sanso114の日記

日々気になったことを気楽に書き留めています。

人は見た目が9割!?(最新版その32)・・・R3.12.25①

            その32

 

 令和2年6月2日、火曜日の朝のこと、藤沢慎二は何時も通り今の職場である心霊科学研究所東部大阪第2分室に7時50分頃に着き、玄関ホールの受付前に設置してあるタイムレコーダーにICチップ入りの職員証をスリットした後、直ぐそばに置いてあるアルコール消毒液を掌に溢れんばかりにたっぷりと取り、その中で手指を曲げたり、伸ばしたり、擦り合わせたり、爪の間にも染み込むようにと指先を掌でトントンしたりして、丁寧過ぎるほどじっくりと消毒する。

 この消毒液は大分前から置いてあり、来客も含めてそこを通る人の皆が日に数回ずつは使う所為か? この頃は何だかやけに減りが早いように思われる。幾ら呑気で不精者の慎二でも気になって一旦使い始めると、そうしないことが結構大きな不安になって来るのであった。慎二はそれぐらい小心者で、同調圧力に弱いタイプでもあった。だからついでに洗面所に寄って、しつこいぐらい何回もうがいをしておく。

 そんな一定の安心感が得られる程の儀式的なことまで済ませ、ふぅーふぅー言いながら階段を3階まで上がり、執務室に入って来たら、既に正木省吾、すなわちファンドさんが来て居り、ちょっと古めのiPhoneの端に何本もひびが入った液晶画面を食い入るように見詰めてはぶつぶつ独り言ちながら、頻りにメモを取っていた。

「おはよ~う」

「おはようございま~す」

 ごく日常的な朝の挨拶を交わした後、我が国では急速に新型コロナウイルスの新規感染数が減少していること、全国的に緊急事態宣言に続いて休業要請も解除されていること、しかし福岡県、神奈川県、東京都、北海道等と、広範囲に亙ってまだ新規感染者が中々0とはならず、時には増えたりもしていること、通勤電車や駅に学生が見られるようになり、程々に混んでいるときもあること、ファンドさんの一番の関心事である株価には相変わらず世界的に大きな変動が起こっていること等、一頻り世間話をし、慎二は自前の中古ノートパソコン、「神の手」をおもむろに開いた。そして、上手く書けたと思う時は即座にブログにアップ出来るように、そばにはテザリング用に格安のSIMを挿したスマホまで用意しておく。

 個人的なことを含めて何処まで書くか何か迷うところでもあったのか? その後は暫らく考え、それからおもむろにメインに使っているスマホを取り出し、朝、家を出る前のちょっとした時間、電車で通勤中等にメモしておいたものを見直しながら起こして行く。

 ファンドさんの関心は既に投資関係の記事に移っており、またiPhoneの液晶画面を見詰めてはぶつぶつ独り言ちながら、熱心にメモを取り始めた。

 

         朝のひと時雑詠

 今日も出勤日である。

 昨日は仕事を本格的に再開し始め、色々なことが職場の彼方此方で一挙に動き出した。

 久々に職場のあるビル内にせよ、彼方此方動き回っていた所為か? 定時に帰った後、意外とゆっくり出来た気になった。

 それだけ気忙しかったと言うことであろう。

 今日も早速幾つかの仕事が、もうそろそろ暇になって好いはずの私にまで結構割り当てられている。

 それはまあともかく、まだ緊張が残っていたようで、今朝も早めに目が覚め、寝床を出て、のんびり韓国ドラマを楽しんでいた。

 これからはもう少し忙しくなり、疲れが溜まって来て、また日常に戻って行くはずである。

 もう10か月ほど仕事を続ける為にも、それを期待したい。

 それから、仕事を辞めた後、どうするのか?

 本当に年金だけでやって行けるのか?

 本当に暇を持て余さないのか?

 生活の更なる縮小(※1)も考慮に入れながら、今一度じっくり検証しておく必要がある。

 それに、年金、健康保険等の手続き(※2)も含めて、これから結構色々面倒そうである。

 これまでの経験から考えても、それをさぼると入らないお金(※3)もあるから、何だか微妙な気もするなあ。

 これもまあボケ防止だとでも思って、感謝するべきなのかも知れないね。フフッ。

 

        出る前に沈思黙考落ち着けて

 

        出る前に沈思黙考検温し

 

        水無月や出勤前に検温し

 

 新型コロナウイルス感染症に付いてであるが、もうそろそろ好いんじゃないかと思い掛けた頃、東京では飲食関係、北九州では病院でとクラスターが発生している。

 全く油断のならない相手であるから、今暫らくは神経質とも思えるぐらいの配慮が必要なようである。

 でもまあ、我が国ではこれまでのところ、綻びを縫うように丁寧な取り組みをよく続けることが出来ていると思うべきなんだろう。

 自分の周りを観ても、それは感じられる。

 引っ張られて面倒臭がりの私でも、日々色々と面倒な対策に時間を割いている。

 我ながら感心するぐらいである。

 

        其々が用心しつつ共生へ

 

        其々が用心しつつ共存へ

 

 決して仲好くしたくはないが、中々離れるわけにも行かない隣人と言う感じだなあ。フフッ。

 それも含めて地球と言うわけか!?

 中々。

 さて話は変わるが、大して余裕もないのに、昨日またショッピングサイト系のカードを作ってしまった。

 簡単なように書いてあったのに、遣り始めると結構面倒であった。

 何がしかのポイントが付くことに釣られて、ついつい作ってしまったわけであるが、それだけのことでも終わると結構頭の疲労を感じた。

 何か新しいことを始めるにはそれだけエネルギーを使うようである。

 そう考えると、時々は意識して新たなことを始めた方が好いのかも知れない。

 そんな気がして来た。

 今日割り当てられている仕事もそんな感じで、昨日、その資料が足りないことに気付いて打ち合わせをし、またさっと見たところ矛盾に思える点を検討して、それなりに頭を使ったようである。

 それもあって、昨日は帰ってからも頭が回り続けていた。

 いわゆる慣性の法則である。

 その勢いで、帰ってからも普段はしない手続きなんかを始める気になったのであろう。

 届くまでに暫らく掛るようであるが、その後暫らくの間は買い物を楽しめそうだなあ。フフッ。

 

        給付金あてに買い物また始め

 

        給付金ちょこちょこ使い気晴らしに

 

 なんて言いつつ、買うものは大して変わり映えがしない。

 テレビで朝掛ける番組にしても、どうやら私は安定志向のようで、大体同じ番組を視ているようである。

 それはまあともかく、年の所為もあってこの頃ついつい早く起きてしまうのであるが、それで時間を有効に使えているのかと言うと、ある時期から寝不足続きで、はっきりしない時間が増えて来たような気もしている。

 お金だけではなく、時間の使い方に付いても考えておいた方が好いのであろう。

 今日はそれに付いても検討しておきたい。

 ところで、近鉄奈良線では通勤電車の窓が大きく開けてあった。

 その窓の近くに立っていたところ、生駒トンネルに入ったら、急に強い風がやって来た。

 ちょっと考えたら当たり前のことなのであるが、この頃こんなことがなかったので、意外な気がした。

 そう言えば、ずっと前に山陰線の鈍行に使われていた汽車でもこんな感じを味わった覚えがある。

 多分まだ大学生の頃のことで、珍しく兄と一緒の旅であった。

 擦れ違うことの多い兄弟で、この時のことを後から兄は何度か、「全然面白くなかった」と言っていた。

 もしかして友達と一緒であれば、兄は兄らしく、もう少し羽目を外せたのであろうなあ。フフッ。

 お生憎様であった。

 私の方はそれなりに楽しめていたが、兄弟2人で出掛けた旅は多分それだけであった。

 それ以前はともかく、それ以後は全く覚えがない。

 なんて書いている内に、愛知県に住んでいた親戚の家には何度か一緒に行ったことを思い出した。

 私にしても、どうやら兄と一緒にしたことについてはそんなに楽しい記憶として残っていないようである。

 まあ肉親であっても、いや肉親であるからこそか? ともかく男同士にはそんな微妙なところがある。

 

 神様が雄には闘う性として生き抜く為に、そんな風にインプットしているのかも知れないなあ。フフッ。

 

        男とは競り合うようにインプット

 

 それはまあともかく、今回、新型コロナウイルス感染症に関して色々な外来語が出て来たが、今も頭に鮮明に残っているのはクラスター、パンデミックで、言われてみればあったあったと言う感じがロックダウン、オーバーシュートぐらいか!?

 既に記憶が遠くなっている用語も増えた。

 そのパンデミックであるが、ウィキペディアによると、今回の前は10年ぐらい前の新型インフルエンザとあった。

 記憶にあったのはサーズやマーズであるが、それらはもっと前のことであるし、世界的に見てパンデミックまでは至らなかったようである。

 この辺りの記憶もごっちゃになり始めた。

 

        色々な記憶が混じり時流れ

 

 その辺りまで書いて、自分なりには今日も上手く書けたと思い、慎二がしみじみとしていたら、

「おはようございま~す」

「おはようございま~す」

「おはよ~う」

 井口清隆、すなわちメルカリさんが執務室に入って来た。

 慎二はちょっと迷い、メルカリさんの方に「神の手」の液晶画面を向け、見せながら問い掛ける。

「メルカリさん、どう、これぇ? 今日も僕なりにはまあまあ上手く書けたと思うんやけどなあ・・・」

 それだけのことで小心者の慎二は、相変わらず緊張で頬を紅潮させ、耳たぶをひくひくさせている。

「ブログさん、相変わらず毎朝、よう精が出ますねえ」

 気の好いメルカリさんはそう言って半分呆れ、半分感心しながら、

「どれどれ、ふむふむ、・・・」

 さっと目を走らせ、

「ほんまやぁ~。あのカタカナ語攻撃、参りましたねえ。ネットやテレビ等、彼方此方で否定的に言われ出してからは、東京都の小池知事なんかもオーバーシュート、感染爆発なんて後に訳を添えてはったけど・・・」

「そうやろぉ~!? それ以外にも一杯出て来たけど、メルカリさん、それ全部覚えているかぁ~?」

「いえ、僕もブログさんぐらいですわぁ~」

 そのとき2人の話が耳に入っていたのか? ファンドさんが口を挟む。

「そう言えば麻生さんが言っていたボラティリティなんかもありましたねえ?」

「?????」

「?????」

 慎二もメリカリさんも聴いたことはあるように思われるが、最早何のことか分からず、メルカリさんは、

「さて、そろそろ仕事に掛かる準備をしなくっちゃ・・・」

 と言いながらさっと立ち上がり、給湯室にコーヒーを淹れに行った。

 残された慎二が目をおどおどさせ始めたのを感じたか? そこに事務を担当している若い依田絵美里が近寄って来て慎二の机の上に熱いお茶を淹れた備前焼のぷっくりした湯飲みを置き、助け舟を出す。

「藤沢さんは株とかはやらないんですかぁ!? 今は株価の変動幅が大きくて大変ですねえ?」

 それを聴いて慎二は何とか彼とか思い出したようで、然も初めから分かっていたかのように、

「そうそう! ボラティリティがもう少し低くなってくれないと僕ら素人には怖くてとても手ぇなんか出されへんわぁ~。フフッ。さて、仕事仕事・・・」

 そう言って絵美里の方にちらっと目を走らせ、視線に感謝の気持ちを滲ませながら、そっと「神の手」を閉じた。

 絵美里はそれに微笑みで答えてスッと遠ざかって行った。

 スタイルだけではないスマートさに感心しながら、慎二は絵美里の遠ざかって行く後ろ姿から暫らくの間、目を離せないでいた。

 

        外来語何のことだか遠くなり
        漸くコロナ収まるのかも 

 

        外来語自然に使うスマートさ

        つい気持ちまで揺らされるかも

 

※1 人生100年時代、老後における生活の縮小は必須である。一般的な勤め人は収入が先ず60歳で半分、65歳で更に半分と減って行くから、これは無視出来ない。簡単に言って60歳の定年前に1000万円の年収があったとすれば、60歳以降の再雇用時に500万円に減り、65歳の完全退職によって250万円の年金だけになる、という感じである。それに夫婦で年の差があると、退職後に被扶養者の年金を収める必要が出て来る場合もある。また健康保険は組織が半分収めていたような社会保険の恩恵を受けていた場合、退職後介護保険、健康保険共に倍収めなければならないイメージになる。要するに入るお金が減り、出るお金が増える感じがし、生活費が窮屈になる。

※2 年金、税金、介護保険、健康保険、生命保険等、退職を切っ掛けに手続きが必要になって来る場合も多い。収入が減る時期に結構な一時金を求められる場合があったり、面倒な申請手続きが必要であったり、慎重な判断、細かい記入等、面倒に感じることが多い。特に組織に属していた場合、総務がしてくれていたことも多いから、余計に面倒に思われる。

※3 我が国は一般的に黙っていてもお金が入って来るなんてことは無い。困ったときには申請しないと入って来ない。その代わり、申請し、書類さえ整っていれば意外と簡単に貰えるお金もあるから、この辺り、何だか微妙な感じである。必要な時に必要な支援を速やかに、とは中々行かないのである。それなのに、コロナ禍の前に大して収入が無かった飲食店でもその収入を上回る給付を受けられるので喜んでいる話も実際に耳にした。