sanso114の日記

日々気になったことを気楽に書き留めています。

人は見かけが9割!?(8)・・・R2.4.16①

               その8

 

 令和2年4月7日、火曜日の朝のこと、藤沢慎二は何時も通り今の職場である心霊科学研究所東部大阪第2分室に7時50分頃に着き、タイムカードにスリットした後、執務室に入ると、正木省吾、すなわちファンドさんが何時も通り、スマホを熱心に観ながらぶつぶつ言い、しきりにメモを取っていた。

「おはよ~う」

「あっ、おはようございま~す!」

 挨拶を交わした後、世間話も早々に、ファンドさんはスマホに視線を戻し、メモを再開する。

 株価がよほど気になる動きをしているのか!? 気にならないではなかったが、自分では始める気にならない極め付きの小心者である慎二にとっては単なる野次馬としての関心に過ぎないので、それ以上構わないことにし、自前のノートパソコン、「神の手」をおもむろに開いた。それから上手く書けたと思える時は間を置かずブログにアップ出来るように、テザリング用に格安SIMを挿したスマホも用意しておく。この間を置かずと言う焦りなところも投資に踏み切らない大きな理由であったが、それはまた別の話。

 ともかく、暫らく考えた後に通勤電車の中でメインのスマホにメモしておいたものを観ながら起こして行く。

 

         朝のひと時雑詠

 今、コロナウイルスの感染拡大により社会、そして職場が大きく揺らされている。

 大抵の仕事がそうであるように、私たちの仕事も自分たちだけで動けるものではなく、相手のある話であるから、中々予定していたようには行かず、緊急で予定変更を迫られている。

 こんなときには家庭だけではなく、職場でも、これまで忙しくて置いて来たことが問題になって来易い。

 正直言って置いて来ただけに面倒なことではある。

 それでもこれも問題提起される、炙り出される好い機会だとでも思って、再考し、検討することに生かしたい。

 

        色々な矛盾コロナが炙り出し

 

        コロナ禍や色々矛盾炙り出し

 

        コロナ禍や矛盾再考機会とし

 

 こんな風に人間は悩まされているが、他の動物は一体どうなんだろう!?

 気になるところである。

 ネットで検索してみると、外国では動物園のトラやライオンにも感染したそうな。

 それでも、今のところは順調に回復しているようだから、もしかしたら人間よりはウイルスに強い!?

 それでは、植物はどうなんだろう?

 元気に花粉をばら撒いていることを思えば、やっぱり人間よりは強いのだろうか!?

 ところで、今日は何だかやけに寒い。

 4月になって1週間が経ち、そろそろ暖房を入れるのに抵抗を感じ出したが、入れないままに少し居るだけで、冷えて、お腹の調子が悪くなって来た。

 自分らで勝手に決めた季節に変な拘りは持たない方が好さそうだなあ。フフッ。

 

        自分等で決めた季節に拘って

 

        自分等で決めて拘る面白さ

 

        自分等で決めて拘りあなおかし

 

        自分等で決めて拘る矛盾かな

 

 それはまあともかく、また色々とオーディオ製品が欲しくなって来た。

 今は低音、高音まで綺麗に鳴ってくれるポータブルのPCスピーカー、小型のコンポにちょっと気になる製品が幾つか出て来た。

 マスク、ティッシュペーパー、食料等の日常生活における必需品、それにお金が不足しがちな昨今、余計に気に掛かるから面白い。

 

        不足して余計物欲増すのかな

 

        不足して余計物欲刺激され

 

 それにしてもマスコミは相変わらず不安を煽るような記事ばかり流しているように思われる。

 内容はともかく、煽るようなタイトルを付けている。

 マスコミ、政府等は国民が育てるのだと言う考え方からすれば、我々日本人が不安を持ち過ぎていると言うことか!?

 確かに、記事が先ずそうで、記事に付くコメントがそう思われる。

 たまに褒めたり、持ち上げたりする記事があると、叩き、降ろそうとするコメントが付きがちである。

 このマイナス思考は何処から来ているのか!?

 地震、台風等、災害に揺らされ易いからなのか?

 関係あるかも知れないが、中々経済的潤わず、安定した将来を描き難いからなのか?

 上に立つ人たちも余裕がなく、まず自分たちを潤すことで精一杯だからなのか?
 出来れば冷静な判断、前向きな思考への転換を期待したいところである。

 勿論、他人に期待するばかりではなく、先ずは自分たちからだなあ。フフッ。

 例えば今、政府や彼方此方の自治体の首長が炙り出しにあっているが、文句があるのならば、選挙に行かなくっちゃね。

 

 その日も自分なりには上手く書けたと思い手を止めて、慎二がしみじみしていたら、

「おはようございま~す」

「おはようございま~す」

「おはよ~う」

 井口清隆、すなわちメルカリさんが執務室に入って来た。

 慎二はちょっと迷い、メルカリさんの方に「神の手」の液晶画面を向け、見せながら問いかける。

「どう、これぇ~? 今日もまあまあ上手く書けたと思うんやけどなあ・・・」

 それだけのことで小心者の慎二は、緊張で耳をひくひくさせている。

「毎朝、よう精が出ますねえ・・・。それに結構深いし、流石ですねえ!」

 半分呆れ、半分感心しながら適当に持ち上げて、気の好いメルカリさんはさっと目を走らせて行く。

「ふむふむ。それで、ふむふむ」

 何時もより丁寧に読んでくれている気がし、何を言われるのかと慎二の緊張が最高潮にが達達し掛け頃にメルカリさんは漸く目を上げて、

「ほんま、毎日何をしたら好いのか? 迷いますねえ。ブログさんなんか週に3日出勤やから、今日、明日我慢したら何とか済むからええけど、僕らみたいに毎日来てたら大変ですわぁ~」

 聴いていて慎二は自然と表情が緩んで来る。メルカリさんの気楽そうな様子がおかしくなって来て、

「でも、メルカリさん、幾らでも休めるんとちゃうん!? この前印籠みたいに職免の紙、見せてたやん!」

「まあね。でも、幾ら僕でもそれなりに仕事はあるから、そんなに休んでばかりもいられへんし・・・。それはまあええんやけど、ふぅ~ん、外国では動物園の動物まで罹ってるんですかぁ~!? 大変ですねえ!?」

 話がややこしくなる前にメルカリさんはスゥーッを話をずらせて行く。この辺の軽妙さは慎二から観ると流石現代っ子である。

 慎二もそこは追い駆けてまで戻ろうとはしない。

「ほんまやなあ。でも、軽く済んだみたいで好かったやん・・・」

 そこにも留まらず、メルカリさんは更に次の話題に転じ、

「そうかぁ~。ブログさん、オーディオ好きですもんねえ!?」

 と言いながら、半ば呆れ気味に慎二の机の周りを見渡す。

 一応研究職と言う仕事上の必要性もあって其々に大きめの机が与えられており、慎二の机の上には本やファイル、パソコン以外にも、ブルートゥーススピーカー、ミニコンポ、オーディオケーブル等が雑然と置いてある。

 ただ、そう言うメルカリさんの机の上にも更に雑多な物が所さえましと置いてある

「いやぁ~、俺なんかオーディオか本だけやし、メルカリさんの幅広さにはとても適わへん!? 絶対負けてるわぁ~。フフッ」

「あっ、これっ!? こんなん安く買うか、只で貰って来て、それをメルカリで売ってまうもんばっかりから、いっこも資本掛かってませんわぁ~。ハハハ」

「そりゃ、メルカリさんはそれで儲けているからなあ。フフッ」

 慎二は一瞬ではあるが、心底羨ましそうな顔をする。

 そこをメルカリさんは空かさず、にんまりとして、

「本当は僕らよりブログさんみたいな60代の人が一番儲けているそうですよぉ、メルカリではぁ~! ブログさんも家では秘かにやってるのとちゃいますのん!? 家にはもっと色々持ってはるんでしょ?」

 そう突っ込まれると慎二は嬉しそうに鼻を蠢かし、

「いやぁ~、そんな大したもんは持ってないけど、数だけはあるなあ。フフッ」

 そう言いながら、彼方の部屋に1つ、此方の部屋に1つと空で数え出し、次第に目が遠くなって行くのを鋭く感じ取ったメルカリさんは、そろそろ頃合いか思い、その場をそっと離れてコーヒーを淹れに行った。

 慎二も朝から、日本人の心性、我が国のマスコミや政府の特質等の重そうなところまで入って行くことは期待しておらず、それで好かったようで、これまでに買い集めた安物のオーディオにまつわる思い出に気持ちが動いていた。

 

        金でなく物には其々思い出が
        プライスレスに纏わるのかも