sanso114の日記

日々気になったことを気楽に書き留めています。

トンネルを抜けて(18)・・・R2.8.28①

              終章

 

 結婚式、披露宴、新婚旅行等のキャンセルは大体上手く行ったが、家の方はもう頭金を払い込み、棟上も終わっていたのでどうにもならなかった。

 権利に煩い安永真衣子は、藤沢慎二ひとりだけに負わせるのは悪いと思ったのか? 弁護士に相談することを進め、一応は相談に行ってみたものの、

工務店に特に落ち度があるわけではないから、キャンセル料を払わなければなりません。元々は建売であったところに大分注文を付けているから、それはかなり高いものになりそうだと思います」

 そんな風に事務的に言われてしまい、経済的にあまり余裕のない慎二としては、諦めるしかなかったのである。

 しかし、元々慎二は独りでも家を買おうと思っていたので、真衣子の実家に近いことが気にならなくもなかったが、この際、新しい年は新しい家で心機一転、出直すことにした。

 

 それから、真衣子に満たされない気持ちを赤坂響子改め本山響子に揺らされていた慎二であるが、どうやら響子の方も、慎二の場合とは違い結婚までは行ったものの、早々と別れていたらしい。

 フラフラとする自分が怖くて結婚したものの、真面目一方の夫では飽き足らず、やっぱり心の浮気を再開してしまう。初めこそそんな自分に反省する日々であったが、慎二同様、ある日、無理して縮こまっている自分が可哀想に思えて来て、正直に自分を出し始めると、結局上手く行かなくなり、僅か2箇月あまりで結婚生活に終止符を打ったのである。

 だからと言って、お互いに自由の身になり、何の支障もなくなった慎二が、多少不躾な視線を絡ませて来ても、響子は少しも応じようとしなかった。

 どうやら、自分に真っ直ぐ向かってくる慎二を受け止める気はサラサラないようである。

 

 と言うわけで、慎二の2学期は、12月に引越しと言う大事業が待ち構えているだけで、その後は結局何の刺激もない平凡な日々が前途に横たわっているだけのように見えた。

 

        其々に落ち着く場所に落ち着いて

        平凡な日々また来るのかも

 

        平凡な日々が続いて普通かな

        其れを得る為皆藻掻くかも

 

     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆

 

 この話を見直し、加筆訂正する前の段階で、2003年8月23日午後11時50分、何だか不満ながらも一先ず終了、とあった。

 要するにもう17年ほど前のことになる。

 だから、大分変えてあるにせよ、実際にそれらしいことがあったのは更に前のことになる。

 バルブが弾けてそう経っていない1993年頃のことであった。

 この後のことをモチーフに書いたのが「季節の終わり」、「そして季節の始まり」になる。

 見直すに当たって繋がりも考えたつもりであるが、多少の矛盾は残っているかも知れないが、その辺りは所詮中年オヤジの手すさびとでも思って許していただくことにしようか。フフッ。

 それはまあともかく、まだ幾つかの話を書いた覚えがあるが、時期によってはまとまりの悪いものもあるので、この後もゆっくり見直して加筆訂正しながら上げて行こうかと思っている。

 また時間と気持ちに余裕のある時にでも読んでいただければ幸いである。