その1 青い光
「この年末年始、街ではやけに青い光が目に付くねえ。どうしてだろう?」
片瀬公彦が言った。
「どうやら君はこの色を好きじゃないようだねぇ~? フフッ」
柳本明生が鋭く感じ取って言った。明生は公彦のことになると、普段になく鋭くなるようだ。
「うん。好きじゃない。あれを見ていると、ただでさえ寒いのが、余計に寒くなる。どうしてあんな淋しそうな色が流行るのか!? 僕には何だか不思議で仕方がないなあ」
明生が言葉ではなく気持ちに切り込んだので、公彦は自然と自分の気持ちと向き合うことになった。何だか落ち着かなくなってしまうが、公彦はその違和感が別に嫌いなわけでもなかった。
と言うより、その妙な緊張感を楽しんでもいた。
そう。公彦は公彦で、明生に特別な感情を抱き始めていたのである。
しかし2人とも、その感情が青い光によってより強く引き出されていることには全く気付いていなかった。
数年後のこと、政府のお偉方2人が、とある超高級料亭の奥まった一室で、夕食を摂りながら雑談風に話し合っていた。
と言っても、こんなところから国民生活に大きく作用する重大な案件が事実上決まることも多いらしいから、馬鹿には出来ない。
その内の1人が渋い顔をしながら言う。
「おい。あれは失敗だったなあ・・・。他ならぬ君が少子化抑制にきっと効果があるはずだ、なんて言うものだから、偶には政府がこんなロマンチックな演出をするのも悪くないかと思い、陰ながら支援してみたのに、少しも子どもが増えんじゃないかぁ~!? それどころか、街には怪しいカップルが増えるばかりだ。ほんと、困ったものだなあ・・・」
「そうですねぇ~。フフッ。でも、僕たちに取っては住み易い世界になったじゃないですかぁ。フフフッ」
そう言って、もう一人が怪しく笑った。
街照らす青い光に誘われて
怪しい愛を育むのかも
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
もう15年以上前に書いた小話である。
通勤ショートショートと言うのは、その頃片道1時間半以上掛かるところまで通勤しており、通勤中に幾つか書いていたからである。
職場で近くにいる人を意識して書いたから、内輪受けを狙っているところがある。
それはまあともかく、当時やたら青い光の飾り付けが増えて、何だか微妙な気がしていたことを思い出す。
それまでは暖色系が中心だったので、寒いところに青一色はどうもいただけなかった。
それ以後も増え、今も残っているのは、人々の気分にはそれがマッチしたと言うことだろうか!?
それから、同性愛を思わせるようなところは昨今、微妙な題材になりつつあるのかも知れない。