sanso114の日記

日々気になったことを気楽に書き留めています。

懐かしく青い日々(16)・・・R2年1.14②

           第2章  その6

 

        実力のなさを知らされ落ち込んで
        理系でいいか迷い出すかも

 

 北河内高校では8月の末に、藤沢慎二ら2年生にとっては初めての実力試験があった。この実力試験には3年生、浪人生等の受験生も参加し、一部問題を選択性にして2年生と分けてあるにせよ、難易度は受験レベルで、重厚な問題が出されたから、解答時間も普段より長く、2日に分けて倍ほど取ってある。その内、2年生は1日目の英語、数学、国語の問題を解いた。
 机上に配布された問題を見て、慎二はさっぱり見当が付かない。最初が苦手科目である英語だったこともあるが、慎二はまた高い壁にぶつかった気がし、身体が自然と小刻みに震えてしまう。膝を押さえても震えは止まらず、慎二は脂汗を流しながら、寒気を感じて仕方がなかった。
 それでも、国語では2年生になってから本格的に習い、得意にし始めていた古典、漢文がまあまあ出来、英語のマイナス分を取り返せた気がしたので、最後の数学に掛けた。
 ところが、直ぐにそれがとんでもない誤解であったことに気付く。苦手にしていた高1で習ったはずの代数の部分を中心に、しかも受験レベルでも超が付くほど難問に当たるであろう捻った問題が出ていたから、手も足も出ず、英語以上に打ちのめされてしまった。
 あ~あっ、定期試験ではあんなによくなったように思えたのに、ちっとも実力なんか付いていなかったんだぁ~!?
 慎二は泣きそうになってしまったが、後から周りに聞いてみると、皆も同じようなことを言っている。
 これはひょっとすると、そんなに悪くないのかも知れない・・・。
 少し期待を繋いで、その日は家に帰った。 

 

 2学期の始業式の日、返って来た実力試験の答案を見ると、悪い方の予想が当たっていたようである。数学では200点満点のところ、何と13点と言うとんでもない点を取ってしまった。
 確かに難しくはあったが、平均点が15点だから、それをも少し下回る点を取ってしまった。

 幾らなんでもこれは酷過ぎる! 俺は本当にこのまま理系を目指していてええんやろかぁ!?
 心配になって、念の為に他の柔道部員に聞いてみると、優等生の松本昭雄でも22点だと言う。
 俺より上やけど、やっぱり低レベルやなあ。そうすると、そんなに気にし過ぎることもないかぁ!?
 更に聞いてみると、定期試験では50番から100番の間にいる園田俊一が35点、受験を控えた3年生の橋詰勲が75点だと言う。
 ううっ、一部問題が違うから平均点も多少違うにしても、橋詰先輩は流石だなあ。定期試験では学年の順番が変わらなくなったから、実力も同じようなものかと思っていたのに、とんでもなく差があったんだぁ・・・。それに、園田にまで負けてしまうなんて、これから俺は一体どんな風に勉強すれば好いのやろぉ!?
 慎二は思いの外低い点数を取ってしまい、揺れに揺れていた。
 結局、それでも皆が低い分、数学では大して得点差が付かず、慎二は英語でも悪かった分を国語で何とか取り返せたので、クラスで10番、学年で135番であった。
 微妙やなあ。1年生のときほど悪くはないけど、好くもない。これでは、実力があるなんてとてもなんて言われへん! 数学の点なんか雑音みたいなものやし、英語も丸っきり駄目やぁ。135番なんて言われても、何だか実感がないわぁ~。

 

        実力を唯振り分ける試験かな
        今の力を確認したい

 

        試験では出来ないところ確認し
        重点的に補強をしたい

 

 このときの数学の問題は確かに酷かった。200点満点で平均点が15点なんて、100点満点で言えば10点にも満たないのである。同情、または反省から雑音程度の部分点を与えられたからと言って、どんな実力を見ることが出来ると言うのか!? 事実、普段の定期試験と比べると、上下関係に相関関係があまりあるようにも思えない。
 それに、たとえ全体的な実力傾向を見ることが出来たとしても、項目別に見てどの部分に弱点があるのか、さっぱり分からず、慎二は腹が立って仕方がなかった。

 準トップ校とは言え、受験問題の分析にあまり長けているとは言えない公立高校の教師たちが角を付き合わせ、何とか入試問題に似せた問題を作ると、えてしてこう言うことが起こり得る。北河内高校では以後もただ苦いだけの珈琲のような奥行きのない模擬試験問題が出され、その度に慎二らは悩まされた。

 

        実力の伴わぬこと知らされて
        少しは気持ち入れ替えるかも

 

 それでも、このとき慎二が手酷く打ちのめされたことは、全く意味がなくもなかった。幾ら定期試験で高得点出来るようになっても、それだけでは受験に立ち向かえない、と言うことを教えてくれただけでも十分に意味があった。
 事実、定期試験では慎二を下回るようになっていた松本は国語、それに得意の英語で点を稼ぎ、学年でしっかり30番に入っている。受験を目標に、上手く離陸出来ていることが分かったではないか!?

 2学期を迎えて慎二は、次の日の予習だけではなく、数学で1年生のときに理解し切れていなかった部分の復習にも多少は気を遣うようになった。

 

        試験にてショック与えて目覚めさせ
        次の機会に向ける目的?

 

 後からゆっくり考えてみると、どうやら教師と言うものは分かっていて時々、こんなショック療法をしてみたくなるものらしい。
 そう言えば、中3のときも慎二は数学の校内実力テストで30点ほどしか取れず、泣きそうになったことがある。

 大分後の話になるが、慎二が受験関係の出版社に勤め、通信教育の教材を東京の教科書や参考書を実際に書いているような超一流進学校の教師に作って貰っていたとき、まだ早い時期に同様のショックを与えるような難問がしばしば出されていたことで、余計にその思いが強くなった。

 それでも色々経験を重ねると、改めて北河内高校の教師が受験においては大したレベルになかったことが分かって来た。
 何れにしても、まだ時間がある段階で分かっていながらショック療法をする分には、あり来たりではあるが、一つの作戦と言えるのかも知れない。