sanso114の日記

日々気になったことを気楽に書き留めています。

人は見た目が9割!?(最新版その3)・・・R3.12.1②

               その3

 

 令和2年2月20日、木曜日の朝のこと、藤沢慎二は何時も通り今の職場である心霊科学研究所東部大阪第2分室に7時50分頃に着き、玄関ホールの事務室前に設置してあるタイムカードをスリットした後、息を切らせながら3階まで階段を上がり、割り当てられている執務室に入る。既に正木省吾、すなわちファンドさんが来て居り、ちょっと古めのiPhoneの端にひびが入った液晶画面を何やら熱心に見詰めてはぶつぶつ独り言ちながらしきりにメモをとっていた。

「おはよ~う」

「おはようございま~す」

 何時通り朝の挨拶を交わした後、世界では新型コロナウイルス感染症のことで騒がれ始めていること、ファンドさんの一番の関心事である株価に大きな変動が起こり始めていること等、ひと通り世間話をし、慎二は自前の中古ノートパソコン、「神の手」をおもむろに開いた。そして、上手く書けたと思う時は即座にブログにアップ出来るように、テザリング用に格安のSIMを挿したスマホまで用意しておく。

 その後は暫らく考え、それからおもむろにメインで使っているスマホを取り出して、通勤中にメモしておいたものを見ながら「神の手」に起こして行く。

 ファンドさんの関心は既に投資情報に移っており、またiPhoneの液晶画面を見詰めてはぶつぶつ独り言ちながら、しきりにメモを取り始めていた。

 

        朝のひと時雑詠
 今、通勤電車の中である。

 乗り込むのが遅く、席を確保出来なくて、車両の前部にある車椅子スペースに立っている。

 ざっと車内を見渡すと、席に着いている殆んどの人がマスクを着用している。

 片面1列22人ほど座っている内、20人は着用していそうだから、何と9割を超えている!?

 凄い!

 その中でも圧倒的に白が多いが、それでもこの頃は多少市民権を得たのか? 黒、肌色、柄物等、かなり変化が観られるようになって来た。

 

        何にでも感動見付け気楽かな

 

        何にでも感動見付けお気楽に

 

 実はこうでもしていないと、ちょっと不安になって来る。

 殆んどの人がマスクを着用しているだけではなく、季節的なものもあるのか? 彼方此方から咳、くしゃみ、咳払い等が割と聞こえて来るからである。

《この頃コロナ、増えて来たもんなあ。テレビで言うてるけど、くしゃみ、咳によってそんなに伝染するんかぁ~!?》

 そう思うと自分も喉がむず痒くなり始め、咳をしたくなって来るが、生憎マスクをしていないので、気軽には出来ない。

《我が家にはマスクを必需品とする家族がいるので、残り少なくなったマスクをあまり持って出られへんし、買お思てもドラッグストア、スーパー等ではすっかり見掛けなくなったから、暫らくは我慢やなあ。フフッ》

 なんて、笑い事ではない!?

 そんな落ち着かない状態でメモしていた所為か? 何時もほど指先が弾まなかった。

 職場に着いて執務室に入るとそうでもないが、やはり不安は続く。

 そして、夕方になると新型コロナウイルスを家まで持って帰らないか心配になって来る。

《この緊張感、暫らくは続きそうやなあ》

 とすると、世間で言っているような東京オリンピックが開催されることへの不安もあながち無視出来ないように思えて来る!?

《自分が直接参加するわけではない政治家達は、やっぱりお気楽なもののようやなあ。フフッ》

 

        政治家は高みで数字観てるかな

 

        政治家は高みで数字いらうかな

 

 それは止めて欲しいところであるが、実際にはそれも分からない。

 色々な情報に触れても、それぞれが冷静な判断力を失わないようにしたいものである。

 

        情報に接し迷わず大事かな

 

 その為にも、普段から反対側の意見も含め、出来るだけ多くの意見に触れておく方が好いのかも知れない。

 また、発信することも。

 

 その辺りまで書いて慎二がしみじみとしていると、

「おはようございま~す」

「おはようございま~す」

「おはよ~う」

 井口清隆、すなわちメルカリさんが執務室に入って来た。

 慎二はちょっと自信を持ちながらメルカリさんの方に「神の手」の液晶画面を向け、見せながら問いかける。

「どう、これぇ!? 通勤電車の中の様子を観ながらスマホにメモしておいたものを元に、ちょっと書いてみたんやけどぉ・・・」

「そうですかぁ~!? 毎朝、よう精が出ますねえ・・・」

 半分呆れ、半分感心しながら、

「どれどれ、・・・」

 気の好いメルカリさんはさっと目を走らせて、

「ほんま、電車に乗るだけでも緊張するようになって来ましたねえ。ふむふむ」

 共感しているのか? 何時になくしっかり読まれている気がし、慎二はその後一体どんなことを言われるのか? 今度はそれが気になって来た。

 最後まで読んで漸く顔を上げたメルカリさんは、

「流石ブログさん、ほんまに確り観てはりますねえ。それに、色々と考えてはる・・・」

 なんて一旦は感心したように持ち上げておき、そこでちょっと呆れ顔になって落としにかかる。

「ところで、ブログさん、怖い、怖い、言うてぇ、今時、まだマスク、してはらへんのですかぁ~!?」

 そこを突かれると辛い。

「ううっ・・・」

 慎二が困った顔をしたのに追い打ちを掛けるようにほくそ笑んだメルカリさんは揉み手しながら、

「もしお困りでしたら、僕、家に一杯持ってますから、お安くお譲りしても好いんですけど・・・」

「あっ、流石メルカリさん! ・・・ フフッ。先輩相手に転売する気やなあ!?」

「ハハハ。冗談冗談。幾ら僕がメリカリばっかりやっているから言うても、マスクの転売なんてしてませんてぇ~! ハハハハハ」

 笑いに誤魔化しながら? メルカリさんは軽やかに立ち上がり、給湯室までコーヒーを淹れに行った。

 その背中を観ながら慎二は心のどこかで、本当かなあ? とほんの少しだけ思っていた。そしてこの際、少し都合して貰うのも好いかとも思い始めていた。

 

        世の中のマスクが消えて久しかり

        他人のマスクが欲しくなるかも

 

     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆

 

 平成3年12月1日現在、近所のスーパーでも1箱50枚入り不織布マスクが300円前後で買えるようになった。

 

 コロナ禍で騒がれる前より安いぐらいである。

 

 友達によると、大阪市内の繁華街、難波辺りでは1箱50枚入りで100円ぐらいからあるそうだ。

 

 今日私がインターネットで注文したのは、多めに頼んだのもあるが、もっと安くなっている。

 

 もっとも、1箱50枚入りが1000円前後まで下がった昨年夏辺りから出回っているものは殆んど中国製で、発売も中国メーカーである。

 

 販売だけを町の商店とか、ネットショップとかがやっている。

 

 初めは耳に掛けるひもが変なところに圧着してあったり、取れていたり、酷いものもあったようだ。

 

 私が買った時、流石にそこまでではなかったが、圧着が甘くて取れ易いものが結構混じっていた。

 

 個包装なんて言って高いものがかえって直ぐに取れ、途中で本体に穴をあけて縛り付けて対処してことが何度もある。

 

 それでも経験とは大事なもので、中華製のマスクでも耳ひもが殆んど取れなくなって来た。

 

 今買っているのはそんなマスクが安く買えるネットショップである。

 

 ところで、経験による慣れと言えば、マスク生活も長くなった。

 

 私も、坂道の多い近所では散歩中に外していることも多いが、スーパー、銀行、施設等に入る時は必ずしている。

 

 電車に乗る時も勿論である。

 

 この話を書いた頃はまだ東京五輪の延期が決まっていなかったが、延期され、1年後の東京五輪が終わってもまだマスク生活をしている。

 

 一体何時までこのマスク生活が続くのか!?

 

 確か、100年前のパンデミックスペイン風邪では3年掛かったと言っていたが、後1年すれば大分減っているのであろうか?

 

 予防ワクチン、治療薬等、もう少し対処出来るようになっているのであろうか?

 

 大阪万博が予定されている2025年には何とかなっていて欲しいなあ。

 

 友達に会うとついそんな話になる。

 

        コロナ禍や思いの外に長くなり

        まだ見えなくて不安なのかも