sanso114の日記

日々気になったことを気楽に書き留めています。

交わらない心(1)・・・R元年11.20②

         序章 細い道を避けて

 

 憧れの世界に繋がる道は細く、険しい。

 その細い道を通ろうとすれば、嫌でも左右の断崖絶壁が目に入る。

 嗚呼、此の崖から落ちたらひとたまりもないだろうなあ。

 しかし、幾ら怖くても、思い切って通らなければ、あの門の向こうにある、輝くような青春に辿り着けない。

 仕方が無い。

 一歩ずつ足を進めるとしよう。

 嗚呼、何と言う激しい風なのだ。

 少しでも気を抜けば吹き飛ばされてしまいそうだ。

 こんなに怖い目をしなければ得られない、輝ける青春など、直ぐに得られなくても好いではないか。

 そうだ!

 取り敢えず回り道をしよう。

 あっさり諦めないで、またの機会にすれば好い。

 昔から、待てば海路の日和あり、と言うではないか。

 

 あれから何年経ったのだろう。

 回り道ばかりしている間に、えらく遠くまで来てしまった。

 其れなりの学校を出て、其れなりの職も得た。

 其れなりに恋をし、其れなりの家族も出来た。

 此れで好かったのだろうが、何だか不満だなあ。

 小さな幸せは得られたのだろうが、大きな充実感は得られなかったなあ。

 楽をして来た分、何処か自分を誤魔化して来たような気がする。

 本当の自分は何処か他のところに置いて来たような気がする。

 自分の人生なのに、本当にこれで好かったのかなあ?

 何だか寂しいなあ。

 何だか虚しいなあ。

 そうだ!

 此れからでも好いから、もう一度勇気を出して、嘗て通ろうとしていた細い道を探してみよう。

 

 でも、本当に細い道なんてあるのだろうか?

 あったとしても、もう草に埋もれて、見えなくなってしまったのかも知れない。

 もしかしたら、崩れ落ちてしまったのかも知れない。

 其れに、たとえ探し出せたとしても、残っていたとしても、今の私に通る力は残っているのだろうか?

 嗚呼、私は何と言う無駄な時間を過ごしてしまったのだろう。

 

 いや、待てよ。

 私が今まで歩んで来た道は、そんなに楽な道ばかりだったのだろうか?

 回り道ばかりだったのだろうか?

 私が歩む限り、其れ等は全て私の道だったし、決して太くて楽な道ばかりでも無かったような気がする。

 苦労もあった。

 感動もあった。

 涙もあった。

 笑いもあった。

 何時も何処か余所見していたから気付かなかっただけで、あれが私にとって本当の道だったのかも知れない。

 よし、此れからは確りと前を向いて歩くぞ。