sanso114の日記

日々気になったことを気楽に書き留めています。

人は見かけが9割!?(12)・・・R2.4.22②

               その-9

 

 令和2年2月20日、木曜日の朝のこと、藤沢慎二は何時も通り今の職場である心霊科学研究所東部大阪第2分室に7時50分頃に着き、タイムカードにスリットした後、執務室に入る。既に正木省吾、すなわちファンドさんが来て居り、スマホを何やら熱心に見詰めていた。

「おはよ~う」

「おはようございま~す」

 挨拶を交わした後、世界では新型コロナウイルス感染症のことで騒がれ始めていること、株価に大きな変動が起こり始めていること等、ひと通り世間話をし、慎二は自前のノートパソコン、「神の手」をおもむろに開いた。そして、上手く書けたと思う時は即座にブログにアップ出来るように、テザリング用に格安のSIMを挿したスマホまで用意しておく。

 その後は暫らく考え、それからおもむろにメインで使っているスマホを取り出して、メモしておいたものを見ながら「神の手」に起こして行く。

 

        朝のひと時雑詠
 今、通勤電車の中である。

 席を確保出来なくて、車椅子スペースに立っている。

 ざっと車内を見渡すと、席に着いている殆んどの人がマスクを着用している。

 片面1列22人の内、20人は着用していそうだから、何と9割を超えている!?

 凄い!

 その中でも圧倒的に白が多いが、それでもこの頃は多少市民権を得たのか? 黒、肌色等、変化が観られるようになって来た。

 

        何にでも感動見付け気楽かな

 

        何にでも感動見付けお気楽に

 

 実はこうでもしていないと、ちょっと不安になって来る。

 殆んどの人がマスクを着用しているだけではなく、彼方此方から咳、くしゃみ、咳払い等が聞こえて来るからである。

《くしゃみ、咳はそんなに伝染するのかぁ!?》

 そう思うと自分も喉がむず痒くなり始め、咳をしたくなって来るが、生憎マスクをしていないので、気軽には出来ない。

 我が家にはマスクを必需品とする家族がいるので、あまり持って出られないし、然りとてドラッグストア、スーパー等ではすっかり見掛けなくなったから、暫らくは我慢だなあ。フフッ。

 なんて、笑い事ではない!?

 そんな落ち着かない状態でメモしていた所為か? 何時もほど指先が弾まなかった。

 職場に着いて執務室に入るとそうでもないが、やはり不安は続く。

 そして、夕方になるとウィルスを持って帰らないか心配になって来る。

 この緊張感、暫らくは続きそうだなあ。

 とすると、世間で言っている東京オリンピックへの不安もあながち無視出来ないように思えて来る!?

 自分が直接参加するわけではない政治家達は、やっぱりお気楽なもののようだなあ。フフッ。

 

        政治家は高みで数字観てるかな

 

        政治家は高みで数字いらうかな

 

 それは止めて欲しいところであるが、それも分からない。

 色々な情報に触れても、それぞれが冷静な判断力を失わないようにしたいものである。

 

        情報に接して迷わず大事かな

 

 その為にも、普段から反対側の意見も含め、出来るだけ多くの意見に触れておく方が好いのかも知れない。

 また、発信することも。

 

 その辺りまで書いて慎二がしみじみしていると、

「おはようございま~す」

「おはようございま~す」

「おはよ~う」

 井口清隆、すなわちメルカリさんが執務室に入って来た。

 慎二はちょっとは自信を持ちながらメルカリさんの方に「神の手」の液晶画面を向け、見せて問いかける。

「どう、これぇ? 通勤電車の中の様子を観ながらスマホにメモしておいたものを元に、ちょっと書いてみたんやけどぉ・・・」

「そうですかぁ~!? 毎朝、よう精が出ますねえ・・・」

 半分呆れ、半分感心しながら、

「どれどれ・・・」

 気の好いメルカリさんはさっと目を走らせて、

「ほんま、電車に乗るだけでも緊張するようになって来ましたねえ。ふむふむ」

 共感しているのか? 何時になくしっかり読まれている気がし、慎二はどんなことを言われるのか? 今度はそれが気になって来た。

 最後まで読んで漸く顔を上げたメルカリさんは、

「確り観てはりますねえ。それに、色々と考えてはる・・・」

 なんて一旦は感心したように持ち上げておき、そこでちょっとあきれ顔になり、落としにかかる。

「ところで、ブログさん、怖い、怖い、言うてぇ、今時、まだマスク、してはらへんのですかぁ~!?」

 そこを突かれると辛い。

「うっ・・・」

 慎二が困った顔をしたのに追い打ちを掛けるようにほくそ笑んだメルカリさんは揉み手しながら、

「もしお困りでしたら、僕一杯持ってますから、お安くお譲りましょかぁ~?」

「あっ、流石メルカリさん・・・。フフッ。先輩相手に転売する気やなあ!?」

「ハハハ。冗談冗談。幾ら僕がメリカリばっかりやっている言うても、マスクの転売なんてしてませんてぇ~。ハハハハハ」

 笑いに誤魔化しながら、メルカリさんはコーヒーを淹れに行った。

 その背中を観ながら慎二は心のどこかで、本当かなあ? とほんの少し思っていた。