sanso114の日記

日々気になったことを気楽に書き留めています。

人は見かけが9割!?(47)・・・R2.6.28①

            その47

 

 令和2年6月24日、水曜日の朝のこと、藤沢慎二は何時も通り今の職場である心霊科学研究所東部大阪第2分室に7時50分頃に着いて、玄関ホールでタイムカードをスリットした後、そばに置いてあるアルコール消毒液を掌に溢れんばかりにたっぷりと取り、手指を丸めたり、伸ばしたり、擦り合わせたり、爪の間にも染み込ませようと指先を掌でトントンしたりし、ともかく丁寧過ぎるぐらい念入りに消毒する。

 この消毒液は大分前から置いてあり、来客も含めてそこを通る人の皆が日に数回ずつは使う所為か? この頃は何だか減りが早いように思われる。幾ら呑気で不精者の慎二でも一旦使い始めると、そうしないことが結構大きな不安になって来るのであった。慎二はそれぐらい小心者で、同調圧力に弱いタイプでもあった。だからついでに洗面所に寄って、持参した米国製超強力うがい薬で何回もうがいをしておく。

 そんな一定の安心感が得られるまでの儀式的なことまで済ませて執務室に入って来たら、これも何時も通り、既に正木省吾、すなわちファンドさんが来て居り、スマホを観てはぶつぶつ言いながらしきりにメモを取っていた。その変わらなさ加減にも結構大きな安心感があった。

「おはよ~う」

「おはようございま~す」

 習慣的な朝の挨拶を交わした後、もしかしたら梅雨入りしてから蒸し暑くなって来た影響もあるのか? 梅雨の合間にもしっかりと感じられるほど紫外線が強くなっている効果も大きいのか? 我が国では急速に新型コロナウイルス感染症が収まっていること、また全国的に緊急事態宣言に続いて休業要請、更に都道府県をまたぐ移動の自粛要請も解除されている所為で早速気の緩みが出始めているのか? 福岡県、大阪府、神奈川県、東京都、埼玉県、千葉県、北海道等と、広範囲に亙ってまだ新たな感染者が中々0人を維持出来ないこと、時には無視出来ない数が出ていること、大阪でも難波、梅田、天王寺、京橋等の繁華街で人波は確実に増えて来ていること、通勤電車や駅に学生が見られるようになり、程々に混んでいるときも増えたこと、外国では米国、ブラジル、イギリス、イタリア、ロシア、インド、イランと相変わらず広範囲に亙って猛威を振るっていること等、ひと通り世間話をし、それから慎二は自前の中古ノートパソコン、「神の手」をおもむろに開いた。そしてそばには、上手く書けたと思う時は即座にブログにアップ出来るように、テザリング用に格安のSIMを挿したスマホまで用意しておく。

 他人の目も意識して何処まで書くか何か迷うところでもあったのか? その後は暫らく考え、それからおもむろにメインに使っているスマホを取り出し、家を出る前、通勤電車の中等でメモしておいたものを見直しながら起こして行く。

 ファンドさんの関心は既に投資関係の記事に移っており、またスマホの液晶画面を見詰めてぶつぶつ独り言ちながら、熱心にメモを取り始めた。

 

          朝のひと時雑詠

 今週3日目の出勤日となった。

 昨日は寝る前の気温が何と30℃を超えていた。

 もっとも目覚まし用に買った安物の電波時計に付属した温度計で、高いところに置いてあるのも関係しているようであるが、床に置いてある空気清浄機が示す温度よりも2℃から3℃ぐらい高く出る。

 それにしても高い!?

 仕方が無いからエアコンを入れて寝たら、途中で寒くなって目が覚めた。

 それからは眠りが浅くなったようで、途切れ途切れに記憶が残っており、それが如何にも夏の朝らしい気怠さとして残っている。

 まあ好い。

 今日を何とか乗り切れば、明日からは4連休である。

 それが働く為のエネルギーとなる。

 なんて、ちょっと情けなく始まったが、もしかしたら天気が下っているのだろうか!?

 低気圧の心身への悪影響はこの頃色々な人が口にするようになっている。

 朝食を摂りながら視ていたテレビの天気予報によると、確かに天気は下って来る様子であった。

 それでも今日に限れば、関東は次第に雨が降り出すようであるが、関西は曇るぐらいで済みそうだ。 

 ただ週末から来週前半に掛けては如何にも梅雨らしい天気になるようだから、連休中に買い物がてらの散歩を楽しめるかどうかは、ちょっと微妙になって来た。

 そう言えば富士急ハイランド志摩スペイン村USJハウステンボス美ら海水族館等、各地で既に再開されている施設もあるし、東京ディズニーランドのように7月に再開する予定のところもある。

 そんな空気に誘われたか? 家人と子どもは昨日、暑い中、平城宮跡に遊びに行って来たと言う。

 あそこはまあ1km四方のだだっ広い空間ではあるが、それでも朱雀門大極殿等、少しずつ増えて来る建物を巡って歩きながら、悠久の昔を偲ぶことが出来る。

 

        平城の都の跡に降り注ぐ
        お日様からの変わらぬ視線

 

        お日様にとって千年僅かなり
        ちまちまとした世界なのかも

 

        ちまちまと暮らす人間世界でも
        人にはそれが全てなのかも

 

        どうせなら此の身宇宙に浮かばせて
        視野を広げりゃ気楽なのかも

 

 ところで、週の後半が休みと言うのは気楽なようで、仕事をする上では結構抜けてしまうようだ。

 そりゃそうか!?

 私も含めて、一般的に週の後半に何とかまとまりを付けようとアクセルを吹かせる。

 つまり追い込みに入る。

 そこがすっぽりと抜けてしまうのであるから、当然のことだろうなあ。フフッ。

 でもまあ、その分、気楽にもなっているのだろう。

 さて、そろそろ出る準備に入った方が好さそうだ。

 頭の中でざっと今日の仕事をシミュレーションしてみると、手際よく進めれば昨日よりはゆったりと進められそうに思えて来た。

 出来ればそうありたい。

 今更やっつけ仕事はやりたくない。

 これまで忙しくして来たことで、どれだけの夢を奪われて来たことであろうか!?

 振り返ってみると、結構長い間書き物を楽しむ元気もなかったように思われる。

 今、以前途切れ途切れに書いていたものも見直しながら、漸く新たに書き始めたところであるから、この時間は大切にしたい。

 なんて書いていると、仕事からは気持ちが遠ざかっているような気がして来たなあ。フフッ。

 そう言えば昨日、机上に置いてあった本部からFAXによって届いた私宛のメモをみると、名前が微妙に間違ってあった。

 私の場合結構ありがちなことで、大きなショックはなかったが、結構長く一緒に仕事をした同僚であったから、関係の希薄さを意外に思った覚えがある。

 それはまあともかく、今、生駒駅で尼崎駅行きの普通電車に乗り換えたところである。

 今日は空いている。

 席が全部埋まって、各扉の付近に1人ずつ立っている感じか?

 1つの車両に10人とは立っていない。

 生駒トンネルを抜けても青空が広がっている。

 予報通り今日1日は天気が持ちそうに思われる。

 好かった、好かった。ホッ。

 さて、昨日のプロ野球であるが、気に留まった投手としては阪神タイガースの青柳晃洋(26歳、183cm、84kg)か!?

 6回で77球投げ、1安打3三振1四球1死球無失点の快投で、ヤクルトスワローズとの対戦を4対1と勝利に導いている。

 ただ、初戦に登板したエースの西勇輝と言い、交代が早過ぎる気はする。

 

        タイガース先発早く交代し

 

        タイガース先発早く諦めて

 

 ただ、ファンから観るとそれで好いらしい。

 私は阪神タイガースのファンではないので、チームやファンが好いのであればそれならば好いが、不思議な気はしている。

 

 その辺りまで書いて、自分なりには今日も上手く書けたと思い、慎二がしみじみとしていたら、

「おはようございま~す」

「おはようございま~す」

「おはよ~う」

 井口清隆、すなわちメルカリさんが執務室に入って来た。

 慎二はちょっと迷い、メルカリさんの方に「神の手」の液晶画面を向け、見せながら問いかける。

「どう、これぇ? 今日もまあまあ上手く書けたと思うんやけどなあ・・・」

 それだけのことで小心者の慎二は、緊張が高まって耳をひくひくさせている。

「ブログさん、相変わらず毎朝、よう精が出ますねえ。どれどれ・・・」

 気の好いメルカリさんはそう言って半分呆れ、半分感心しながら、さっと目を走らせてホッとしたように、

「そうそう! プロ野球やゴルフとかのスポーツもそうやけど、テーマパーク、水族館等、遊ぶところも漸く再開されてますねえ!?」

「でも、学校は全国的に夏休みを短くするなんて言うてるし、メルカリさんの子どもさんの学校、夏休みあるん!?」

「ええ。何とか8月一杯ぐらいありそうですよ。もっとも僕と嫁さんが盆休みどれぐらい取れるかやけど・・・」

《メルカリさんは既にテレワークを大分してるから、実際には大分休んでいることを気にしているのかも知れないなあ》

 そう思った慎二は、ここは先輩らしく気遣いをしておくことにした。

「でもまだ内の職場はテレワークの制度を継続しているようやし、上手いこと使って出勤日を減らしたらええんちゃう!?」

 表向き、休んだらええやん、とは言えない。

 それを聴いてメルカリさんはパッと目を輝かせ、

「そうですねえ!? すみません。もしかしたらお言葉に甘えるかも知れませんけど、その時はお願いします!」

 そう言いながら軽やかに立ち上がり、コーヒーを淹れに行った。

 そこに事務を担当している若い依田絵美里がお茶を持って慎二の机の上にそっと置き、「神の手」の液晶画面に目を走らせる。

 それからちょっと躊躇した後、申し訳なさそうな顔になって言う。

「藤沢さん、すみません。私ももしかしたら友達と旅行に行かせていただくかも知れません」

《どんな友達と!?》

 と思わないでもなかったが、ここはそんな邪念をちょっと抑えて、

「ええよ、ええよ。どうせ俺、休みになっても家に籠っているだけで、何処にも行けへんしぃ・・・」

 そう言う慎二の目は暫し父親のように優しくなっていた。

 それを見て絵美里はホッとしたように微笑み、

「ありがとうございます!」

 そう言って足取り軽く離れて行った。

 そして、その背中を見送る慎二の目がちょっと寂しさを浮かべていたことには誰も気付いていないようであった。

 でもまあ、それも持ちつ持たれつ、お互い様のことで、それが職場の人間関係の好さでもある。

 慎二はこれまで自分が色々な先輩にお世話になって来たことを思い出しながら当然のこととして納得しようとしていた。

 

        盆休み皆で旅行を計画し
        遊ぶ余裕が出て来たのかも