sanso114の日記

日々気になったことを気楽に書き留めています。

人は見た目が9割!?(最新版その26)・・・R3.12.21③

            その26

 

 令和2年5月21日、木曜日の朝のこと、藤沢慎二は何時も通り今の職場である心霊科学研究所東部大阪第2分室に7時50分頃に着き、玄関ホールの受付前に設置してあるタイムレコーダーにICチップ入りの職員証をスリットした後、そばに置いてあるアルコール消毒液を掌に溢れるほどたっぷり取って、それを擦り込みながら手指を丸めたり、伸ばしたりし、指の間まで丁寧に消毒する。

 この消毒液は大分前から置いてあり、来客も含めてそこを通る人の皆が日に数回ずつは使う所為か? この頃は何だか減りが早いように思われる。幾ら呑気で不精者の慎二でも気になって、一旦使い始めると、そうしないことが結構大きな不安になって来るのであった。慎二はそれぐらい小心者で、同調圧力に弱いタイプでもあった。だからついでに洗面所に寄って、何度もうがいをしておく。

 そんな一定の安心感が得られる程の儀式的なことまで済ませて、息を切らせながら階段を3階まで上がり、割り当てられた執務室に入って来たら、今日も、これまでならば既に居るはずの正木省吾、すなわちファンドさんが来て居ない。どうやら結構頻繁にテレワークをしているようである。

 テレワークが認められるまでは朝、2人で暫らく世間話をするのが習慣のようになっていたから、慎二はちょっと物足りなかったが、仕方が無い。諦めて自前の中古ノートパソコン、「神の手」をおもむろに開いた。そして、上手く書けたと思う時は即座にブログにアップ出来るように、そばにはテザリング用に格安のSIMを挿したスマホまで用意しておく。

 誰か知っている人が読むことを想定してどの辺りまで書こうかと迷うところでもあったのか? その後は暫らく考え、それからおもむろにメインに使っているスマホを取り出して、通勤電車の中でメモしておいたものを見直しながら起こして行く。

 

       朝のひと時雑詠

 今日は出勤日である。

 その所為もあってか? 5時前には目覚めてぼちぼち動き出した。

 どうやら今日、私の職場がある大阪でも緊急事態宣言が解除されるようだ。

 休業要請の解除もより進んで行くはずである。

 それで昨日は、家の近所でも中高生の動きが見られ始めたのだろう。

 さて、これから一体どうなって行くのか!?

 私にしても初めての経験であるから、私より年齢的に下の世代である社会を主に動かす側にいる多くの人は当然そうなるはずである。

 当たり前のことではあるが、実体験としては分からず、周りの国、歴史等を参考にすることになる。

 ただ我が国の場合、高校までの学校教育において、地理はともかく、歴史については近現代について大分疎かにして来た経緯がある。

 その辺りの改善もこれからじっくり考えて行くべきことだろうなあ。フフッ。

 論理的な思考についてもそうで、たとえば地震について幾ら過去の記録が残されている方だとしても、またそれを平均して何年周期とか、今後何年以内に起こる確率が何%までは計算値として出せても、それを絶対的なものと考えて警戒し過ぎるのはちょっと変な気がする。

 数値化した後に感情的になり過ぎるきらいがあるのだ。

 上記の数値を示した公的な機関が出している資料をみれば、それには曖昧な点があることについても書いてある。

 ちょっと考えてもそのはずであろう。

 我が国以外のデータがきちんと揃っているのかどうかは分からず、したがって何処までをカバー出来ているのか、よく分からない。

 それに、地表面以外へのエネルギーの通り抜け方はどうなのか?

 色々分からないから、予測の付かないことが起こっている。

 そこは抑えておくべきことだろうなあ。

 

        感情を抑えて論理期待して

 

        感情を抑えた思考期待して

 

 それはまあともかく、私の職場でも今後のことについて検討を始めており、仕事の取組み方を変えて行く必要に迫られるのかも知れない。

 そう言う意味では気忙しくなりそうだ。

 

        ぼちぼちと職場に動き出始めて

 

        ぼちぼちと職場に動き見え始め

 

 そう言えば、NHKの朝ドラ、「エール」もまた毎朝は視ていられないから、録り貯めておいて週末に一気に視ることになりそうだなあ。フフッ。

 まあ好い。

 それにしても1日に15分では短過ぎる。

 土曜日にBS2でやっている5本分まとめても、重なりを除けば実質1時間ぐらいの感じがするもんなあ。

 

        朝ドラにエール貰って出勤し

 

        エール視てエール貰って出勤し

 

 ところで、最寄り駅から通勤電車に乗った時点では座席にまあまあ余裕があり、飛び飛びに座っている程度である。

 次の駅でその空間に1人ずつと言った感じで座り、隙間が少し広い程度に収まった。

 この状況も少しずつ変わって来るのだろう。

 確かに空いた電車、ゆったりした時間、働かなくても貰えるお金等、コロナ禍故に享受出来たことって幾つかありそうだなあ。

 もっとも政府から支給されるはずのマスクとお金はまだその影もやって来ないがね。フフッ。

 

        解除されまだ届かないマスクかな

 

        解除されまだ届かないお金かな

 

        解除されまだ届かない給付金

 

 乗換駅の近鉄生駒駅での混み具合は中々であったが、乗り換えた近鉄奈良線の電車の方は普通の所為か? 空いていた。

 ただ、元々座席には1人ずつとなるように窪みが付けてあり、私が座ったところは2人分空けてあった。

 当然その真ん中辺りに座ったのであるが、ちょうど股の間にその盛り上がった縁が来て、何だか座り心地が悪い。

 隙間を優先するのか?

 はたまた座り心地を優先するのか?

 悩ましい問題だなあ。フフッ。

 

        一つ取り一つは捨てる覚悟して

 

        一つ取り一つは捨てる覚悟決め

 

        一つ取り一つは捨てる難しさ

 

 結局真ん中より少しずれて、股の間から縁を外しただけに終わった。

 あんまり一方の隣の人に寄るのも気が引け、だからと言って縁の上にずっと座っているのも変な感じである。

 仕方の無いところであるが、我ながら相変わらず中途半端な奴やなあ。フフッ。

 マジな話、結局これは気持ちの問題だけのような気がして来た。

 この程度について気にしてみても、新型コロナウイルスの感染リスクがはっきりと分かるほどに減るわけではない!?

 なんて書いていると、向かいの席から湿り気のある咳が数回聞こえて来る。

 それに新型コロナウイルスが含まれているかどうかは分からないが、可能性が無くは無いから、微妙な気になって来る。

 これから通勤することが増えて来るから、その緊張感は暫らく拭えないのであろうなあ。

 さて、今日の天気であるが、晴れマークに少し雲が掛かっている。

 確かに、車窓から外を眺めると、雲の間に青空が広がっていると言う感じである。

 それでも十分に明るいから、お天道様と言うのは本当に有り難い。

 そう言えば、家を出た時に眺めた生駒山は朝日が当たって暖かそうで、今にも笑い出しそうな感じであった。

 

        生駒山朝日が当たり笑いそう

 

        生駒山朝日を浴びて笑いそう

 

 この日も自分なりには上手く書けたと思い、慎二がしみじみとしていたら、

「おはようございま~す」

「おはよ~う」

 井口清隆、すなわちメルカリさんが執務室に入って来た。

 慎二はちょっと迷い、メルカリさんの方に「神の手」の液晶画面を向け、見せながら問い掛ける。

「メルカリさん、どう、これぇ? 今日も僕なりにはまあまあ上手く書けたと思うんやけどなあ・・・」

 それだけのことで小心者の慎二は、相変わらず緊張で頬を紅潮させ、耳たぶをひくひくさせている。

「ブログさん、毎朝、ほんまによう精が出ますねえ!? と言うても、この頃僕はここに来るより家に居る方が増えてますけどねえ。フフッ」

 そう言いながらちょっと照れ、半分呆れ、半分感心しながら、

「どれどれ、ふむふむ、・・・」

 気の好いメルカリさんはさっと目を走らせて行き、

「ハハハ。ブログさん、相変わらず電車通勤ですかぁ~!? 苦労してはりますねえ。ハハハハハ」

 そう言えばメルカリさんはこの頃車での通勤に替えたのだった・・・。これまではなるべく電車通勤をするように本部から言われていたが、コロナ禍をきっかけに車での通勤が簡単に認められるようになった。と言うか、むしろ奨励されるようになったのである。

「やっぱり車だと楽ですかぁ~!?」

 慎二は心底羨ましそうに言う。

 数年前までは普通車の運転免許を持っていたが、小心者の慎二は次第に運転に臆するようになり、全く乗らなくなって20年以上経っていたので、定年を機に身分証明書代わり(※)の運転免許の更新にわざわざ行くのを止めたのであった。

「安心だし、それに電車より通勤時間が大分短くなりますから、その分ゆっくり寝てられるしぃ~、そりゃ楽ですよぉ~」

 メルカリさんは本当に嬉しそうに言い、続ける。

「それから、大きな荷物も積めますしねえ!」

「そりゃそうやなあ、メルカリさんの場合。そう言うたらこの前はノートパソコンを何台か運んでたし、その前は結構大きくて立派そうなソニーのCDプレーヤー、それにダイキンの電気ストーブとかも運んでたしなあ・・・」

「そやから、車での通勤認められて、ほんと好かったですわぁ~」

 そう言いながらメルカリさんは軽やかに立ち上がり、給湯室にコーヒーを淹れに行った。

 それを待っていたように、事務を担当する若い依田絵美里が熱いお茶を淹れた備前焼のぷっくりした湯飲みを持って来て慎二の机の上にそっと置き、それからおもむろに訊く。

「藤沢さんは車に乗らないんですかぁ~!?」

 そんなちょっとしたことでも自分に関心を持ってくれているようで嬉しく、慎二は目をさっと逸らせながらもキラキラさせて、

「うん。ペーパードライバーやったから、更新を止めてん。依田さんは乗ってるん?」

「はい。でもここは近いから、通勤は自転車ですけどぉ・・・」

 それだけの遣り取りで慎二は何だかエールを貰った気がし、この日は絵美里の背中をもの欲しそうな目で追い駆けるのは止めて、表情をちょっと引き締め、仕事の顔になった。

 

        職場での会話何だか楽しくて

        エールを貰い仕事の顔に

 

※ この頃はネットも含めて彼方此方のショップで会員カード、ポイントカード、クレジットカード等、カードを作ることが増え、その度に身分証明書を求められる。普通職員証のような職場のみに通じるものは認められず、健康保険証も顔写真が入っていないので、それだけでは認められないことが増えて来た。それで便利なのが車の運転免許証であるが、先ず住基カードがそれに代わるようになって来た。そして今はマイナンバーカードを持っていれば身分証明証として使えるようになっている。