sanso114の日記

日々気になったことを気楽に書き留めています。

人は見た目が9割!?(最新版その41)・・・R4.1.4②

            その41

 

 令和2年6月17日、水曜日の朝のこと、藤沢慎二は何時も通り今の職場である心霊科学研究所東部大阪第2分室に7時50分頃に着いて、玄関ホールの受付前に設置してあるタイムレコーダーにICチップ入りの職員証をスリットした後、直ぐそばに置いてあるアルコール消毒液を掌に溢れんばかりにたっぷりと取り、その中で手指を丸めたり、伸ばしたり、擦り合わせたり、爪の中まで染み込ませようと指先を掌でトントンしたりしながら、しつこいぐらい念入りに消毒する。

 この消毒液は大分前から置いてあり、来客も含めてそこを通る人の殆んどが日に数回ずつは使う所為か? この頃は何だかやけに減りが早いように思われる。幾ら呑気で不精者の慎二でも気になって一旦使い始めると、そうしないことが結構大きな不安になって来るのであった。慎二はそれぐらい小心者で、同調圧力に弱いタイプでもあった。だからついでに洗面所に寄って、持参したうがい薬で何回もうがいをしておく。

 そんな一定の安心感が得られる程の儀式的なことまで済ませ、ふぅーふぅー言いながら階段を3階まで上がり、割り当てられた執務室に入って来たら、既に正木省吾、すなわちファンドさんが来て居り、ちょっと古めのiPhoneの端に何本もひびが入った液晶画面を食い入るように見詰めてはぶつぶつ独り言ちながら、頻りにメモを取っていた。これもまた安心感が得られる見慣れた光景であった。

「おはよ~う」

「おはようございま~す」

 ごく習慣的な朝の挨拶を交わした後、我が国では多くの場所で新型コロナウイルスの新規感染者数が大体低レベルに収まっていること、それでも全国的に緊急事態宣言に続いて休業要請も解除されている所為で早速気の緩みの影響が出始めたのか? 福岡県、大阪府、神奈川県、東京都、北海道等と、広範囲に亙りまだ感染者が中々0を維持出来ず、東京の夜の町の例のように時には結構増えたりしているところもあること、大阪でも難波、天王寺、京橋、梅田等の繁華街で人波が確実に増えており、その辺りを中心としてまた無視出来ない新規感染者が出始めていること、通勤電車や駅に学生が見られるようになり、程々に混んでいるときも増えたこと、ファンドさんの一番の関心事である株価に相変わらず世界的に大きな変動が起こっていること等、一頻り世間話をし、慎二は自前の中古ノートパソコン、「神の手」をおもむろに開いた。そして、上手く書けたと思う時は即座にブログにアップ出来るように、そばにはテザリング用に格安のSIMを挿したスマホまで用意しておく。

 他人に見て貰うことを前提にすると何処まで書いても好いのか、何か迷うところでもあったのか? その後は暫らく考え、それからおもむろにメインに使っているスマホを取り出して、家を出る前、通勤電車の中、乗り換え待ちの時間、徒歩移動中等にメモしておいたものを見直しながら起こして行く。

 ファンドさんの関心は既に投資関係の情報に移っており、またiPhoneの液晶画面を食い入るように見詰めてぶつぶつ独り言ちながら、熱心にメモを取り始めた。

 

         朝のひと時雑詠
 ううっ、だるい。

 今日で今週3日目の勤務となり、流石に疲れが溜まっている。

 私から観れば若い人が多い職場なので、周りの動きにある程度合わせていると、流石にきついようである。

 或る程度と言うのは、流石に時折は自分でセーブを掛けるからで、そうでもしておかなければ、後からもっと疲れが来ることを予想しているからであった。

 それでも、その時は多少後ろめたい。

 まあこれも同調圧力と言うやつだろうなあ。フフッ。

 せめて自分への言い訳をしておこう。

 実は私の場合、皆とは別に、皆が仕事をし易いようにあらかじめ手順を考えておいたり、独りで準備段階の作業をしたり、皆よりは一歩先に動き出していることが多い。

 そうすると、皆で動く時にも一緒に動いていると、当然動き過ぎになり、疲れ易くなる。

 一見好い人になるのは疲れる、と言うやつである。

 そんなことをすれば後から余計に周りに迷惑を掛けることになる。

 結局、皆とずれているように見えても、今のように適度に抜く必要もあると言うわけだ。

 でも、或る意味孤独ではある。

 こんな風に集団の中の孤独になり易い仕事を負ってから結構長くなる。

 それも次の世代に移りつつあり、色々失敗しながら複数名で負っているようであるから、不経済な面もあるが、今後のことを考えると悪くない気もしている。

 そう言えば、話は変わるようであるが、家人が嬉しそうに言っていた。

「父ちゃん、もう直ぐ年金が完全に出るようになるねんなあ」

 確かに・・・。

 先ず今は毎月数万円ずつ召し上げられている分(※1)が無くなるであろうから、それが嬉しい。

 それに基礎年金、家人との年の差による加給年金が加わると、今の生活レベルで考えて2人でぎりぎり食べて行けるかどうか、ぐらいにはなるはずだ(※2)。

 要するに、生活保護ぐらいにはなる、と言うことである。

 初めは、毛の生えたぐらい、と書こうとして、ネットで生活保護についてちょっと調べてみたら、大阪辺りだと2人で16万円ぐらいになり、それに家賃が出るから20万になる(※3)。

 更に医療費が無料とかも加わると、生活保護の方が好いではないかぁ~!?

 ううっ、現実を考えると、朝から暗くなるなあ。フフッ。

 でもまあ、何らかの工夫は必要であろうが、単純には働き続けたくない。

 この辺り、もう少し気持ちの整理をする必要がありそうだ。

 

        我にとりしたい仕事は何なのか

 

        目の前のことから暫し目を離し

 

        目を閉じて沈思黙考してみれば

 

        じわじわとその内何か見えて来る

 

        見えたもの先ずは素直に従って

        疑わずやってみること大事かな

 

 なんて、この年になってまだ言っていることが我ながらおかしい。

 さて、そろそろ出る準備をする時間になって来たようだ。

 ひと先ずは目の前に与えられた仕事から片付けて行かなくっちゃね。フフッ。

 

        迷うことひと先ず止めて動き出し

 

 なんてことも長くなったようだ。

 そんなことをしている内に今に至っている!?

 ところで、新型コロナウイルスに関して抗体検査が東京都、大阪府宮城県からサンプルを取って行われたそうな。

 持っている率はそんなに高くなく、東京都で0.1%、大阪府で0.17%、宮城県で0.03%だったとか。

 何しか低い!?

 それでも感染者としてPCR検査で認識された人数の数倍にはなるようで、東京都では2倍、大阪府では8倍以上になると言う。

 怖い話である。

 先ず見付かっていない場合が多いと言うこと。

 それに、抗体を持っている人が思っていた以上に少ないと言うこと。

 第2波(※4)の防御には殆んど期待を持てないような数値であろう。

 それから、我が国の場合は例によってデータの決め方が厳格で!? たとえば欧米の例のように、決め方によっては今回のデータの10倍にもなるようだ。

 そうすると、もっと潜在的な感染者がいたことになり、これも怖い話である。

 要するに我が国の場合、検査、およびその分析の仕方も含めてまだまだするべきことがありそうだ。

 そんな中、送られて来たアベノマスクは1回着用してから洗ったら、元々小さめのところが更にちょっと縮み、よれよれになってしまい、今はぶら下がったままになっている。

 もう1回使う気には中々なれず、そのままになってしまいそうな気もする。

 そんなマスクに検品、送料等も含めて1枚当たり200円、いや400円ぐらいか!? ともかくかなりの費用が掛かっている(※5)のであるから、微妙な気がするなあ。フフッ。

 

        安倍さんの微妙なマスク風に揺れ

 

        安倍さんの微妙なマスク置きっぱに

 

 それはまあともかく、南半球にあるニュージーランドでは3週間以上出ていなかった新型コロナウイルスの新たな感染者が、2人出たそうな。

 何でも英国からの渡航者だと言う。

 理由は危篤状態の親を看取る為だったか?

 ともかく必要があっての渡航だそうだが、人の移動の影響は思いの外大きいようである。

 そう言えば我が国でも羽田や成田における渡航者の検査で感染者が出ている。

 意識しておきたいことではないか!?

 

        コロナ禍や人の移動を制限し

 

        コロナ禍や人の移動を躊躇わせ

 

 それはそうと、私の身近でも発熱者が出たので、今、ちょっと緊張状態にある。

 気温の変化、疲労の蓄積、降雨等、色々な条件の中、夏風邪を引き易い時期であるだけに、結構面倒である。

 取り敢えず、後から慌てないように、本部と連絡を取って上司には言っておいたが、ここ1、2週間は注意をしておく必要がありそうだ。

 

 その辺りまで書いて、自分なりには今日も上手く書けたと思い、慎二がしみじみとしていたら、

「おはようございま~す」

「おはようございま~す」

「おはよ~う」

 井口清隆、すなわちメルカリさんが執務室に入って来た。

 慎二はちょっと迷い、メルカリさんの方に「神の手」の液晶画面を向け、見せながら問い掛ける。

「メルカリさん、どう、これぇ? 今日も僕なりにはまあまあ上手く書けたと思うんやけどなあ・・・」

 それだけのことで小心者の慎二は、緊張が高まって頬を紅潮させ、耳たぶをひくひくさせている。

「ブログさん、相変わらず毎朝、よう精が出ますねえ」

 気の好いメルカリさんはそう言って半分呆れ、半分感心しながら、

「どれどれ、ふむふむ、・・・」

 さっと目を走らせて、大体読み終えた途端にちょっと椅子を引き気味になって言う。

「大阪でもとうとう無視出来ない感じになって来ましたねえ!?」

「おいおい、そんなに避けんといてえやぁ~! でもまあ、確かに暫らくは僕から離れといた方が無難かも知れんなあ・・・」

 そう言いながらも、慎二はちょっと寂しそうな顔になる。

「いや、そんなわけでは・・・」

「いや、気になる方が普通やろぉ!? メルカリさんのところ、まだ小さい子もいるようやし・・・。正直な話、俺から離れようとすることについては、別に気にせんでもええでえ~。でもまあ毎朝検温はしているけど、今のところは36℃ちょっとやし、ここに書いた身近な人は子どものことなんやけど、体調自体はそんなに悪そうでもないけどなあ・・・」

 そう聴くとメルカリさんはちょっとホッとしたような顔になってさっと立ち上がり、給湯室にコーヒーを淹れに行った。

 間髪を入れず若い依田絵美里が熱いお茶を淹れた備前焼のぷっくりした湯飲みを持って来て慎二の机の上にそっと置き、この頃習慣のように目を走らせていた「神の手」の液晶画面には目もくれず、黙ってさっと遠ざかった。

《おいおい。皆してそんなに緊張せんでも・・・》

 慎二は何か言いたそうな顔になりながらも、今は何も言えないことが分かっており、余計に寂しそうな顔になっていた。

 

        またコロナ他人との距離を遠ざけて
        孤独な時間増え出すのかも

 

        発熱が他人との距離を作り出し

        寂しい時間また増えるかも

 

※1 厚生年金を貰いながら働いていると、在職老齢年金の停止に引っ掛かり、一部支払われないことが多い。例えば私のように昭和30年の生まれであると、65歳までは給与所得と年金を合わせた額月に28万円を超えた場合、超えた額の半分を召し上げられる。その所得計算に賞与の月割りが入るのは分かるが、交通費まで入れられるから、ちょっと微妙な気がする。65歳を超えると基準が28万円から47万円に増えるが、やはり一定額以上は貰えない仕組みになっている。勿論、働く気を削ぐと言う意見もあり、減らして行こうと言う話し合いは持たれている。

追記 上記の召し上げ分を減らして行く分については来年度、つまり今年の4月からいよいよ施行されることになり、65歳以下でも基準が47万円となる。

※2 厚生年金、共済年金等のある組織に属していると、65歳に達してからは老齢厚生年金、老齢基礎年金、それに扶養手当のようなものとして配偶者が65歳になるまでの間、加給年金が出る。全部ある人の場合で、20~25万円ぐらいになるのが一般的であろうか!? そこから税金の他に健康保険、介護保険等が引かれるから、実質生活保護費よりも低くなるかも知れない。真面目に勉強し、働いて来た結果がこれでは、世の中が不道徳になって行くのも分からなくはない!?

※3 生活保護費に付いては4人で28万円とか、5人で35万円とかの例を聞いたことがある。そこに家賃が5万とか付くから、確かに恵まれているように思える。ただプライド、自由度とかまで考える時、自ら進んでまでは貰おうとしないのがこれまでの普通であったが、さて、今後はどうであろうか!?

※4 新型コロナウイルスの新規感染者に付いてはグラフから読み取ると、第1波が3月下旬から5月下旬辺りに広がっており、ピークは4月下旬辺りに読み取れる。第2波についてはあまり大きく取り上げられないようであるが、6月下旬から増え始めており、7月末から8月初め辺りにピークが来ている。それでは8月下旬ぐらいで収まっているかと言えば、9月中旬になっても東京で200人、大阪で100人前後いるから、第2波は第1波より大分大きな波のように思われる。

※5 アベノマスクに関しては今、在庫の保管に掛かる費用、再配布する場合の費用、不要と判断された時、傷みが酷い物、不良品等の廃棄に掛かる費用も多額に掛かるようであるが、結局は断ち切ることが出来る廃棄に動き出しそうなことが言われている。