sanso114の日記

日々気になったことを気楽に書き留めています。

人は見かけが9割!?(37)・・・R2.6.14①

              その37

 

 令和2年6月9日、火曜日の朝のこと、藤沢慎二は何時も通り今の職場である心霊科学研究所東部大阪第2分室に7時50分頃に着き、タイムカードにスリットした後、そばに置いてあるアルコール消毒液を掌に溢れんばかりに取り、手指を丸めたり、伸ばしたり、擦り合わせたりしながら念入りに消毒する。

 この消毒液は大分前から置いてあり、来客も含めてそこを通る人の皆が日に数回ずつは使う所為か? この頃は何だかやけに減りが早いように思われる。幾ら呑気で不精者の慎二でも一旦使い始めると、そうしないことが結構大きな不安になって来るのであった。慎二はそれぐらい小心者で、同調圧力に弱いタイプでもあった。だからついでに洗面所に寄って、何回かうがいもしておく。

 そんな一定の安心感が得られる程の儀式的なことまで済ませて執務室に入って来たら、既に正木省吾、すなわちファンドさんが来て居り、スマホを観てはぶつぶつ言いながらしきりにメモを取っていた。これもまた安心感が得られる光景であった。

「おはよ~う」

「おはようございま~す」

 習慣的な朝の挨拶を交わした後、我が国では新型コロナウイルス感染症がほぼ収まっていること、全国的に緊急事態宣言に続いて休業要請も解除されている所為で気の緩みの影響が出始めたのか? 福岡県、東京都、神奈川県、北海道等と、広範囲に亙ってまだ感染者が中々0にならず、時には増えたりもしていること、大阪でも難波、天王寺、京橋、梅田等の繁華街で人波が確実に増えていること、通勤電車や駅に学生が見られるようになり、程々に混んでいるときも増えたこと、ファンドさんの一番の関心事である株価に相変わらず大きな変動が起こっていること等、ひと通り世間話をし、慎二は自前の中古ノートパソコン、「神の手」をおもむろに開いた。そして、上手く書けたと思う時は即座にブログにアップ出来るように、テザリング用に格安のSIMを挿したスマホまで用意しておく。

 個人的なことも含めて何処まで書くか何か迷うところでもあったのか? その後は暫らく考え、それからおもむろにメインに使っているスマホを取り出し、通勤電車の中、待ち時間、隙間時間等にメモしておいたものを見直しながら起こして行く。この日はそれ以外にも、前日のことを思い出しながら付け加えておくことにする。

 ファンドさんの関心は既に投資関係の記事に移っており、またスマホを見詰めてぶつぶつ独り言ちながら、熱心にメモを取り始めた。

 

          朝のひと時雑詠

 昨日帰って来たら、楽しみにしていたDENONの小型スピーカー、「SC-M41-CW」が届いていた。

 同じメーカーの「SC-N7」ではちょっと低音が寂しい気がし、もう一回り小さい「SC-N5」でも同様であった。

 なんて、同じレベルで更に小さくなっているのであるから、これは当たり前か!?

 でも、その割には頑張っている気がした。

 それに、後から出た所為か、見た目も少しはましに見える?

 それを昨日届いた、もっと後の製品である「SC-M41-CW」に取り換えてみると、これは確かに好い。

 大きさは「SC-N7」と大して変わらない気もするが、低音までしっかり出ていて、レベルがちょっと違っている気がする。

 こうなって来ると、アンプを今使っている3500円ぐらいの中華デジタルアンプではなく、もう少し出せば更に好くなるのではないか!? と思えて来る。

 なんて遊んでいたら、子どもが半分呆れ気味に笑っていた。

 それで好い。

 この遊びがこれからの仕事の充実へと繋がるわけさ。フフッ。

 

        安物のオーディオ替えてご機嫌に

 

        機嫌好く遊べば仕事充実し

 

 同時に届いたANKERのステレオミニプラグのケーブル、これが中々お洒落であった。

 以前ANKERのブルートゥースアダプタを買ったことがあるが、これも中々洒落ていた。

 箱も含めてスマートであった。

 ブルートゥーススピーカーも結構売れ筋のようである。

 私の場合、よく知らずauのショップでANKERの「Soundcore」を3000ポイントで貰ったことがあるが、値段の割に頑張っている気はしていた。

 正直に言えば、一番感心したのは充電池がしっかりしていることであった。

 アダプタ、スピーカー共に1度満タンまで充電しておけば結構長く使えている。

 何でもないようで、今の時代、これは大きな利点であるように思われる

 それはまあともかく、昨日はそんな感じで遊んでいる内に、直ぐに寝る時間になってしまった。

 そんな風に出勤日が続くと中々気忙しい。

 少しずつ心身は働くことに慣れて来た気もするが、元々気忙しいのはあまり好きではない。

 なんて甘いことを言いつつ、もう1年もしない内にこの生活とはお別れである。

 そう思うと、何だか変な気分ではある。

 

        アマチュアのままに仕事を卒業し

 

 でもまあ私のテーマは機嫌好く生きることであるから、これで好い気もしている。

 ところで、ここ暫らく韓国ドラマを視ることが多くなっている。

 はまり出すとずっと視続けてしまい、他に何も出来なくなってしまうので、気を付けなくっちゃね。フフッ。

 暇であれば、悪いことではない限り何をしていても好いはずなのであるが、まだ暫らくは制限を掛けていたい気もしている。

 私なりの微妙な拘りである。

 この拘りがあるからこそ人間なのかも知れない。

 

        拘りが人の言動規定して

 

        拘りが人の言動美しく

 

        拘りが人の言動恰好よく

 

 なんて、実は他の動物のことをそんなに分かっているわけではない。

 だから、NHKの「ダーウィンが来た」とかを視ていると、驚かされることが多い。

 意外な頭の良さ、意外な進化等に目を見張るわけである。

 それも人間の為に造ったと言う宗教もあるかも知れないが、そうだとして考えてみても、中には、意味分かんない!? と言いたくなるようなことも多々あるようだなあ。フフッ。

 

        自然界意味までは未だ見えて来ず

 

        自然界意味までは未だ闇の中

 

 それはまあともかく、今、通勤電車の中であるが、少しずつ人が増えている。

 相変わらず彼方此方の消毒を続けながら、何とか日常を取り戻しつつあるところか!?

 そんな中、明後日に用事があるので、久し振りに大阪市内を通る予定である。

 以前にクラスターが発生した辺りも通るから、ちょっと緊張している。

 でもまあ、時間は待ってくれない面もあるから、仕方の無いところだろうなあ。

 その用事と言うのは、どうやら母親の終活のようであるから、子どもとしては避けて通るわけにも行かない!?

 ともかく話を聴いてみないとよく分からないので、重い腰を上げて、仕事疲れが残っている中、何とか行く予定にしている。

 この、親の為にせよ、自分の為ではないことに時間やお金を割くのも悪くない気がしている。

 現代においても皆にはあてはまらないのかも知れないが、少なくとも私は、自分および家族の為だけに時間とお金を使いたがるところがあるようだなあ。フフッ。

 

        時間金他人の為にも使いたい

 

        時間金自分だけでは寂しくて

 

 さて、最寄り駅が近付いて来た。

 そろそろ気持ちを切り替えなくっちゃね。

 

 その辺りまで書いて、自分なりには今日も上手く書けたと思い、慎二がしみじみしていたら、

「おはようございま~す」

「おはようございま~す」

「おはよ~う」

 井口清隆、すなわちメルカリさんが執務室に入って来た。

 慎二はちょっと迷い、メルカリさんの方に「神の手」の液晶画面を向け、見せながら問いかける。

「どう、これぇ? 今日もまあまあ上手く書けたと思うんやけどなあ・・・」

 それだけのことで小心者の慎二は、緊張が高まって耳をひくひくさせている。

「ブログさん、相変わらず毎朝、よう精が出ますねえ。どれどれ・・・」

 気の好いメルカリさんはそう言って半分呆れ、半分感心しながら、さっと目を走らせて、自分のことと重なるところでもあったのか? ちょっと遠い目になって言う。

「そうですかぁ~? ブログさんのお母さん、大変そうですねえ!?」

「うん、まあ。もうええ年やからなあ・・・」

「一体お幾つですかぁ~?」

「まあ俺がもう65歳になるしなあ。今年で90歳になるねん」

 慎二もちょっと遠い目になる。

 メルカリさんはちょっと優しい目になって、

「うちは65歳やから、ちょうどブログさんと同じぐらいですけど、ブログさんも書いてはるように、自分のことばかりに気ぃ~行って、中々会いには行けてませんねん」

「ふぅ~ん、ところでメルカリさんは何処の出身やったんかなあ?」

「山口です」

「そやったんかぁ~。道理で・・・」

「えっ、何が道理ですかぁ~?」

「いや、時折アクセントと言うか、イントネーションと言うか、何か俺とは違う気がしていたんでぇ・・・」

「大学からは関西ですけど、確かにそんなところもあるかも知れませんねえ・・・」

「ほな、今は新型コロナウイルス感染症の関係で余計に帰り難いなあ」

「そうですねん・・・」

 そう言いながらメルカリさんはちょっと寂しそうな目をして立ち上がり、コーヒーを淹れに行った。

 そこに事務を担当している若い依田絵美里がお茶を持って来て、慎二の机の上にそっと置く。

 それから「神の手」の液晶画面にさっと目を走らせて、

「お母さん、もう退院されたんですかぁ~!?」

 慎二は以前、仕事に影響することも考えて、絵美里に母親の祥子が肺炎で入院していることを言ってある。PCR検査の結果、幸い新型コロナウイルス感染症ではなかったことも。

「うん! ありがとう。ついこの前やから、1か月半ほど入院していたことになるかなあ・・・。依田さんなんかお母さんもまだまだ若いんやろぉ?」

「ええ。私は母が割と若い時に生まれた子だったようで、今年で42歳になります」

「ほな、メリカリさんと変われへんなあ・・・」

《俺の孫みたいなもんやなあ・・・》

 と思いつつも、そこまでは口に出せず、慎二はお茶に手を伸ばす。

 頃合いと見たか? 絵美里はそっと遠ざかって行った。

 その颯爽としてスマートな後ろ姿に目をやりながら慎二は、

《あかん、あかん!》

 そんな風に反省し? 軽く首を振って邪念を振り払い、漸く仕事の顔になった。

 

        親の年聴いて改め年を知り
        少し気持ちが落ち着くのかも

 

        同僚の親の年知り自らの
        年を考え落ち着くのかも