青いとき
誰にでも
約束された 青いとき
中に居るなら 見えなくて
心騒がす 風が吹き
揺らされるまま 彷徨って
気が付いたなら 過ぎていた
中に居るより 外に出て
漸く気付く 其の価値に
其れが誰にでもある 青いとき
過ぎ去ってから 懐かしむ
其れが誰にでもある 青いとき
序章
先輩と互いの作を見せ合って
勝手な批評交し合うかも
「久保先輩、久し振り」
「本当やなあ。どう、藤沢君。もういいんかぁ~?」
「うん。昨日漸くギブスが取れて、大人しくしている分には大丈夫だって許可が出たんやぁ~」
「そうなん。よかったやん! でも、未だ仕事は出来へんのやろぉ~?」
「うん。これからリハビリを4週間やって、それから重い物でも持てるようになるまで更に6週間ほど掛かるらしいねん。うちのとこ、手使われへんかったら仕事にならへんやろぉ~!? そやから、仕事に戻れるのはそれから10週間後掛かるらしいわぁ~」
「フフッ。そんな風に残念そうな言い方しているけど、本当は嬉しいんちゃうん?」
「ハハハ。ばれたぁ~?」
「フフッ。長い付き合いなんやから、それぐらいお見通しさぁ。フフフッ」
「ところで、先輩。この前のメールで、いいお話が浮かびそうやと嬉しそうに書いていたけど、あれ、もう書けたんかぁ~?」
「うん、あれなあ・・・。春先で忙しなったから、未だあのままやぁ~。ところで君の方こそどうやねん? 長いこと休んでるねんから、少しは書けたんちゃうん?」
「利き腕が使えないんやからそれほど進んだわけやないけどぉ、まあアイディアぐらいは浮かんで来たでぇ~」
「ふぅ~ん。それでどんな話?」
「自分の高校時代のことを下敷きに、一昔前のごく普通の学生の青春物語を書こうかなあ、と思てるねん。そやから、今、高校時代のことを必死になって思い出しているとこやねん・・・」
「へぇ~。でも、そんなん、面白いかなあ? 誰でも普通の青春を送って来たわけやから、そんなもん、大して読みたくもないと思うでぇ~」
「いや、そんなことはないはずやぁ!? そりゃキムタクみたいな格好いい人なんか滅多におらへんけどぉ、そやから言うてぇ、みんな本当に自分をしょうもない奴と思てるわけやない・・・。そやけど表立って、自分も満更でもない、自分が好きやぁ、なんて言うわけにもいかへんしぃ、普段は気付かない振りをしているだけやぁ~」
「まあそうかも知れんなあ。この頃自分史を書いて本にしたり、もっと手早く、日記をホームページで公表するのが流行っているらしいもんなあ・・・」
「そうやろぉ~!? それに、ただ自分の過去を懐かしんだり、今の自分に酔ったりしているだけではなく、普通の青春がたとえ格好悪くても、格好悪いなりに十分感動しながら生きていた、と言うことを考える切っ掛けにでもなればと思うわけやぁ~」
「ふぅ~ん。そんなもんかなあ・・・」
「それでなあ、読んでくれる人それぞれが自分に酔うだけではなく、これからの人生を大事に生きられたらええなあと思って・・・」
「そうかぁ~。中々凄そうやん、それぇ~!?」
「そんな風に改めて言われると照れるけどなぁ。フフッ」
「まあまあ。それで、藤沢君の青春ってどんな感じやったんやぁ~? 書き掛けたところがあるんやったら、一遍見せてえやぁ~」
「そりゃ見せてもええけどぉ、未だあんまり纏まってへんし、恥ずかしい部分もあるから、読んでも笑わんといてやぁ~」
「そりゃ可笑しかったら笑うよぉ~。フフフッ」
「ええっ! そんなん言うたら見せ難いわぁ~」
「何言うてるんやぁ~!? 可笑しかったら笑って当たり前やろぉ? それが普通やん。普通の青春について書く積もりやったら、まあそれぐらいは覚悟しときぃ~」
「そうかぁ~。そうやなあ・・・。分かったぁ! ほな、未だ断片しか書いてないけど、見せたるわぁ~」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
もう15年以上前に「懐かしく青い日々」を書き、それについては暫らく前、見直しながら加筆訂正してこのブログに上げた。
その頃にそれを巡って職場の先輩と遣り取りしたと言うのがこの話の設定で、まあ私小説的な感じである。
実際には同僚にも誰にも見せていなかったように思う。
私の私小説的な話で他人に見せたのはあまりなかったような気がする。
それでいて日記は見せていたのであるから、そこが我ながら面白いところである。