちを浮き立たせたわけで、公園自体の魅力ではない。だから、最早わざわざ訪ねる場所ではなくなっている。

 特に体育会系のクラブに入っている生徒にとっては、週に1回程度は持久力を付ける為に足を延ばす馴染みの場所でもある。

「ええ~っ!? 記念すべき第1回の遠足が、この町内を歩き回って、竹取公園まで足を延ばして弁当を広げ、あとは学校に戻るだけやなんて、一体どう言うことぉ~!?」

「そう。あんたもそう思うやろぉ~!? ほんま、ひどいわぁ~」

「まあ、でも仕方がないかも知れんなあ~」

 空いている席を視線で示しながら、

「下手なとこに連れて行ったら、何をされるか、分からんもんなあ・・・」

 このクラスだけでも既に3人やめている。3人も、と敢えて言わないのは、5人以上やめたクラスが半数を超えるからだ。空いている席は2つあり、それは次にやめるであろう生徒達と噂されている。何でも1人は薬物乱用、1人は窃盗・恐喝だと言う。法的な措置を受けるのは勿論、事実上退学は免れないだろうと言われている。

 一体に底辺に位置する高校は、余裕で来たにせよ、ギリギリで背中を押されるままに仕方なく来たにせよ、前向きな気持ちで来た子はごく少ない。

 それではこの与太話の登場人物達はどうだろうか?

 先ずは柿本芳江であるが、投げやりな気持ちで来ている。トップ校とまでは言わないまでも、真面目に勉強していればその次のクラスぐらいには行けたはずだ。言わば世の中の一番受けの好い層に入れたはずのタイプであるが、生憎そんな小器用さは持ち合わせておらず、なまじ人生とは何ぞや? なんて考えてしまう不器用さ、生真面目さを与えられていたばかりに、人生航路のほんの入り口で不本意ながら彷徨うことになった。

 でもまあ、ものは考えようで、より高いステージを目指すタイプと言えるのかも知れないし、少数ながら気の合った人とより深く付き合えるチャンスを与えられたタイプと受け取れば、あながち損とばかりは言えない。

 次に里崎真由である。成績については微妙である。やれば出来るのであろうが、他に興味があり、それに対して前向きなので、問題にされなかった。元々弓道で好い顧問が居ると噂に聞き、手に合う学校だから選んだので、後ろ向きなところが全く感じられない。それどころか、気に入った異性、藤沢浩太が見付かったので、毎日ご機嫌であった。

 桂木彩乃は弓道で名を上げ始め、この頃其方は引退へと向かっているが、西木優真と言う超が付くほどのエリートと付き合い始めたので、人生に後ろ向きなわけがない。

 その他にガサツな女子が多数登場するが、小学校後半から精々中学校前半までのレベルと言われる西王寺高校の定期試験で困ることはなさそうである。

 つまり、女子は総じて余裕を持って入り、困ったところで自分で何とか出来るタイプがほとんど、という感じのようだ。

 男子となるとそうは行かない。これまでに止めた30人、これから1年生の間にやめそうな20人、ごく少数の家庭に事情を抱える者を除けば、全てギリギリで何とか押し込まれた不本意入学生である。最初こそ顔を出してみたが、毎日厳しいことを言われ、苛々が募って煙草を吹かしたり、万引きをしたり、酷い場合はカツアゲをしたり。それで直ぐに持たなくなった者が数名。彼らがあっさり学校を去った後、堰を切ったように学校を離れた者が更に数名。それからは毎月のように数名ずつが学校を去り、夏休みをきっかけに10名ぐらい去った。それら全て男子であったところが西王寺高校の歪さを表している。

 さて、この物語の主人公、藤沢浩太であるが、彼とて小学校時代の不幸がなければ選ばなかったかも知れないから、一応不本意と言うことになるのかも知れないが、彼は父親の慎二に似て、目の前の苦難が去ってしまえば、表面上は長く引き摺るタイプでもない。そして、日常の殆んどが表面上のことによって流れているので、西王寺高校を選ぶ時点ではそんなに苦にしていたわけでもなく、トレーニングマシンおよび施設の充実等、一応前向きな理由で選んでいる。そして彼の好む時代劇の世界に通じる弓道という道を見付け、更に安曇昌江という憧れの女性を見付けたから、毎日がふわふわした状態であった。

 浩太の親友、尾沢俊介も同様であった。将来、得意なスポーツを生かした職業、たとえばインストラクター、トレーナー等を目標にしており、手に合う範囲に条件に合う西王寺高校があったから、割と積極的に選んでいると言っていいだろう。

 ともかく、遠足自体は予想通り、面白くも何ともなく、文字通り遠足であり、まさに校外学習であった。それを予測して休む者が多く、出席率が5割に満たないクラスが半数を超えた。

 その中で浩太の所属する2組は浩太の昭和チックな恍けた魅力のお蔭かどうかは別にして、休んだのは5名で、長欠者の2名を除けば3名に止まった。正直なところ、女子が他クラスを圧して多くなっていることに関係しているようである。

 もう一クラス、俊介の所属する5組が男子優勢なのに出席率が好かった。

 と言っても、俊介にはほとんど関係なく、クラスの副担任として安曇昌江が参加していたことに大いに関係していると言っても過言ではないだろう。歩いているとき、竹取公園での昼食時、および自由時間等において、昌江の周りには常にむくつけき男(おのこ)が10名以上取り巻いていた。その黄金のポジションをずっと確保出来ているものは僅かで、入れ替わり、立ち代り、メンバーは頻繁に変化していた。

 昌江は浩太と夕食を共にした日から親しみを増し、何でもないことでメールを送って来るようになったが、学校では殊更に顧問と部員という線を守ろうとしていた。遠足では気が緩み易いので、浩太へと靡いている気持ちが出てしまわないかと心配していたのだが、何のことはない。クラスの男子生徒が強いバリアーとなり、近付けもしなかった。

 恋とは不思議なもので、近付けないとなると、余計に近付きたくなる。それを視線が、吐息が表していた。

 浩太の方も芳江、真由、それにクラスの何人かのシンパに守られ(?)、昌江の方には隙を盗んで時々熱い視線を送るしかなかった。

 幼いようでも女性、それに間近の敵はもっと手強く、真由は浩太の身動き取れない様子を喜び、この遠足を十二分に楽しんでいた。

 芳江はひところの暗さがすっかり影を潜め、今の悩みは浩太が思うように振り向いてくれないことであった。好いところまで近付いてくれるようで、それ以上は決して近付かず、此方から近付けば、すっと身をかわされる。本人にすれば結構な悩みなのかも知れないが、それは芳江をより輝かせていた。

 要するに男子と女子の違いはあれど、2組、5組とも、遠足はきっかけに過ぎなくとも、十分過ぎるほど楽しんでいた、と言えよう。

 秋の昼下がり、若者たちが集い、散策を楽しむ西大和は鄙びて長閑。まさに遠足日和であった。

 

        柿食えば鐘が鳴りなり法隆寺  (正岡 子規)

   

        恋すれば散歩も楽し西大和

        

        日常も薔薇色になるそれが恋

台風一過(エピソード28)・・・R2.2.18②

               エピソード28

 

「ふっ・・・」

  ピシューッ

「ふぅー」

 矢は真ん中からかなり逸れていた。

「また駄目だわ・・・」

 安曇昌江は自分一人が駄目になったようで、落ち着かなかった。

「ふっ・・・」

  ピシューッ

「ふぅー、また駄目」

 かれこれもう2時間ぐらいは繰り返していた。誰も居なくなった弓道場で唯独り、黙々と矢を自分の心の中にでも射ているような気分であった。

 師匠の左近寺周平は足を地に着け、家族の元に帰った。それが好かったのか? この頃本格的に練習を再開し、シニアの各種大会で目を見張る好成績を上げている。ほとんどぶっちぎりであった。この分では現役の若手の中に入っても十分に戦えるのではないか!? と騒がれ始めている。

 藤沢浩太は一時迷いが生じ、伸び悩んでいたが、最近吹っ切れたのか? また安定して来た。特に昌江が付き添った大会では嘘のような成績を上げている。今日の昌江となら、もしかしたら五分五分かも知れない。それぐらい調子好い時がある。

《夏休みが過ぎて、みんな好い顔になって来たのに、私だけが何だか浮いている。一体どうして・・・。駄目駄目! こんなところで弱気になっちゃ・・・》

「よし、もう一回!」
 ・・・・・・
「ふっ・・・」

  ピシューッ

「ふぅー。うん!」

 矢は的の真ん中に吸い込まれた。漸く迷いが吹っ切れたようである。

 それからの昌江は黙々と更に30分ほど矢を射続け、全て真ん中に吸い込まれた。

「よし! うん!」

 それでようやく納得出来たようで、昌江は校舎の屋上にある大時計を見た。

「まだ7時半。この頃暗くなるのが早くなって来たわねえ」

 照明を落としたら既に真っ暗で、広い校庭を横切り、部室のある辺りに行くのが怖いぐらいであった。

 緊張しかけたとき、その気配を察したか? 中型犬ぐらいの動物が昌江の前方を斜めにササッと植込みに向かって横切った。

「あっ! 吃驚した・・・」

 そのとき足元にピカッ!

「先生、大丈夫ですかぁ~? 今日は凄く頑張ってましたねえ~」

 懐中電灯で照らし、タオルを差し出してくれたのは藤沢浩太であった。

「どっ、ど、どうも有り難う・・・」

 昌江は思わず声が震えた。泣き出しそうなほど嬉しかった。

「どうして? ・・・」

「いや、先生でも悩む時があるんや思たら、何や待ってなあかん気がして・・・」

「うふっ。それは私も人間だから、悩むことぐらいあるわぁ~。でも、何だか恥ずかしい・・・」

「えっ、何がぁ?」

 もうほとんど先生と生徒、或いは顧問と部員であることをお互いに忘れている。

「何が、って、そんなこと・・・」

 口ごもっている昌江にそれ以上聞くのは可哀想な気がして、浩太はまた気を利かし、

「まあそれは好いから、ゆっくりシャワーでも浴びて、汗を流して来てください。僕はもう浴びてさっぱりしたし、ここでのんびり待ってますからぁ~」

「有り難う・・・。お礼にマクドか何か奢るわぁ」

「わっ、本当ですかぁ~!? ほな、何か甘いものがええなあ」

 暗さが恥ずかしさを押し退け、すっかり恋人同士のようになっていた。懐中電灯を消しても、昌江と浩太の瞳は交互にキラリ。何も食べなくても、心はほっこり、ほのぼのと満たされていた。

 帰りは王寺まで一緒なので、昌江は王寺で浩太を西友に連れて行った。

マクドでいい? それとも、さっき言っていたみたいに、甘い物がいい? 好きなものを選んでいいわぁ」

「本当ですかぁ~? ほな、浅慮せんと寿がきやの担担麺セット!」

「うふっ。浩太君、夕食前なのにそんなもの、食べるのぉ?」

「いえ、食べてから帰るって、さっき言っておいたので・・・」

「嗚呼、それが夕食のつもりだったのね・・・。それならもっと好いものを食べましょう。いらっしゃい!」

 昌江は浩太をフードコートの脇にある、それなりに本格的そうな中華料理店、近鉄グループの百楽に誘った。

「そんな・・・。いいんですかぁ~!?」

「これぐらいは幾ら安月給の先生でも大丈夫よ! でも、あんまり高いものは駄目よ。うふっ」

 昌江は目を白黒させている浩太を見ながら、からかうように言う。

 暗い校庭でスマートにエスコートしてくれたときとは打って変わって、また昌江の前ではおどおどした元々の浩太に戻っているので、昌江は優位に立ち、浩太のことが可愛くてたまらなくなって来た様子である。

 本格的中華料理店に入ろうが、好き嫌いの多い浩太に選べる物はあまりなく、結局担担麺と麻婆丼を頼もうとしたら、昌江が、

「浩太君、辛い物が好きなのね!? それじゃあ、今日は私に任せてくれる?」

「は、はいっ!」

 昌江はウエイターを呼び、

「麻婆豆腐にライス2つ、それに四川料理の一般的なところで回鍋肉に棒棒鶏。それに卵スープ。それから・・・」

 普段浩太が好んでいそうな物を入れながら、気を利かしてどんどん頼んで行く。

 圧倒されて放心状態になっていた浩太が気が付くと、テーブル一杯に並んでいた。

 昌江は時計にサッと目を走らせ、

「あっ、ごめんなさい! もしかしたら頼み過ぎたかしらもしかしたら?」

 既に8時半になっていたので、気を遣ったのである。

「大丈夫ですよぉ~。この頃10時を過ぎることも多いし・・・」

「えっ! そんなに遅くまで? もしかして、デートだったりして・・・」

 冗談っぽく聞くが、目は決して笑っていなかった。

「そ、そんな、僕、好きな女(ひと)なんて、いませんよ!」

 先生以外は、と付け加えたかったところであるが、流石にそれはためらわれた。

 しかし浩太は、さっき暗い校庭で不安げな昌江の気が熱く絡んで来たことを甘く思い出していた。

「あら、そうかしら!? 浩太君、この頃柿本さんと好い雰囲気だって・・・」

 気軽に話せている内に、昌江は冗談に紛れて聞かずにはいられない。

「ええっ!? そんなこと一体誰が・・・」

 ドギマギしつつ、浩太はさっきから昌江が浩太君とごく自然に言っていることがくすぐったく、嬉しかった。

「みんな言っているし・・・。それに私も何回か見たわぁ~」

「あれは相談されたから・・・。それだけのことで、僕は柿本さんに特別な気持ちがあるわけではなくて。まあ友達みいなものだから気楽に喋れるんで・・・」

 必死に説明しようとする浩太を昌江はもっと責めてみたくなった。

 しかし、時計が既に9時半を回っていることに気付き、辛うじて理性を働かせ、

「一杯残っていて残念だけど、もうそろそろお開きにしましょうかぁ? 明日もあることだし・・・」

「は、はいっ!」

 ここでの浩太は言いなりであった。

「浩太君、それじゃあまた明日。さようなら。気を付けて・・・」

「さようなら。失礼します!」

 夢見心地で昌江に送り出され、電車に乗ったのは10時前。家に着いたら10時半近かった。

 母親の晶子には王寺で友達と待ち合わせて夕食を共にし、喋っている内に遅くなったと、半分事実を混ぜて誤魔化したが、晶子はこれまでの習慣から、少しも疑おうとしなかった。浩太が女性に全く興味がないものと決めつけ、半ば心配する振りをしながら、安心し切っていた。

 しかし、浩太が自室に上がった後、果たしてそうでよかったのか? 晶子に初めての疑念が生じ始めた。

《何だか何時も以上に口が回るし、上気していた。ほのかに好い匂いがしていたけど、あんなシャンプーやボディーソープ、家にはないはずだし、一体何処で付けて来たのか・・・》

 夫の慎二には決して感じたことのない疑念。息子のこととは言え、いやある意味夫以上に理想の男性である息子だからこそか? 晶子は疑念が具体化し、胸騒ぎが次第に大きくなって行くことに戸惑っていた。

 

        夫より息子に理想垣間見て

        まだ見ぬ彼女妬けて来るかも

台風一過(エピソード27)・・・R2.2.18①

  
              エピソード27

 

        夏が去り一つ飛ばしで秋が来る

        諦め切れぬ心のままに

 

 藤沢慎二はそろそろ表舞台から退き、息子の浩太が主人公になろうとしているのに、いまだに諦め切れぬ心を抱えたままに、人生の旅路で彷徨っていた。

 こんな風に切り出せば、臭い言葉の羅列になるが、事実であるから仕方がない。ここ数年、朝夕めっきり涼しくなるこの時期を苦手にしている。何か積み残したことがあるような気がして、妙に落ち着かない。

 それゆえ、ともかく思い付くままに上のような歌を詠む。幾ら我流のへぼ歌でも、字面が何とか整えば、それなりの安定が得られるのである。

 もう少し落ち着いた状態になり、時間が取れそうなときは、ショートショート、更に時間が取れれば中編から長編の小説らしきものを書き出す。スマートだったり、クールだったり、クレバーだったり、何時でも何処でもモテキだったり、現実には有り得ない自分をヒーローとして想定し、普段色んな意味で気になる人たちを適当にいじることとなる。この辺りは大した想像力がないから仕方がないのである。

 それでもときどき不思議な体験をするから面白い。言霊とはよく言ったものである。だから、慎二なりに書くことに真摯であるし、下手な批評には珍しく感情を露わにして食ってかかることもある。

 それはまあともかく、書くことで慎二は気持ちがグッと楽になり、リフレッシュされるのだから、安上がりでお気楽な方であろう。貧者に相応しい自己表現法である。

 ただこの5年の間、落ち着かぬまま、歌を詠む時間さえ満足に取れずに来たので、気が付いたら全てが白くなる秋が目の前に来ていた。今年はまさに季節も心境も、上の歌のような感じなのである。

 それだけ仕事に再び慣れが出て来て、ようやく振り返る時間が出来たと言うことかも知れない。これまであまり書けなかった歌日記を春頃にようやく付けられるようになり、夏の終りには以前居た職場の先輩、秋山本純とショートショートをメールで交換出来るようになっていた。それを弾みに、今は長編小説を書き始め、それも序盤の頃は何回かに分けて秋山に送っている。

 長編小説の方はどうしても自分の世界に溺れ、またまとまりがなくなるので、次第に受けが悪くなり、送るのが滞るようになっているが、それはまた別の話。

 慎二にすれば、まだまだそんな風にまとまらない自分であるのに、鏡を見れば明らかに黄昏ているし、息子の浩太を見れば背が自分を追い越し、自分の若い頃に比べても、明らかに逞しく育っている。不思議に思っても、それが現実である。

 

        黄昏た今の自分を振り返り

        過ぎ去った日々不思議に思う

 

 勉強に関しては自分に比べるべくもないが、行動的な部分、前向きな部分、あっけらかんと現実を捉えている部分等、自分よりしなやかに、楽そうに生きているところが見え、ときどき浩太のことが羨ましくなる。

 時代もあったのであろうが、慎二は思うように行かず、第一、何も希望が見えず、隙間風だらけの青春に震えていた。いまだにその余韻を引き摺り、理想の自分を思い描けずにいる。それを探すのがライフワークのようになっている。救いと言えば、下手なりに言霊を操り、そのお蔭で時折不思議な世界に魂を遊ばせていることぐらいか?

 そんなわけで慎二は、浩太には出来る限り好きなことをさせてやろうと思っている。

 とは言え、小心者の慎二のことであるから、出し惜しむことも多く、中途半端になりがちではあるが、それでも自分には出来なかったことでも応援してやりたいと思っているのは事実である。だから、浩太が大学のことを多少なりとも意識し、口にし始めたのは、近頃にしてはちょっと嬉しい出来事であった。

 それでもやはり、そんな自分を不思議に思いながら横から見ている自分が居る。鏡の中の鏡みたいな話であるが、慎二はそんな自分を表現したいものだと思っている。

「父ちゃん~、何をたらたら書いてるん?」

 浩太が慎二の普段使っているデスクトップパソコンの24インチ液晶ディスプレーを覗き込みながら、ニヤニヤして言った。

 自分や周りのことを題材に、歌日記や怪しげな小説を書いているのは知っている。この頃ではそれを他人に見せるだけでは飽き足らず、ブログとして発表していることもあるようだから、ここらで少し確認し、自分に関わりそうなら、少し釘を刺しておこうと思ったようである。

「いや、何と言うこともないけど・・・。まあ、歌日記みたいなもんやなあ~。ハハハハハ」

「でも、自分や俺の名前、出て来るやん! あんまり勝手なことの想像して、書かんといてやぁ~。もしかして友達に読まれたら、恥ずかしいやん・・・」

「大丈夫やって。ハハハハハ」

 浩太はしつこく言っても可哀そうに思えたのか(この頃の慎二は小さくなったようで、加齢臭ばかりでなく、背中に哀愁すら漂っている)、そのまま立ち去った。

「あ~あっ、危ないとこやった・・・。でも、中身までは分からんかったようやなあ~。フフッ。あいつがあんまり鋭い奴でなくてよかった・・・。ホッ。そやけど、別に悪いことを書いているわけやない。あいつに好きなことをさせてやりたいもんだ、てなことを書いてただけやし・・・。でも、やっぱり見られたら・・・、こっちこそ恥ずかしいなあ~。フフフッ」

「父ちゃんったら、何を独りでぶつぶつ言うてるん? 怖いでぇ~。言霊様でも降りて来たんかぁ~?」

 今度は妻の晶子であった。家族の波状攻撃に慎二は目を白黒させて、画面を縦に素早くスクロールさせた。

「ウフッ。そんなん誰も読まへんってぇ~! 隠さんと、好きなように書いときぃ~。でも、この頃、私の名前、ちっとも出て来ぉへんなあ~。息子や他所の綺麗なお姉さんばっかりやぁ・・・」

「・・・」

 晶子は黙って去って行き、慎二としては返す言葉がなかった。

 

 しばらくして慎二は気を取り直し、またパソコンに向かった。

 

        秋の夕何とはなしに切なくて

        成就せぬ恋懐かしむかも

 

 慎二は勇気がなくて置いて来た恋が幾つもある。どの女(ひと)も既にそれなりの年になり、会えばイメージが壊れるだけであろうから、無理して会おうとまで思わないが、それぞれに絡み付いた思い出が切ないのである。胸を焦がした若き頃の自分、および焦がれる対象であった若き頃の彼女たちが愛しいのである。決して今のではない。

 

        戻れない遠くに霞む若き日々

        切なさのみが胸揺らすかも

   

        実体のなきもの追って切ながり

        長々し夜をやり過ごすかも

 

 日記なのか? エッセイなのか? それとも小説なのか? 彼方に揺れたり、此方に揺れたり、今にも消えかかっている焔を必死で掻き立てたりして切ながっている慎二を見ていたら、浩太は目くじらを立てるのも馬鹿馬鹿しくなって来た。

 結局自分のことに戻り、独り愛おしがっている。そんな慎二に入る余地はないし、そっとしておくに限る。

 そんな風に慎二を思い遣るしなやかさを身に付けた浩太であった。背だけでなく、色んな面で抜かれつつあることに慎二は、悔しさが全くないと言えば嘘になるが、それよりも喜びの方が大きかった。そして、書いているほど切なさに実感が伴わなくなっていることにも気付いていた。

《もしかしたら私のライフワークでもある本当の自分探しは、新たな地平に入ったのかも知れへん・・・。ただ独りで寒風吹き荒ぶ荒野を徨い、切ながるのではなく、そろそろ晶子との同行を考えるときぃ? それとも、立ち止まり、目の前にあるオアシスで満足すべきぃ?》

 まだまだ心を決めるまでには至らないが、浩太や晶子を見ていると、前ほど揺れていない自分を見出し、それが何となく嬉しい慎二でもあった。

 

        以前ほど揺れぬ自分を見出して

        何とはなしに嬉しいのかも

 

         次々と脳裏に浮かぶへぼ歌を

        メモに書き付け悦に入るかも

 

        子ども等に似た面を観て不思議がり

        育つに連れて嬉しいのかも

 

        かもかもと余韻を残す気になって

        今の気持ちを先送るかも

 

        先送る気持ち何時しか散り散りに

        先では既に集まらぬかも

米国男子ツアー最終日、アダム・スコットおめでとう! 松山健闘!・・・R2.2.17③

 先週木曜日の23時45分頃から時差-17時間の米国、カルフォルニア州にある「リビエラCC(7322ヤード、パー71)」において米国男子ツアー、「ジェネシス招待」が4日間の日程で開催され、最終日が感動の内に終わった。

 

 リビエラと言うのは何でもイタリア語で海岸、湖岸、川岸等を意味し、イタリアの地中海に面したフランス辺りまでの海岸を指してもおり、景勝の地、避寒の地だそうな。

 

 この大会、「ジェネシス・オープン」と書いている記事もあったが、今シーズンから招待にランクアップしたそうで、タイガー・ウッズ基金が入って賞金もアップし、優勝すると3年間のシードが貰えると言う。

 

 日本人選手としては世界ランク23位の松山英樹が出ており、この頃では何時も通りで? 出足好調とは行かないが、ぎりぎりで予選を通過した後、決勝ラウンドに入って第3日目、首位と4打差の-6まで伸ばし、一気に46位も上げて11位タイまで持って来た。

 

 昨日はホールアウト後に熱烈歓迎? を受けて右の肩・上腕を痛めたようであるが、大事には至らなかったようで、大奮闘を魅せているが、詳しくは後で。

 

 その他にも猛者が一杯出ており、例えば世界ランク20位以内では15人も出ているから、かなり厚いフィールドになっている。

 

 さて、単独で首位を維持して、見事優勝したのは世界ランク14位のアダム・スコット(オーストラリア)で、最終日5バーディー、2ボギー、1ダブルボギーの-1、トータル-11と少し伸ばした。

 

 落としそうになっても何とかボギーで凌ぐことも多く、落としても取り返し、如何にも首位に立つゴルフと言われていた。

 

 綺麗なショット、巧みなマネージメント、流石もプレイであった。

 

 4年ぶりの優勝で、通算14勝目だそうな。

 

 これで世界ランクが7位に上がっている。

 

        スコットや巧みなプレイ勝って魅せ

 

        スコットや綺麗なショット勝って魅せ

 

 2位タイに入ったのは世界ランク369位のスコット・ブラウン(米国)、世界ランク86位のカン・スン(韓国)、世界ランク20位のマット・クーチャー(米国)で、トータル-9であった。

 

 スコット・ブラウンは最終日5バーディー、2ボギーの-3と伸ばし、9位上げて来た。

 

 今年に入って出た4試合全てで予選落ちし、漸く通過出来たと思ったら、いきなり2位タイである。

 

 凄い!?

 

        ブラウンやメリハリ付けて二位となり

 

        ブラウンや通った途端二位となり

 

 カン・スンは最終日1イーグル、4バーディー、2ボギー、1ダブルボギーの-2と伸ばし、6位上げて来た。

 

        カンスンや出入り激しく二位となり

 

 マット・クーチャーは2バーディー、3ボギーの+1と少し落とし、1位下がった。

 

        クーチャーや守り切れずに首位譲り

 

 以下、気になった選手に付いて簡単に書き留めておく。

 

 松山英樹、世界ランク18位のブライソン・デシャンボー(米国)は最終日-2、トータル-8と伸ばし、6位上げて5位タイに入った。

 

 松山英樹は最終日5バーディー、3ボギーであった。

 

 アウトスタート(第1ホールから)で、トータル-6で出て、前半では第1ホールでいきなりバーディーを決めた後、第4ホールでボギーを叩いたが、第9ホールでバーディーを決めて、1打伸ばし、トータル-7として後半に繋いだ。

 

 後半に入って第11ホールでバーディーを決め、第14ホールでボギーを叩いても第15ホールでバーディーを決めてバウンスバック! 第16ホールで1ボギーを叩いても第17ホールで1バーディーを決めてバウンスバック! 結局、伸ばした1打を守り切ってトータル-8でホールアウトした。

 

 その時点では確か暫定3位タイであったから、早起きしたまま、8時頃までNHKBS1の生放送を観てしまった。

 

 怪我の功名かどうかは分からないが、今日の時点でも肩、上腕には心配なかったようで、その意味でもホッとさせられた。

 

 それに、パターや打ち方等の変更だけではなく、発言が少し前向きになって来ているようで、これからも大いに期待したい。

 

 この大会の結果、世界ランクは21位に上がった。

 

        松山や調子を維持し更に上げ

 

        松山や調子を維持し前向きに

 

 第3日目の終了後、最終日は20位、30位に落ちると予想し、守りに入っていた悲観論者達の気持ちはどうだろう?

 

 少しは気が楽になったのであろうか!?

 

 本人は少しずつ発言も前向きになって来ているようだし、もう少し緊張を緩めても好いのかも知れないなあ。フフッ。

 

 それはまあともかく、今週はRYO IS BACKでもあるし、それに今平周吾も出るようであるから、更に賑やかになりそうである。

 

 それから世界ランク1位のロリー・マキロイは最終日+2、トータル-8と落とし、4位下がって5位タイとなった。

 

 流石に大きくは落とさなかったが、今日はロリー・マキロイの日ではなかったようだなあ。フフッ。

 

        マキロイや何とか五位に留まって

 

 世界ランク5位のダスティン・ジョンソン(米国)は最終日+1、トータル-7と7少し落とし、4位下がって10位タイとなった。

 

 ロリー・マキロイと同様で、大きく落とさないところは流石であるが、ダスティン・ジョンソンの日でもなかったようだ。

 

        ダスティンや十位以内に留まって

 

 世界ランク143位のハロルド・バーナーⅢ(米国)は最終日+3、トータル-6と落とし、9位下がって13位タイとなった。

 

 世界ランク6位のパトリック・カントレー(米国)は最終日-3、トータル-5と伸ばし、19位上げて17位タイに入った。

 

 最終日で一番伸ばしているから、この辺りは流石ではないか!?

 

        カントレー確り伸ばし力魅せ

 

        カントレー確り伸ばし上げて魅せ

 

 世界ランク46位のラファエル・カブレラベロ(スペイン)は最終日-1、トータル-5と少し伸ばし、5位上げて17位タイに入った。

 

        カブレラベロ少し伸ばして上げて魅せ

 

 世界ランク3位のジョン・ラーム(スペイン)は最終日+1、トータル-5と少し落とし、6位下がって17位タイとなった。

 

 世界ランク252位のラッセル・ヘンリー(米国)は最終日+4、トータル-5と落とし、13位下がって17位タイとなった。

 

 世界ランク9位のザンダー・シャウフェレ(米国)は最終日-2、トータル-4と伸ばし、13位上げて23位タイに入った。

 

        シャウフェレや確り伸ばし上げて魅せ

 

        シャウフェレや確り上げて力魅せ

 

 世界ランク25位のマシュー・フィッツパトリック(イングランド)は最終日+2、トータル-2と落とし、8位下がって30位タイとなった。

 

 世界ランク41位のセルヒオ・ガルシア(スペイン)は最終日+1、トータル-1と少し落とし、1位下がって37位タイとなった。 

 

 世界ランク21位のポール・ケイシー(イングランド)は最終日+4、トータル-1と落とし、20位も下がって37位タイとなった。

 

 世界ランク2位のブルックス・ケプカ(米国)、世界ランク19位のマーク・リーシュマン(オーストラリア)は最終日+3、トータルイーブンと落とし、15位下がって43位タイとなった。

 

 2人共爆発力を持った選手なので、最後の爆上げを期待したが、まだそこまで上がって来ていなかったようだ。

 

 世界ランク12位のトニー・フィナウ(米国)は最終日+1、トータル+2と少し落としながらも6位上げて51位タイ1に入った。

 

 世界ランク13位のパトリック・リード(米国)は最終日+3、トータル+2と落とし、5位下がって51位タイとなった。

 

 世界ランク10位のジャスティン・ローズ(イングランド)は最終日+4、トータル+3と落とし、10位下がって56位タイとなった。

 

 そして世界ランク8位でホストかつレジェンド、タイガー・ウッズ(米国)は最終日+6、トータル+11と落とし、5位下がって最下位の単独68位となった。

 

 状況だけではなく、体力的にもきつい中、ホストとして最後まで頑張り続けるのが流石レジェンドらしいところ!?

 

 ともかく、プレイヤーとしてはまたの機会を期待しよう。

 

        タイガーやまたの機会を期待して

スキージャンプW杯男子個人第21戦、シュテファン・クラフトおめでとう!・・・R2.2.17②

 2月14日(金)~16日(日)の日程で、時差-8時間のオーストリア、タウプリッツ&バート・ミッテルドルフ(HS235m、K点200m)においてスキージャンプ男子ワールドカップが開催され、個人の第20戦、21戦、およびそれぞれの予選が行われる予定であった

 金曜日に予定されていた第20戦の予選は強風の為に中止となり、土曜日に第20戦が無事行われた。

 

 そして昨日の夕方、第21戦の予選が行われ、本戦が19時頃から始まったが、2本目は風に悩まされながら、中断を挟んで残り3人まで行った。

 

 そこで中断が長くなり、協議の結果、中止し、1本目のみの記録で順位が決まった。

 

 結果として第20、21戦が行われたことになるから、シーズン当初に予定されていた第22、23戦からはこれで2戦ずれたことになる。

 

 優勝したのはオーストリアのエース、シュテファン・クラフトで、今シーズン3勝目、通算19勝目になったそうな。

 

        クラフトや地元を飾るジャンプ魅せ

 

        クラフトや地元を沸かすジャンプ魅せ

 

 通算ではスノージャパンのエース、小林陵侑の少し先を言っている。

 

 その小林陵侑は最長不倒に当たる? 242.5mを飛び、シュテファン・クラフトの230.0mより大分遠くまで飛んだが、両足着地になる等、評価が辛くなったようである。

 

 2位に止まった。

 

 両足着地はプロから観ても安全上仕方のないところもあるようである。

 

 小林陵侑としては満足の行くジャンプだったようなので、まあ好かった、好かった。

 

 ともかく、こんな大きな台で実力を発揮して魅せたところが俄かにせよファンにとってはホッとさせられた。

 

        陵侑や納得出来るジャンプ魅せ

 

        陵侑や誰より遠く飛んで魅せ


 日本人選手としては小林陵侑(土屋ホーム)の他に、佐藤幸椰(雪印メグミルク)、小林陵侑の兄の小林潤志郎(雪印メグミルク)、中村直幹(東海大)、佐藤慧一(雪印メグミルク)、竹内拓(飯山市)が出場した。

 

 小林潤志郎、中村直幹、竹内拓も1本目を飛べ、佐藤幸椰は残念ながらスーツの規定違反で失格となった。


 個人第21戦の主な選手の結果は以下のようになっている。

 

 今回は参考までに、予選で20位までの選手はその記録も添えておく。

 

   名前                      1本目m   得点   予選順位   距離m   得点

1位 シュテファン・クラフト(墺)          230.0    232.6        ④      222.5    207.3 

2位 小林陵侑                          242.5    231.9        ①      228.5    214.3 

3位 ティミ・ザイツ(スロベニア)               228.5    230.1        ②      223.0    208.7 

4位 カミル・ストッフ(ポ-ランド)                232.0    229.4        ⓻      218.0    201.4 

6位 カール・ガイガー(独)             225.0    227.3        ⑲      210.0    190.0 

7位 ヨハンアンドレ・フォルファン(ノルウェー)      227.0    225.9  

9位 ピオトル・ジワ(ポーランド)             223.5    220.1 

10位 シュテファン・ライエ(独)          222.5    219.5 

13位 マリウス・リンドヴィック(ノルウェー)     242.0    215.7        ⑥      225.0    217.1  

17位 ダニエルアンドレ・タンデ(ノルウェー)   217.0    209.6 

19位 小林潤志郎                       223.0    208.2 

20位 ペテル・プレヴツ(スロベニア)        228.0    201.7 

26位 フィリップ・アッシェンヴァルト(墺)    211.0    199.1        ⑩      214.5    195.7 

30位 竹内拓                              201.5    183.6 

32位 ダビッド・クバッキ(ポーランド)  199.0    181.5        ⑮      212.0    193.5 

35位 中村直幹                  196.5    171.5 

 

 なお、男子の場合は一般的に予選で50位までが本番に出られ、本番の2本目に進めればポイントが貰える。

 

 スキージャンプ個人のランキングに関係するポイントは1位100点、2位80点、3位60点、4位50点、5位45点、・・・、30位1点と配分されて行き、21試合を終えて以下のようになっている。

 

       名前           総合得点

   1位 シュテファン・クラフト(墺)      1273

   2位 カール・ガイガー(独)      1135

   3位 小林陵侑          1045 

   4位 ダビッド・クバッキ(ポーランド)     985 

   5位 カミル・スットフ(ポーランド)      759 

   6位 マリウス・リンドヴィック(ノルウェー)    713

   7位 シュテファン・ライエ(独)         652

   8位 ペテル・プレヴツ(スロベニア)     550

   9位 ダニエルアンドレ・タンデ(ノルウェー)     548

  10位 ピートル・ジワ(ポーランド)       525

  11位 ヨハンアンドレ・フォルファン(ノルウェー)     510

  12位 佐藤幸椰           491

  13位 フィリップ・アッシェンヴァルト(墺)     471 

  22位 伊東大貴              253  

  28位 小林潤志郎          142

  31位 佐藤慧一              82   

  39位 中村直幹                39

  45位 竹内拓              28 

  50位 岩佐勇研               14

 

 今回は比較的気に留まるスロベニアペテル・プレヴツ(27歳、176㎝、65㎏)について少し触れておきたい。

 

 ワールドカップ個人戦ではこれまでに22勝しており、表彰台には53回上がっている。

 

 2013/2014年シーズン、2014/2015年シーズンと総合2位に輝き、2015/2016年シーズンは総合で1位となり、ジャンプ週間でも1位となっている。

 

 2013年のヴァル・ディ・フィエンメの世界選手権ではラージヒルで銀メダルに輝き、ノーマルヒルで銅メダルに輝いている。

 

 2014年のソチオリンピックではノーマルヒルで銀メダルに輝いている。

 

 その他、団体戦で何度もメダルを獲得しており、中々の猛者である。

 

 そろそろ活躍し始めているドメン・プレヴツは弟である。

 

 今後もこの兄弟に注目して行きたい。

 

        トップまで既に極めたペテルかな

 

        兄弟をリードしているペテルかな

 

 なお、次の大会は2月20日(木)~22日(土)に時差-7時間のルーマニア、ラスノフ・ルシュノヴ(HS97m)で開催され、第22、23戦が行われる予定である。

 

 第22戦は21日(金)の22時頃から、第23戦は22日(土)の22時45分頃からの予定であるから、まあそんなに寝不足にならずに楽しめそうである。

台風一過(エピソード26)・・・R2.2.17①

             エピソード26

 

 生駒山のてっ辺から宙(そら)に向かって矢を放てば、何処までも飛んで行きそうな気がする。大阪方面に放てば、あの霞んだ南の高層ビル街も飛び越えて、大阪湾まで届くのだろうか?

 奈良方面ならどうなんだろう? 三笠山のてっ辺に中ったりして・・・。

 実際には長くて60m先の的を狙うぐらいであるから、そんなに飛ばないことぐらいは分かっているはずである。それでも生駒山の頂上に立てば、高々642mのなだらかな山ながら、そんな気概を持てるのだ。

《でも、昨日は何となく中途半端やったなあ~。フフッ。まあ一勝一敗ってところかなあ~。フフフッ》

 藤沢浩太は昨日、南生駒側から暗がり峠を越えて、枚岡、更に瓢箪山まで足を延ばしたことを思い出していた。

 行きはまだ好かった。くねくねした上り坂を馬力に任せて駆けるように登った後、一気に見晴らしが開け、その中に向かって更に加速し、駆けるように下って行く。一種爽快感があった。

 ただ、右手にはもっと高いところがあり、そこはほとんど登れないような峻烈な場所では全くない。林立したテレビの電波塔が大きく、くっきりと見え、遊具の楽しげなBGMや機動音、それに黄色い歓声までが聞こえて来そうなほど間近にあるパラダイスである。そこが多少惜しいと言えば惜しい。

《わざわざ瓢箪山まで行って伸び切ったカップラーメンを食べるぐらいやったら、暗がり峠から縦走して生駒山上の遊園地にでも行けばよかったなあ~。帰りは伸び切った辛ラーメンの所為でお腹の調子が変になったから、もうバテバテで、ただ帰るだけが精一杯やったもんなあ~。フフッ。ほんま、生駒山上にでも行けばすっきりしてたやろになあ~。フフフッ》

 行っても独りで何をするわけでもないのに、浩太は取り敢えずそう思った。

「ほんま、損したわぁ~」

 そして、思っていることをつい声に出してしまうのが癖になりつつある。

「あっ、また独り言を言うてぇ~。藤沢君、何を損したん? 宝くじか何かを買うて、外れたんかぁ~? それか、もしかしたらパチンコ、競馬、競輪とか・・・」

 空かさず言ったのは、クラスメイトの柿本芳江である。浩太がそんなタイプではないのを十分に知りながら、からかうのを楽しんでいる。さっきから様子を窺い、何時話しかければいいか、付け入る隙が出来る頃合いを計っていたようである。

「あほ、そんなもったいないこと、誰がするかいなあ~。フフッ」

 気を遣ってくれていることが分かるので、浩太も乗ってやる。

 それからおもむろに、昨日の状況を説明してやった。

「そう言うわけでなあ~、折角もっと好い景色を見る機会もあったのに、ちょっとばかりけちった、いや節約したばっかりに、かえって損をしたと言う話やぁ~。フフフッ」

「ウフッ。ほんま、藤沢君らしいわぁ~。ウフフッ。ハハハハハ」

「こら、笑い過ぎやぁ~」

「ごめん、ごめん。ハハハハハ」

「もうええわ・・・。ところで、柿本さんはこの休みの間、一体何してたん?」

「何って言われても・・・」

 芳江はちょっと考える振りをして、

「大したこと、してないねん。テレビで韓国ドラマを見たり、近所に買い物に行ったり。そんなもん・・・」

 浩太の趣味が韓国時代劇と聞いて、芳江も観るようになり、この頃韓国のホームドラマにはまり出した。

「ふぅ~ん、そうやったん・・・。ほな、誘ってもよかったんかなあ~?」

 そう言われて芳江の顔がパッと輝いた。

「ほんま!? 誘ってくれるんやったら、何時でも声かけてやぁ~。休みの日に独りで出かけるのは聞いてたけど、うちはまた、藤沢君が独りで出歩くのが好きなんかと思て、遠慮してたんやでぇ~」

 浩太はちょっと遠い目をして、

「いや、この頃はそう言うわけでもないねんけど、以前は確かにそんなところもあったなあ~。中学校の頃は一旦目的地を決めたら、ただ我武者羅に走ったり、歩いたりするのが好きやった・・・。でも、この頃はのんびり歩いて景色を楽しみたいときもあるねんでぇ~。体重が増えて来たこともあるのか、長距離を前ほど速く走られへんようになってしもたし・・・」

 芳江は浩太を足元から頭の先までしげしげと見ながら、

「ほんまや・・・。もしかして春から見ても、この夏休みで大分太ったんとちゃう!?」

「やらしいなあ、その下から上への舐め上げるような視線の送り方。それって、もしかしたらセクハラ、ちゃうん? それに失礼な奴やなあ。どうせなら、太ったんじゃなくて、逞しくなった、とか言うて欲しかったところやわぁ~!」

「ウフフッ。何言うてんのん。セクハラは女の子が男の子に言う言葉やでぇ~。うちみたいに可愛い子があんたみたいにむくつけき男の子に誰がセクハラするかいなぁ!? それに、もし迫られたとしたら、感謝して欲しいぐらいやわぁ~。ウフフフッ」

「ハハハ。ほんま、黙って聞いてたら、言いたい放題やなあ~。ハハハハハ」

 月曜日のどんよりした空気の中、通学路で2人だけが浮いているように明るく弾んでいた。他の生徒たちにも十分聞こえているはずなのに、週末に遊び過ぎた疲れが十分過ぎるほど残っている所為か、冷やかす元気もないようであった。

 そんな光景を遠くからちょっと悔しそうに見ている里崎真由がいた。弓道部の同輩として、また同じクラスに居ながら、クラスでは浩太の隣の席をほとんど柿本に取られ、近寄ることすら出来なかった。

 ただ、真由は浩太が幾ら芳江と親しげにしていても、またお茶ぐらい一緒に飲んでいたとしても、本気で思っているのは顧問の安曇昌江だとはっきり分かっていた。先輩の桂木彩乃との関係を疑ったこともあったが、この頃彩乃が浩太の友達の西木優真と本気で付き合っていることを知ったので、対象から外している。だから何とか耐えられた。

「幾ら分かっていても、やっぱり気になるなあ~。どうしたもんやろぉ・・・。やっぱり言ってあげるべきかなあ~?」

「どうしたの、里崎さん? 何か悩んでいるようね。言ってあげるべきかどうか、なんて、何のことかしら?」

 ビクッとして振り向いたら、昌江であった。まさかそのまま本当のことを説明するわけには行かないから、適当に誤魔化すことにする。

「クラブのことです。ほら、2年生の間宮先輩、自分では上手い積もりで練習してはるけど、我流が抜けないから、やっぱり言ってあげるべきかなあ? って。失礼にならないか、迷っているんです」

「それはしっかり言ってあげるべきよ。あなたが中学生のときから本格的に弓道をやっていて、近距離では3年生の桂木さんも凌ぐぐらいだって、みんな知っているもの。失礼には当たらないわ」

 本当は昌江も浩太と芳江の仲睦まじい様子を複雑な思いで観ていたから、聞かなくても独り言の意味することぐらい十分分かっているのだが、真由が一体どんな風に誤魔化すか? 聞いてみたかったのである。それに、芳江の浩太に対する気持ちはともかく、真由が浩太をどのように思っているのか? それも確かめてみたかった。

 真由と昌江はお互いに心にもないことを言いながら、本気で浩太に傾いていることを確認し合い、心の中のレベルでは鋭い刃(やいば)を交わし合っていた。

 

        其々に心の中に含みつつ

        表面的な会話するかも