sanso114の日記

日々気になったことを気楽に書き留めています。

人は見かけが9割!?(9)・・・R2.4.17①

               その9

 

 令和2年4月13日、月曜日の朝のこと、藤沢慎二は何時も通り今の職場である心霊科学研究所東部大阪第2分室に7時50分頃に着き、タイムカードにスリットした後、執務室に入って来ると、正木省吾、すなわちファンドさんが何時も通り、スマホを観ながらぶつぶつ言い、しきりにメモを取っていた。

「おはよ~う」

「あっ、おはようございま~す」

 通り一遍の挨拶を交わした後、世間話も早々にファンドさんはスマホに視線を戻し、メモを再開する。

 株価がよほど気になる動きをしているのか!? 気にならないではなかったが、自分では始める気にならない極め付きの小心者である慎二にとっては単なる野次馬としての関心に過ぎないので、それ以上は構わないことにし、自前の中古ノートパソコン、「神の手」をおもむろに開いた。それから上手く書けたと思える時は間を置かずにブログにアップ出来るように、テザリング用に格安SIMを挿したスマホも用意しておく。年の所為もあってか? 慎二は待つことが益々苦手になりつつある。

 それはまあともかく、前日のことを思い出しながら通勤電車の中でメインのスマホにメモしておいたものを元に起こして行く。

 

            朝のひと時雑詠

 つい最近まで関東で働いていた子どもが昨日戻って来た。

 どうやら一昨日出て、普通電車を繋いで帰って来たと言う。

 予約していた夜行バスが残念ながら運行を中止したので、名古屋まではJRの鈍行を使い、その後は近鉄電車の普通に繋いだそうな。

 まあ夜行バスについては密閉、密集、密接の3密の何れにも当てはまりそうに思われて心配していたところであるから、それはそれで好いのだが、名古屋では駅の近所を暫らく歩いたと言う。

 おいおい、全国で5本の指に入る有数の感染地帯だと言うのに何と言う呑気なことを・・・。

 何でも、ソープも含め、風俗店の呼び込みが、負けずに頑張りま~す! と言う感じだったらしい。

 う~ん、微妙だなあ。

 

        帰省した子どもにちょっと緊張し

 

        コロナ禍や帰省した子に緊張し

 

 でもまあそれはお互い様だろうなあ。

 家人と私は多分食べ物の所為か? それともストレスの所為か? 何だか分からないがお腹の調子が悪くなっている。

 私の場合はそれに加えて、多分花粉症の所為であろうが、喉、鼻、目の調子が悪い。

 何れも多分新型コロナウイルスの影響ではないと頭が思いたがっている。

 戻って来た子どもにすれば、それを知れば何だか不安で、居心地が悪くなっているかも知れない。

 それはまあともかく、子どもの場合、現在就活中でもあり、新卒ではない分、微妙な感じらしい。

 この機会に出来ることを増やしておこうと、色々考えているようだ。

 勿論それで好い。

 私の場合も転職を経験しており、経済的に成功とは言えないが、そう悪くもない。

 バブルの前によく言われていたレベルでのまあ普通、つまり現代版の中流である。

 バブル崩壊後、平成大不況の過程で、その普通のレベルが大分引き下げられたから、今では中流と言うのは恥ずかしくなって来るし、そんな生活を築き、守る為に多くの人が勉強、仕事に一生を費やして来たのかと思うと、ちょっと情けなく、虚しくもなって来るが、まあそれは別の話。

 仕事をすると言う意味において人間力を磨いておくのは悪くない。

 自信を持って話が出来れば、それなりの仕事が見付かるであろうし、仕事を通して経済だけではなく、人間関係、遣り甲斐、達成感、生き甲斐と言ったものもある程度潤うはず。

 会社の規模、初任給、平均給与、世間的な評価等、見かけにばかり目を奪われていると、今の時代後悔することも多いようである。

 期待しているような終身雇用、年功序列なんて果たして守られるかどうか分からないし、入った部署での人間関係、ブラック指数も分からない。

 どんな場合でも、自分をしっかり持っていると、何かあった時にはまた転向する等、道を拓き易いように思うなあ。フフッ。

 

        躓いて人生の意味考えて

 

        仕事には人間力が大事かな

 

        人生に人間力が大事かな

 

 名古屋と言えば駅近くの風俗だけではなく、パチンコ屋も盛んなところである。

 そう言えば昨日だったか、一昨日だったか、パチンコ屋の前で取材していたが、それぞれ気取った感じで答えていたのが印象に残っている。

 人生には息抜きも必要であるし、しっかり対策もしているから、罹ったときは罹った時のことと覚悟している。

 確かに、一般的にはそうありたいが、何もわざわざ危ないとしつこく言われている三密の状況で覚悟を決めてまで遊ばなくても、と思わなくもない!?

 

        覚悟決め三密避けずパチンコし

 

        対策し覚悟を決めてパチンコし

 

 なんてことを書いている内に、父のことを思い出した。

 職人であった父は、働いている頃、休みになれば近所のパチンコ屋に行っていた。

 その時はそれしか暇潰しが思い付かなかったと言うか、出来なかったんだろう。

 その証拠に、私が独立し、仕事を減らした頃から、油絵を描き始めた。

 また、山本周五郎池波正太郎藤沢周平等の時代小説を読み始めた。

 別に気取っていたわけではない。

 大正生まれの父は高等小学校しか出ておらず、収入も食べて行くのにぎりぎりであった。

 要するに時間とお金がなかったのである。

 絵を描いたり、歌ったり、お気に入りのお話を読んだりと言うことは大抵の人が小さな頃に楽しんだ記憶があるから、時間とお金に多少の余裕が出来た時に始め易かったように思われる。

 私の場合は絵や歌に自信がなく、仕方が無いからそれが読書や作文になっているのと同じようなものだろう。

 ともかく今も、普段から遊べていなければ、急に思い付くのはウェブ飲み会、お家で踊ろう等のようなことかも知れない。

 遊びも含めて、今、この機会に、この社会について色々と振り返り、少しでも生き甲斐を生み易い社会へと改善されて行くことを期待したい。

 

        叩くより問題提起期待して

 

        叩くより改善案を期待して

 

 その日も自分なりには上手く書けたと思い、慎二がしみじみしていたら、

「おはようございま~す」

「おはようございま~す」

「おはよ~う」

 井口清隆、すなわちメルカリさんが執務室に入って来た。

 慎二はちょっと迷い、メルカリさんの方に「神の手」の液晶画面を向け、見せながら問いかける。

「どう、これぇ? 今日もまあまあ上手く書けたと思うんやけどなあ・・・」

 それだけのことで小心者の慎二は、緊張で耳をひくひくさせている。

「毎朝、よう精が出ますねえ・・・」

 半分呆れ、半分感心しながら、気の好いメルカリさんはさっと目を走らせて、

「あっ、ブログさんとこの子どもさん、関東の方に行ってはったんですかぁ~!?」

 と言いながら一歩、二歩遠ざかる。

 慎二は笑いながら、

「まあ気持ちは分かるけど、別に熱もないし、咳もしてへんかったでぇ~。フフッ」

 メルカリさんはちょっと照れながら、

「いやぁ~、すみません。そんな意味では・・・」

 慎二としても、自分も前日は子どもの話を聞きながら緊張するものがあったから、マジで責める気はない。当然の緊張だし、それぐらいの警戒はした方がかえって好いように思われて、

「ほんま、マジに言えば今はそれぐらいでちょうどええと思うわぁ~。家の子ども、ほんま呑気過ぎるねん・・・」

「・・・・・」

「でもなあ、やっぱり顔を見たら安心するわぁ~」

 3人の子どもを育てているメルカリさんもそれには共感するようで、何時になく真摯な目になって来た。

「ほんまですねえ。家族は一緒に居てこそ・・・」

「フフッ。そりゃそうやけどなぁ~。でも一旦独立しているし、何れまた背中を押して独立させたらなあかん・・・」

 それを聴くと、メルカリさんのところは今が可愛い盛りのようで、心底寂しそうな顔をして、

「あかん、あかん。僕ら、まだそんなん考えられへんわぁ~。ブログさん、強いですねえ・・・」

「ハハハ。そう言うたらメルカリさんとこ、上が女の子や言うてたなあ? 父親にとって女の子はほんま、可愛いもんなあ・・・」

 慎二も下の子のそんな時期を思い出したのか、ちょっと遠い目になった。

 あんまりしんみりすると、これからの仕事にちょっと入り辛くなると思ったのか? メルカリさんはそこで話題を替え、

「パチンコ屋言うたら、うちらの近所でも結構混んでるとこ、ありますわぁ~。その中に大阪ナンバーや京都ナンバーの車もよう観るしぃ~」

「そうやろぉ~!? でも、しゃあないなあ。それしか楽しめるとこなかったら、それにはまってたら行ってしまうんやろなあ・・・」

 慎二はそれでも、お金はともかく、時間の余裕が出来て変わって行った父親の浩治のことを思い出し、更に遠い目になっていた。そしてそんな父親を子どもの頃、パチンコしかすることないのかとちょっと疑問に思っていた自分を思い出し、恥ずかしさを覚え始めていた。

 

        金時間余裕がなくてパチンコし
        余裕出来たら趣味増えるかも