sanso114の日記

日々気になったことを気楽に書き留めています。

熟年ブロガー哀歌(3)・・・R2.4.6①

               その3

 

 宇宙船の中では、先ほど大林盛夫を連れ込んだのり(勿論、宇宙人であるから、*#$&※???♭&%・・・・・等、わけが分からないながら立派な名前が付いているものと思われるが、便宜上以下でも地球で使っていた名前である浅田のりを用いることにする)が、きのこのような姿に変わっていた。そしてのりに、

「おい、のり。今度は大分掛かったなあ。えらい手間を掛けたけど、この冴えないオヤジがそんなに価値のある奴なのかぁ~?」

 と別のきのこのような姿をした宇宙人が話し掛けた。

「分からないけど、若い子よりは味があるんじゃないかと思ったの。それに、熟年と言われる年になっても、他愛無い夢を追い掛けて、大人になり切れていないところが面白いと思わない? 地球人を研究する材料としては悪くない気がするわぁ~。ところで、はるの方はどうなのぉ?」

 はると呼ばれた宇宙人は頭を反らせながら自慢げに、「俺かぁ~? ほら、のりがオヤジ1人に掛かっている間に10人のオバちゃんを集めて来たよぉ~」

「凄い!」

「ハハハ。この頃はオヤジよりオバちゃんの方が凄いからなあ。流行りの韓流スターとマツケンに似せて迫ったら直ぐに付いて来たよぉ~。ハハハハハ」

 何もない大きな部屋で目を覚ました大林は、頭がはっきりして来るに連れ、目の前にきのこのような形をした生物がフラフラ、クネクネ動いているし、自分のように寝かされている熟年男女が何人もいることに気付いた。

 そのとき、小さな目を一杯に開いて驚きを禁じえない大林の頭の中に、直接話し掛ける声があった。

「どうやら気が付いたようねえ!?」

 誰も喋っていないようなのに、きのこ状の生物の方から聞こえて来るような気がする。

《ひょっとして、この怪しげな生物があの可愛いかったのりなのかぁ!?》

《そうよぉ~。私がのりよぉ! 可愛くなくてご免なさい・・・》

「えっ、私が心の中で思ったことまで聞こえているのかぁ!?」

《そう。だから、別に声に出さなくてもいいのよぉ》

「でも、我々人間、いや地球人は声に出してこそ言った気がするんだぁ!」

《だったらオジサンは声に出せばいいわぁ~」

「でも、声に出さなくても、思ったことが分かってしまうんだ・・・」

《そうよ。今、私のことを怖がっているでしょう?》
「いや、そんなことないよ・・・」

《ウフッ。嘘を吐いても駄目よぉ。でも、怖がらないでも大丈夫。直ぐ慣れるわよぉ。それに慣れると、その方が話が早いし、ずっと楽よぉ》

「そうかなあ? それでは喧嘩になってしまうよぉ~。我々は声に出してこそ言った気がするし、責任を感じる。逆に心で思っているだけのことは他の人には分からないから自由を保たれる。それに、相手が何を思っているか想像する楽しみがあるんだぁ~」

《確かに、そんな面もあるかも知れない・・・。まあ、あなたたちの色んな面を知りたいから、ここに来て貰ったのよぉ~》

「そんなこと、勝手にされても困るよぉ! それに、ここは一体何処なんだぁ!?

《まあまあ、そんなに怒らないでぇ。それに、怖がらなくてもいいわぁ~。用事が済んだら無事に地球に帰してあげるからぁ・・・」

「えっ!? そしたらここは地球ではないのかぁ?」

《そうよ。ここは宇宙ステーションの中。そうね。あなたたちが今度見付けたと言って騒いでいる第10惑星の衛星があるでしょう? ここがそうよ。勿論、作り物だけど、あなたたちの科学の程度ではそこまでは分からないようね》

「でも、一体何の為にぃ?」

《それはさっきも言ったように、私たちはあなたたち地球人のことをもっともっと知りたいのぉ。でも若い子らでは、前に一度研究しようとしてみたんだけどぉ、軽くて、浅くて、ちっとも面白くない・・・。だから今回は熟年と言われるあなたたちに来て貰ったのよぉ》

「それで、一体何をすればいいんだぁ!? 話をするだけでいいのかぁ~?」

《いえ、それだけではなく、実験に参加して貰おうとも考えているのぉ。ところで、あなたの得意なことはどんなことかしらぁ?》

 聞かれて大林ははたと困った。

《これまで俺は一体何をして来たのだろう!? 流されるままに大学を出て、しがないサラリーマンをし、結婚して子育てをした。でも、ただ日々を生きて来ただけのような気がする。この頃漸く書くことに興味を持ち出したぐらいか・・・》

「そうだなあ。ブログなら少し出来るけどぉ・・・」

《そうねぇ。平々凡々と暮らして来たあなただけどぉ、最近漸く書くことに目覚めたのねぇ? メールでもそんな感じがしたわぁ~」

「そうかぁ~。思ったことは直ぐに伝わってしまうんだったなあ!?」

《そうよぉ! さっきも言ったでしょ? それであなたにして貰うことだけど、そうね、あなたにはこの宇宙ステーションでの生活を発信して、もう少し地球の方々に来て貰えるように誘う役目をして頂きましょう》

「そ、そんな酷いことは出来ないよぉ!」

《酷いことじゃないわぁ~。今度はあなたを連れて来たようなことはしない。ここの好さを知らせて、自分から来て貰おうと思っているのぉ~。だから、あなたは何も嘘を書く必要はない。ここでの生活、見えるもの等をそのまま発信すればいいのぉ》

「ふぅ~ん。それでいいのか。それなら出来るかも知れないなあ・・・」

 

 その日、落ち着いてから、大林は早速宇宙からのブログを発信し始めた

 

            宇宙通信

皆さん、こんにちは。私は大林盛夫、53歳。地球にいたらただの中年オヤジですが、ひょんなことから、今、宇宙ステーションの中にいます。
場所は冥王星より未だ大分外にある惑星の直ぐ近くで、今、地球では第10惑星に衛星を発見か!? と騒がれているのがこの宇宙ステーションです。
未だわけが分かりませんが、奇妙な体験ですので、これから皆さんに向かって時々発信したいと思っています。
たとえば、ここから見える第10惑星の大きさ、美しさなんて地球からは想像が付かないでしょう? それに太陽の何と小さなこと・・・。

 

 その後も大林は日に1回(勿論、地球における1日に1回ということ)、宇宙通信を発信した。地球にいるときと違って珍しいことばかりだから、書き出すと、幾らでも書きたいことが湧いて来るので、少しも困らなかった。

 そして宇宙人たちは大林が好印象を持つように、ブログ発信すること以外には特に仕事を課さず、大きな窓の付いた広い書斎を与えて最新の機器を使わせる、毎食ご馳走を出す、のりがまた地球で見た若くて可愛い娘の姿に変わり、話し相手になる等、思い付く限りの優遇をした。

 単純なもので、大林の書くブログは次第に好意的なものに変わって行く。

 

            宇宙通信

今日も第10惑星に映える朝日が美しい窓辺でこれを書いています。さて、私の生まれ故郷である日本がある地球の北半球ではそろそろ冬が近いのでしょうか? ここではそんな季節感がないのが残念です。
何しろ、太陽の引力によって他の惑星と同じように運動する第10惑星が太陽を1周するのに掛かる時間は地球で言う600年! 地球の人間からすれば殆んど同じ位置にいるようなものです。その第10惑星の周りを回ることによる変化はありますが、それは1日の変化のようなものです。だから、季節の変化というようなものはここにいれば殆んど感じることが出来ないのです。
でも、地球では考えられない最新の設備が整ったここでの生活は非常に快適です。いや、この心地好さは言葉では表わせません。
当たり前ですね。地球には例がないから、例えようがないのです。言葉にしても空滑りするだけでしょう。
ところで、さっき第10惑星の公転が600年も掛かるから、我々地球人には季節の変化を感じることが出来ないと書きましたが、実は最近いい話を聞きました。
これまでに何回か、ここにいる宇宙人たちの文明が我々と比べ物にならないほど高度に発達していると書いて来たように、宇宙飛行に関する技術にも目を見張るものがあります。私がここにいて、こんなブログを発信しているのもその証拠の一つですね。その恩恵を今地球上でこれを読んでいる皆さんにも分けてあげようという話が出ています。どうやら、地球人の何人かに宇宙飛行のモニターになって貰おうということらしいのです。もし興味があるようでしたら連絡をください。

 

 反響は想像以上に大きかった。

 直ぐにでもモニターになりたいという者。どんな飛行をするのか? 安全性はどうか? 等、もう少し具体的なデータを知らせて欲しいという者。実際に何処かに行った写真やビデオを見せて欲しいという者。等々。

 その声を受けて大林はまた書いた。

 

            宇宙通信

思いの外の反響にびっくりしています。

安全性について心配しているあなた、私がここにいるのがその証拠、と言っても未だ不安なようですから、写真とビデオを添付しておきましたのでご覧下さい(写真、ビデオは略)。
それから、地球からここまで乗って来た宇宙船はあっと言う間に着いたようですが、事情があって気を失っていた私には分かりません。聞いてみると光を超える速さも可能だとのことです。だから、普通の速さなら300年以上掛かる距離でも大して時間を掛けずに旅することが出来るから地球人でも観測可能なのです。
また、宇宙船の中の時間は、相対性理論を習ったことがある人ならご存知のように、非常に短くすることも可能です。それも合わせて、外の時間で長い間掛けて起こっている変化を短時間の間に観測することが出来るのです。
さあ、あなたも勇気を持ってモニター隊に参加してみませんか!?

 

        怪しげな誘いに乗れば一瞬で

        宇宙の果てに飛び立てるかも 

 

     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆

 

 これを書いたのは15年以上前であるから、2005以前で、その頃は冥王星が第9惑星であった。

 

 因みに、冥王星の公転周期は約248年で、冥王星と同じぐらいの大きさで第10惑星か!? と言われていたエリスの公転周期は約558年だそうな。

 

 太陽系自体はまだまだ遠くまで広がっており、半径1.5光年なんてデータもあった。