sanso114の日記

日々気になったことを気楽に書き留めています。

2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧

オネスト・ジョン(6)・・・R3.1.4②

第2章 その2 或る時のこと、2階にある藤沢慎二の担任クラスに付属するベランダからスリッパを投げ、下を通る人の反応を楽しんでいた子がいた。 自閉傾向の強い春名徹である。 『一体何をしてるんやろぉ? そろそろ止めさせないと危ないなあ・・・』 とのんび…

オネスト・ジョン(5)・・・R3.1.4①

第2章 その1 藤沢慎二が曙養護学校に来て先ず驚いたことは、朝の雑巾掛けである。 幅2間ぐらいある広い廊下に2、3人の生徒が横一列に並んでお尻を高く突き出し、担任の教員の掛け声と共に一斉に、勢いよく拭き始める。それが彼方此方のクラスで行われて…

オネスト・ジョン(4)・・・R3.1.2②

第1章 その2 最寄りの東曙駅を出て、曙養護学校の近くまでやって来た時、藤沢慎二はどうも話が違うような気がし始めた。 『あの時、校長が、養護学校の内で希望は何処かと言うので、知的障がいだけは検討が付かないから無理やと思う、そやからそれ以外にし…

オネスト・ジョン(3)・・・R3.1.2①

第1章 その1 藤沢慎二が曙養護学校に異動して来ることになったのは、本人の発言からも想像されるように、本当に適当な理由からであった。 来る前の年の秋、そろそろ異動希望を出す時期のことである。まだ前任校の秋川高校から山鉾高校に来て2年目の慎二は…

オネスト・ジョン(2)・・・R3.1.1②

序章(その2) 保護者懇談会が何とか終わったその日の放課後、2人切りになった教室で相担(同じクラスの担任)の若杉美也子が何やら怒っている。 藤沢慎二は時間も経っていることだし、まさか自分に対してまだ怒っているとは夢にも思わなかった。 「若杉先…

オネスト・ジョン(1)・・・R3.1.1①

オネスト・ジョン 相模宗太郎 親愛なる母にこの話を捧ぐ 正直者には福来る 昔からそう言うでしょう お母さん なのにどうして僕には まだ福が来ないの こんなに正直に生きて来たのに 僕がこんなにも寂しいのは どうしてなのか さっぱり分からない 教えてお母…