sanso114の日記

日々気になったことを気楽に書き留めています。

人は見かけが9割!?(19)・・・R2.4.30①

              その-2

 

 令和2年3月17日、火曜日の朝のこと、藤沢慎二は何時も通り今の職場である心霊科学研究所東部大阪第2分室に7時50分頃に着き、タイムカードにスリットした後、執務室に入る。既に正木省吾、すなわちファンドさんが来て居り、スマホを何やら熱心に見詰めていた。

「おはよ~う」

「おはようございま~す」

 挨拶を交わした後、世界では新型コロナウイルス感染症の騒ぎが大きくなっていること、株価に大きな変動が起こっていること等、ひと通り世間話をし、慎二は自前の中古ノートパソコン、「神の手」をおもむろに開いた。そして、上手く書けたと思う時は即座にブログにアップ出来るように、テザリング用に格安のSIMを挿したスマホまで用意しておく。

 その後は暫らく考え、それからおもむろにメインで使っているスマホを取り出して、メモしておいたものを見ながら「神の手」に起こして行く。

 

          朝のひと時雑詠

 我が家では子ども等が独立し掛けている。

 学校を出て、アルバイトをしながら色々資格を取り、続けられそうな仕事を探している子どももいる。

 その過程で、実家を離れて自分の住みたいところも出来れば探したい。

 そんな思いもあるようだ。

 ただ直ぐには難しいから、家に幾らか入れながら、独立を目指すつもりもあると言う。

 確かに、それが好いかも知れない。

 私の場合も遠くに一度就職し、6年半ほどで大阪に戻って来た時は、次の就職の準備をする為に暫らくは両親と一緒に暮らした。

 勿論、一度目の就職時から経済的には独立している。

 当時はそれが普通であった。

 普通に就職すれば、それが十分に可能であった。

 だから、元々はそんなことにあんまり頓着しない私でも、親の経済状況を考えれば、面倒を看て貰う考えは全く沸いて来なかった。

 かと言っても、仕事を通して自己実現とか、仕事には達成感、承認意欲等を満たす効用があるとか、そんなことを考えたり、意識を持ったりしたわけでもない。

 仕事に関してははっきり言って具体的なイメージがなく、強い興味が無かった。

 それが初めの就職をいい加減にし、変化が苦手な私にすればあっさりと辞めることに至ったように思われる。

 その点だけを取れば、子ども等の方が余程考えているようだ。

 私にとっての興味は自分らしく生きること。

 その自分らしさ、本当の自分を見付けること。

 その自分を表現すること。

 そんな夢みたいなこと、いわばバブルを追って生きて来たのかも知れない。

 不安や不満が少なく、のんびりと人間観察をし、時には人生とは何ぞやとか考えながら、機嫌好く過ごせればそれで十分だったのであろう。

 ただ、我が国がまだそんな暢気なことを言っていられるほど成熟していなかったようで、最近とみに不安、緊張感、不安等が増して来たように思われる。

 子ども等がこの不安定な社会で生きて行く上で、何らかの支えになりながら、自分なりの考えを形成して行く参考にでもなれればと、この頃そんなことも思い始めた。

 それはまあ私の考えで、子ども等は別の見本、いわゆる理想の親や教師を求めるのかも知れない。

 それで好い。

 私が全てなどと言う思い上がった気持ちは無い。

 参考の一つ、選択肢の一つであれば十分なのである。

 私には私自身の目標がまだまだあり、実はそれを追い駆けている方により興味を持っている。

 それが子ども等にプラスに働くことを少しは期待して・・・。

 

        子ども等の見本の一つ其れが親

 

        言葉より生き方を観る子どもかな

 

        言葉より生き方真似る子どもかな

 

 最低賃金が1時間当たり1000円を超えているところは東京都ぐらい?

 そう思って調べてみると、令和元年度に東京都が1013円、神奈川県が1011円となっていた。

 JETRO(日本貿易振興機構)の資料では、大雑把に言って、米国、カナダ、フランス、ドイツで1.3倍、オーストラリアで1,15倍であったが、他の資料でオーストラリアは数年前に時間給1500円で、米国もそこに近付けている、地域によってはもう追い越している、なんて聴いたこともある。

 要するに我が国は最早経済的先進国の中でも高い方ではなく、余裕が無くなりつつある、というところか!?

 それに、正規雇用、継続的雇用等が減って来ているから、最低賃金で甘んじて暮らす層が増えているように思われる。

 当然、仕事の選択肢は狭くならざるを得ず、そこから仕事の効用である達成感、承認意欲を満たし、社会的貢献、社会参加に充足感を得て、将来の夢を追うなんてことも叶え難くなっている!?

 まだスタートラインにも立っていない子どもには、就職のことだけでも難しい問題が山積みのようである。

 それでもまあ、私に比べて子ども等は社会参加にそれなりの意欲を持っているように思われる。

 そこもホッとさせられるところだ。

 なんて暢気に書いていると、思い切り親バカをしている気がして来たなあ。フフッ。

 

        時間金余裕少なく夢萎み

 

        時間金余裕少なく唯生きて

 

        先ず壁を破った先に夢を見て

 

 米国の証券市場に大きな動きがある。

 それも、マイナスの向きに・・・。

 当然日本にはその影響が大きいことが予想されるから、今、緊張状態にある人が増えている。

 そして一部の人はその緊張を喜びに変えている!?

 悪くはない。

 何事にも表と裏がある。

 ピンチをチャンスと捉え、飛躍出来れば幸いである。

 その過程でプラスのエネルギーが社会にも影響を与えるようであれば、それはもっと望ましい。

 

        マイナスをプラスに変える若さかな

 

        ピンチをもチャンスに変える若さかな

 

 その際に大事なことは、今流行りの転売ヤーとかのように短絡的にではなく、視野を広く持つことである。

 他人の迷惑を考えず、目の前の利益に飛び付くのはお洒落ではない。

 魂の貧しい人の営みであり、もっと魂を汚してしまう。 

 勿論、彼らとて自分なりの理屈を見付けて正当化し、自分を守りはするであろう。

 そうしなければ生きて行き難いから。

 彼らも何時かはその醜さ、恥ずかしさに気付くことを願って、今はそっと見ておくしかない。

 おっと、これは性善説に過ぎ、我が国の大人的な考え方かも知れない。

 近代的な民主主義社会、自由経済社会では、米国のようにもう少し現実的に、攻撃的防備も必要な気もして来る。

 まだまだこの世は弱肉強食の社会だから。

 焼肉定食を思い切り食べたければ、弱肉強食の社会を生き抜かなければね。フフッ。

 

        守るには時に攻撃要るのかも

 

        防ぐには時に攻撃要るのかも

 

 なんてことを書いていても、ちっとも気持ち好くない。

 まさに必要悪と言うやつである。

 現実的な政治にはそれを粛々と進める力も必要だ、と言うことであろう。

 

        現実の政治考え隙間風

 

 あ~あっ、また冬に戻っちまったい。フフッ。

 

 その辺りまで書いて慎二が「神の手」の液晶画面を観ながらしみじみしていると、

「おはようございま~す」

「おはようございま~す」

「おはよ~う」

 井口清隆、すなわちメルカリさんが執務室に入って来た。

 慎二は、ちょっとは自信を持ちながらメルカリさんの方に「神の手」の液晶画面を向け、見せて問いかける。

「どう、これぇ? 来る時にスマホにメモしておいたものを元に書いてみたんやけど・・・」

「そうですかぁ~!? 毎朝、よう精が出ますねえ・・・」

 半分呆れ、半分感心しながら、

「どれどれ・・・」

 気の好いメルカリさんはさっと目を走らせて、

「ブログさん、今日は朝からまた深いですねえ・・・。僕なんかその日その日が楽しかったらそれでええ方やからぁ・・・」

 と持ち上げるので慎二は満更でも無さそうな顔になる。

「まあ自分の子どものことやからなあ・・・。それにメルカリさんはまだまだ若くて元気やし、今が充実しているから、そんなに疑問を感じないんやろなあ・・・。そう言うたらメルカリさんのところかて子どもさん、多かったやろぉ~!?」

 そう聞くとメルカリさんは優しい目になりながら、

「ええまあ。でも、うちはまだ小さいから、これからですわぁ~。充実しているかどうかは分かりませんけど、疑問に思てる暇がない!?」

「そうやろぉ~!? 俺かてメルカリさんぐらいの時はそうやったでぇ・・・」

 そう言いながら慎二はちょっと遠い目になる。

 あんまりしみじみしていても仕事をする気が萎えそうに思ったか? メルカリさんは話題を替える。

「それはそうと、今、日本の最低賃金、そんなに安くなってるんですかぁ~!? 欧米と比べてえらい差を付けられてしますねぇ」

 メルカリさんとしてはそこも気になるところらしい。

 再雇用で給料を半分に減らされ、大好きなネットショッピングをあまり楽しめなくなりつつある慎二としても声を大にして言いたいところであった。

「そうやねん! 分かるやろぉ~!? この頃生活して行くのに精一杯で、それにしたい仕事なんて中々見つからへんから、子どもらにとっては難しい時代になって来たなあ・・・」

「ほんまですねえ。フフッ」

 それ以上話していると、これも重くなりそうなので、メルカリさんは頃合いと見たか? さっと立ち上がり、コーヒーを淹れに行った。

 この日は何時もと違い2人の話を割と真剣に聴いていたようで、事務を担当する若い依田絵美里が慎二の机にお茶を置き、

「私の場合、まだ恵まれてますけど、2人のお話をお聴きしていて、少しは考えなあかんなあ、と思いました。朝からありがとうございます」

 そう言って微笑み、遠ざかって行った。

「いやいや・・・。フフフッ」

 そう言って微笑み返した慎二の頭の中からはもう、まだ画面に残っている御高説などすっかり振り払われ、さっそうと歩く絵美里のパンツスーツからでも分かる美脚のことで一杯になっていた。

 

        ちまちまと頭の中の御高説
        美脚の前に消え去るのかも