sanso114の日記

日々気になったことを気楽に書き留めています。

人は見た目が9割!?(最新版その21)・・・R3.12.19①

            その22

 

 令和2年5月11日、月曜日の朝のこと、藤沢慎二は何時も通り今の職場である心霊科学研究所東部大阪第2分室に7時50分頃に着き、玄関ホールの受付前に設置してあるタイムレコーダーにICチップ入りの職員証をスリットした後、そばに置いてあるアルコール消毒液で手指を消毒する。

 これは大分前から置いてあり、来客も含めてそこを通る人の皆が日に数回ずつは使う所為か? この頃は何だか減りが早いように思われる。幾ら呑気で不精者の慎二でも、ちょっとした不安を覚えて一旦使い始めると、そうしないことが結構大きな不安になって来るのであった。慎二はそれぐらい小心者で、同調圧力に弱いタイプでもあった。だからついでに洗面所に寄って、うがいもしておく。

 そんな一定の安心感が得られるまでの儀式的なことを済ませ、ふぅーふぅー言いながら階段を3階まで上がり、割り当てられた執務室に入って来たら、これも何時も通り、既に正木省吾、すなわちファンドさんが来て居り、ちょっと古めのiPhoneの端に何本もひびが入った液晶画面を見詰めてはぶつぶつ独り言ちながら、頻りにメモを取っていた。その変わらなさ加減にも結構大きな安心感があった。

「おはよ~う」

「おはようございま~す」

 日常的な朝の挨拶を交わした後、大阪府に新たな休業要請が出されたことに対する色々な職場の対応、通勤電車の混み具合、ファンドさんの一番の関心事である株価には相変わらず大きな変動があること等、一頻り世間話をし、慎二は自前の中古ノートパソコン、「神の手」をおもむろに開いた。そして、上手く書けたと思う時は即座にブログにアップ出来るように、そばにはテザリング用に格安のSIMを挿したスマホまで用意しておく。

 何か迷うところでもあったのか? その後は暫らく考え、それからおもむろにメインに使っているスマホを取り出し、通勤電車の中でメモしておいたものを見直しながら起こして行く。

 ファンドさんの関心は既に投資情報に移っており、またiPhoneの液晶画面を見詰めてはぶつぶつ独り言ちながら、熱心にメモを取り始めていた。

 

        朝のひと時雑詠

 新型コロナウイルス感染症の影響で大阪府から引き続き休業が要請され、彼方此方の職場では非正規雇用の労働者が割を食っている。

 そんな中、大きな割合でクローズアップされているのが女性である。

 それに外国人、障がい者、老人も入るだろう。

 さらに今は若者にまで非正規雇用が広がっているから、当然割を食う対象が若くて元気な男性にまで広がっている。

 そんな記事を読んでいる内にフリーターと言うちょっと懐かしい響きを感じる言葉が気に留まった。

 ウィキペディアによると1985年(昭和60年)頃に音楽分野で散見されたとあった。

 私にとって意識に上ったのは大学を卒業した時のことであった。

 それは1985年よりもう少し前のことで、1978年(昭和53年)のことである。

 就職が決まらなかった私は、大阪市内にあるガラス工場で足掛け3か月ほどアルバイトをしていた。

 8時間働いて1日3600円であったから、時給450円になり、当時では悪い方でもなかった!?

 それでもその年の夏に正規に勤め始めた時の初任給にボーナス、諸手当等を加えて計算してみたら(実際にはそれが収入になるようである)、この倍ほどにはなったから、やっぱり非正規は恵まれない。

 そんな私と同時期にアルバイトを始めた或る若者が、ちょっと話が弾み出した頃、実は高卒で、確か19歳と言っていた記憶がある。

 そして2年ほどフリーターをしながら、自分に向いた道を探すつもりだと明るく言っていた覚えもある。

 古くて薄暗い工場で耳にした新しい響き、そんな感じであった。

 その後、私自身に怒涛のような日々が過ぎて行く中ですっかり忘れていたが、その頃から使われていたとすると、もう40年以上になるわけか!?

 因みに正規に就職した会社でも非正規と正規の違いが嘆かれていた。

 正規の場合、一般的な高卒の女性としてはかなり高い方の給料を貰っており、当時は社屋が片田舎にあったので、周りの他の会社に正規で勤める同世代の男性よりも多いぐらいであった。

 また、私も含めてその会社に大卒で勤めていた人と比べても違いは年齢差による違いぐらいしかない。

 しかも、高卒の女性達が担当しているのは普通の事務、および仕分け、発送準備等の、その会社では何方かと言えば易しい部類の仕事であった。

 それが、徐々にパートの女性が増え、その女性達の多くが短大卒で、よりレベルの高い仕事を請け負うようになった。

 その短大卒の女性の内のひとりとたまたま家族ぐるみの付き合いをさせて貰うようになったのであるが、彼女が言うには、自分達の給料は世間一般のパート並なのに、社内では難しい仕事を請け負い、おまけに社員と同等の責任までも負わされたとか。

 聴いている内についつい同感し、何か変だなあと思って聴いていた覚えがある。

 そして令和となって、平成を挟んで昭和の頃の雇用状況とひとつも変わらず? いやむしろ悪くなっているぐらいで、今それがコロナ禍と言う緊急事態に直面して炙り出されている!?

 まあ人の本質は変わらないってことだろうなあ。フフッ。

 

        コロナ禍や社会の矛盾炙り出し

 

        コロナ禍や社会の遅れ炙り出し

 

        コロナ禍や人の醜さ炙り出し

 

 ずっと前から、人の本質なんてギリシア、ローマの時代から変わらないと言われるぐらいであるから、そりゃ僅か40年ぐらいで変わらなくても当たり前であろう。

 そういう意味でも牽制し合うこと、監視し、必要あらば闘うべきだと言うのは民主主義、および自由主義経済における基本なんだろう。

 どうせならそう言う緊張する場面に若い力の発露を見たいものだなあ。フフッ。

 

        コロナ禍や若い力に期待して

 

        コロナ禍や後の復活期待して

 

 今、我が国においては第一波? が漸く終息しつつあるように思われる。

 相変わらずごく一部を切り取ってPCR検査していることに変わりはないようであるが、それでも新たな感染者の数は明らかに減っている!?

 例えば私の職場がある大阪府内でも新たな感染者の人数が1日に10人前後で推移するようになった。

 多少気の緩みも出始めたようであるが、それでも通勤電車、街、職場等では一定の緊張感が保たれている。

 その辺りは我が国の誇れるところであろう。

 さて、問題はこの後である。

 大阪府の人口約1000万人に対して10人であれば、僅か0.0001%になり、確かに気が緩むのかも知れない。

 しかし、実際には切り取って検査した中での10人であるし、無症状でPCR検査を受けていない感染者が多くいるであろうこと。

 既にそれらしい症状が出て、感染している可能性を持ちながらもPCR検査を待っている人が結構いるらしいこと。

 つまりは、実際の感染率がはっきりとは分からないこと。

 また、感染した時の症状が想像以上であり、重症化した時の進行速度もそうであること。

 そんなことが為政者側や一部の組織にある意味吃驚するような緊張感を漂わせ、神経質過ぎるように見える対策を取らせていることも忘れてはならない。

 

 そこで手を止め、まあまあ上手く書けたような気がして慎二がしみじみとしていたら、

「おはようございま~す」

「おはようございま~す」

「おはよ~う」

 井口清隆、すなわちメルカリさんが執務室に入って来た。

 メルカリさんはこの頃職場でも認められているテレワークをしていることが増えているので、出勤日が基本的に週3日であるが、その週3日の出勤日を週2日に減らしている慎二とはすれ違っていることが多くなっていた。

 因みに慎二は、元々面倒臭がりなところに年齢的なものも加わって、ちょっとした手続き、報告と言ったことが煩わしくなって、テレワークはせず、週1回程度有休を取ることによって何とか出勤日を減らしている。

 慎二はちょっと迷ってから、メルカリさんの方に「神の手」の液晶画面を向け、見せながら問い掛ける。

「どう、これぇ? 久し振りやけど、僕なりにはまあまあ上手く書けていると思うんやけどなあ・・・」

 それだけのことで小心者の慎二は、久々に見て貰う緊張も加わって頬を紅潮させ、耳たぶをひくひくさせている。

「ブログさん、相変わらず毎朝、よう精が出ますねえ。流石、その変わらなさに安心しますわぁ~。どれどれ、ふむふむ、・・・」

 半分呆れ、半分感心しながら、気の好いメルカリさんはさっと目を走らせて、

「ふぅ~ん、フリーターって言い方、そんなに前から使われてたんですかぁ~!?」

 マジに感心したように言うので、慎二はちょっと得意気になって来た。その辺り、幾つになっても至って単純な慎二であった。

「そうやねん。その点大阪市はやっぱり大都会なんやろなあ。そして俺はその大阪市内の生まれから、生粋のシティーボーイと言うわけやなあ。フフッ」

「ハハハ。えらい嬉しそうですねえ。ハハハハハ」

「ウフッ。ウフフフッ」

 メルカリさんだけではなく、事務仕事全般を担当している若い依田絵美里も笑っていた。

 そう言えば絵美里は慎二が何時来ても来ているから、どうやらテレワークはしていないようである。

 久し振りに見るメルカリさんもいる所為か? 絵美里は気を利かせて、慎二にはお茶、メルカリさんにはコーヒーを持って来てくれた。

 そんな遣り取りを聞くともなしに聞いているようなファンドさんの表情も心なしか明るくなっているようである。

 そんな風に久し振りに集まった皆には明るい様子が見られ、これからの前途が幾分明るいものに感じられ始めた。

 

        感染者目に付くほどに減り出して
        幾分気持ち上向くのかも

 

        感染者驚くほどに減り出して

        幾分気持ち和らぐのかも

 

     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆

 

 この時の新規感染者数が今と同じぐらいであったようだ。

 

 既にそんなことはすっかり忘れていたが、確かにその頃の谷は深かった!?

 

 その後は谷でも結構な新規感染者が出ているような緊張を緩められない時期が何度もあり、今回また谷が深くなっているようだが、この後にまた大きな山が何度もやって来るのか、それともある程度のところで抑えられるのか?

 

 ちょっと注目しておきたいところである。