sanso114の日記

日々気になったことを気楽に書き留めています。

人は見た目が9割!?(最新版その47)・・・R4.1.12①

            その47

 

 令和2年6月24日、水曜日の朝のこと、藤沢慎二は何時も通り今の職場である心霊科学研究所東部大阪第2分室に7時50分頃に着いて、玄関ホールの受付前に設置してあるタイムレコーダにICチップ入りの職員証をスリットした後、直ぐそばに置いてあるアルコール消毒液を掌に溢れんばかりにたっぷりと取り、その中で手指を丸めたり、伸ばしたり、擦り合わせたり、爪の間にも染み込ませようと指先を掌でトントンしたりして、ともかく丁寧過ぎるぐらい念入りに消毒する。

 この消毒液は大分前から置いてあり、来客も含めてそこを通る人の皆が日に数回ずつは使う所為か? この頃は何だか減りが早いように思われる。幾ら呑気で不精者の慎二でも気になって一旦使い始めると、そうしないことが結構大きな不安になって来るのであった。慎二はそれぐらい小心者で、同調圧力に弱いタイプでもあった。だからついでに洗面所に寄って、持参した米国製超強力うがい薬で何回もうがいをしておく。

 そんな一定の安心感が得られる程の儀式的なことまで済ませ、ふぅーふぅー言いながら階段を3階まで上がり、割り当てられた執務室に入って来たら、これも何時も通り、既に正木省吾、すなわちファンドさんが来て居り、ちょっと古めのiPhoneの端に何本かひびが入った液晶画面を食い入るように見詰めてはぶつぶつ独り言ちながら、頻りにメモを取っていた。その変わらなさ加減にも結構大きな安心感があった。

「おはよ~う」

「おはようございま~す」

 習慣的な朝の挨拶を交わした後、もしかしたら梅雨入りしてから蒸し暑くなって来た影響もあるのか? 梅雨の合間にもしっかりと感じられるほど紫外線が強くなっている効果も大きいのか? 我が国では急速に新型コロナウイルスの新規感染者数が低レベル収まっていること、また全国的に緊急事態宣言に続いて休業要請、更に都道府県をまたぐ移動の自粛要請も解除されている所為で早速気の緩みが出始めているのか? 福岡県、大阪府、神奈川県、東京都、埼玉県、千葉県、北海道等と、広範囲に亙ってまだ新たな感染者数が中々0を維持出来ないこと、時には無視出来ない数が出ていること、大阪でも難波、梅田、天王寺、京橋等の繁華街で人波は確実に増えて来ていること、通勤電車や駅に学生が見られるようになり、程々に混んでいるときも増えたこと、外国では米国、ブラジル、イギリス、イタリア、ロシア、インド、イランと相変わらず広範囲に亙って猛威を振るっていること等、一頻り世間話をし、それから慎二は自前の中古ノートパソコン、「神の手」をおもむろに開いた。そしてそばには、上手く書けたと思う時は即座にブログにアップ出来るように、テザリング用に格安のSIMを挿したスマホまで用意しておく。

 他人の目も意識して何処まで書くか何か迷うところでもあったのか? その後は暫らく考え、それからおもむろにメインに使っているスマホを取り出して、家を出る前、通勤電車の中、乗換駅での待ち時間、徒歩移動中等にメモしておいたものを見直しながら起こして行く。

 ファンドさんの関心は既に投資関係の記事に移っており、またiPhoneの液晶画面を食い入るように見詰めてはぶつぶつ独り言ちながら、熱心にメモを取り始めた。

 

          朝のひと時雑詠

 今週3日目の出勤日となった。

 昨日は寝る前の気温が何と30℃を超えていた。

 もっとも目覚まし用に買った安物の電波式置き時計に付属した温度計で、目線ぐらいの割と高いところに置いてあるのも関係しているようである。床に置いてある空気清浄機が示す気温よりも2℃から3℃ぐらい高く出ている。

 それにしても高い!?

 仕方が無いからエアコンを入れて寝たら、途中で寒くなって目が覚めた。

 それからは眠りが浅くなったようで、途切れ途切れに記憶が残っており、それが如何にも夏の朝らしい気怠さとして残っている。

 まあ好い。

 今日を何とか乗り切れば、明日からは4連休である。

 それが今年度は働く為の大きなエネルギーとなっている。

 なんて、ちょっと情けなく始めてしまったが、もしかしたら天気が下っているのだろうか!?

 低気圧の心身への悪影響はこの頃色々な人が口にするようになっている。

 朝食を摂りながら視ていたテレビの天気予報によると、確かに天気は下って行く様子であった。

 それでも今日に限れば、関東は次第に雨が降り出すようであるが、関西は曇るぐらいで済みそうだ。 

 ただ週末から来週前半に掛けては如何にも梅雨らしい天気になるようだから、連休中に買い物がてらの散歩を楽しめるかどうかは、ちょっと微妙になって来た。

 そう言えば富士急ハイランド志摩スペイン村USJ海遊館ハウステンボス美ら海水族館等、各地で既に営業が再開されている遊興施設もあるし、東京ディズニーランドのように7月に再開する予定のところもある。

 そんな空気に誘われたか? 家人と子ども等は昨日、暑い中、奈良市内にある平城宮跡に遊びに行って来たと言う。

 あそこはまあ1km四方のだだっ広い空間ではあるが、それでも朱雀門大極殿等、少しずつ復元され、増えて来る建物を巡って歩きながら、無料でのんびりと悠久の昔を偲ぶことが出来る。

 

        平城の都の跡に降り注ぐ
        お日様からの変わらぬ視線

 

        お日様にとって千年僅かなり
        ちまちまとした世界なのかも

 

        ちまちまと暮らす人間世界でも
        人にはそれが全てなのかも

 

        どうせなら此の身宇宙に浮かばせて
        視野を広げりゃ気楽なのかも

 

 ところで、週の後半が休みと言うのは気楽なようで、その分、仕事をする上では結構緊張感が抜けてしまうようだ。

 そりゃそうか!?

 壮年期であった私も含めて、一般的に週の後半に何とかまとまりを付けようとアクセルを吹かせる。

 つまり追い込みに入る。

 そこがすっぽりと抜けてしまうのであるから、当然のことだろうなあ。フフッ。

 でもまあ、その分、気楽にもなっているのだろう。

 さて、そろそろ出る準備に入った方が好さそうだ。

 頭の中でざっと今日の仕事をシミュレーションしてみると、手際よく進めれば昨日よりはゆったりと進められそうに思えて来た。

 出来ればそうありたい。

 今更やっつけ仕事はやりたくない。

 これまで忙しくして来たことで、どれだけの夢を奪われて来たことであろうか!?

 振り返ってみると、結構長い間書き物を楽しむ元気もなかったように思われる。

 今、以前に途切れ途切れに書いていたものも見直しながら、漸く新たに書き始めたところであるから、この時間は大切にしたい。

 なんて書いていると、仕事からは気持ちが遠ざかっているような気がして来たなあ。フフッ。

 そう言えば昨日、机上に置いてあった本部からFAXによって届いた私宛のメモを見ると、名前が微妙に間違って書かれてあった。

 元々私の場合影が薄いのか? これまでにも結構ありがちなことで、大きなショックはなかったが、結構長く一緒に仕事をした同僚からであったから、関係の希薄さを意外に思った覚えがある。

 それはまあともかく、今、生駒駅難波駅行きの普通電車に乗り換えたところである。

 今日は割と空いている。

 席がゆったり目に全部埋まって、各扉の付近に1人ずつ立っている感じか?

 1つの車両に10人とは立っていない。

 そして生駒トンネルを抜けても青空が広がっている。

 予報通り今日1日は天気が持ちそうに思われる。

 好かった、好かった。ホッ。

 さて、昨日のプロ野球であるが、気に留まった投手としては阪神タイガースの青柳晃洋(26歳、183cm、84kg)か!?

 6回で77球投げ、1安打3三振1四球1死球無失点の快投で、ヤクルトスワローズとの対戦を4対1と勝利に導いている。

 ただ、初戦に登板したエースの西勇輝(29歳、181㎝、81㎏)と言い、交代が早過ぎる気はする。

 

        タイガース先発早く交代し

 

        タイガース先発早く諦めて

 

 ただ、ファンから観るとそれで好いらしい。

 私は阪神タイガースのファンでもないので、チームやファンが好いのであればそれで好いが、不思議な気はしている。

 

 その辺りまで書いて、自分なりには今日も上手く書けたと思い、慎二がしみじみとしていたら、

「おはようございま~す」

「おはようございま~す」

「おはよ~う」

 井口清隆、すなわちメルカリさんが執務室に入って来た。

 慎二はちょっと迷い、メルカリさんの方に「神の手」の液晶画面を向け、見せながら問い掛ける。

「メルカリさん、どう、これぇ? 僕なりには今日もまあまあ上手く書けたと思うんやけどなあ・・・」

 それだけのことで小心者の慎二は、緊張が高まって頬が紅潮し、耳たぶをひくひくさせている。

「ブログさん、相変わらず毎朝、よう精が出ますねえ」

 気の好いメルカリさんはそう言って半分呆れ、半分感心しながら、

「どれどれ・・・。ふむふむ・・・」

 さっと目を走らせて行き、ホッとしたように、

「そうそう! プロ野球やゴルフとかのスポーツもそうやけど、彼方此方でテーマパーク、水族館等、遊ぶところも漸く再開されてますねえ!?」

「でも、学校は全国的に夏休みを短くする(※1)なんて言うてるし、メルカリさんの子どもさんの学校は夏休み、あるん!?」

「ええ。何とか8月一杯ぐらいはありそうですよ。もっとも僕と嫁さんが盆休みをどれぐらい取れるかやけど・・・」

《メルカリさんは既にテレワークを大分してるようやから、実際には大分休んでいることを気にしているのかも知れないなあ・・・》

そう思った慎二は、ここは仕事だけではなく、人生の先輩らしい気遣いをしておくことにした。

「でもまだ内の職場はテレワークの制度を継続しているようやし、上手いこと使って出勤日を減らしたらええんちゃう!? 俺は別に夏の予定なんかないし、ここでの仕事は俺でも間に合うから・・・」

 表向き、休んだらええやん、とは言えない。

 それを聴いてメルカリさんはパッと目を輝かせ、

「そうですねえ!? すみません。もしかしたらお言葉に甘えさせていただくかも知れませんけど、その時はお願いします!」

 そう言いながら軽やかに立ち上がり、給湯室にコーヒーを淹れに行った。

 そこに事務を担当している若い依田絵美里が熱いお茶を淹れた備前焼のぷっくりした湯飲みを持って来て慎二の机の上にそっと置き、「神の手」の液晶画面にさっと目を走らせる。

 それからちょっと躊躇した後、申し訳なさそうな顔になって言う。

「藤沢さん、すみません。私ももしかしたら友達と旅行(※2)に行かせていただくかも知れません」

《えっ、どんな友達と!?》

 と一瞬思わないでもなかったが、ここはそんな邪念をちょっと抑えて、

「ええよ、ええよ。どうせ俺、休みになっても家に籠っているだけで、何処にも行けへんしぃ・・・」

 絵美里にも気弱な微笑を浮かべながらそう言う慎二の目は、暫し父親のように優しくもなっていた。

 それを見て絵美里はホッとしたように微笑み、

「ありがとうございます!」

 そう言って足取り軽く離れて行った。

 そして、その引き締まりながらも心なしか笑っているような背中を見送る慎二の目がちょっと寂しさを浮かべていたことには誰も気付いていないようであった。

 でもまあ、それも持ちつ持たれつ、お互い様のことで、それが職場の人間関係の好さでもある。

 慎二はこれまで自分が色々な先輩にお世話になって来たことを思い出しながら、当然のこととして納得しようとしていた。

 

        盆休み皆で旅行を計画し
        遊ぶ余裕が出て来たのかも

 

        世の中は持ちつ持たれつ譲り合い

        何とか上手く回り出すかも

 

※1 変化を嫌う我が国では出来る限り、過不足なく例年通りにしようと無理をするきらいがある。今年度(2020年度)、公立の各種学校に付いては長期休暇の短縮、土曜日登校等が言われており、例えば夏休みを1週間にするところもあり、そこまでではなくとも、2週間ぐらいに縮める学校は普通に耳にしている。同じような感覚でNHKの人気の朝ドラ、「エール」に付いても土曜日に放送して10話減らすのをやめて欲しいと言う意見が散見されるが、それならば放送期間を延ばすことも考えれば好いのではと筆者ならば思う。

追記 実際には当初9月末終了の予定であったのが11月末まで延長されている。

※2 上記の短くされる夏休みとは逆行している感がなくはないが、7月22日からは東京を除く地域でGo To トラベルキャンペーンが始まる。東京が追加されるのは10月1日からの予定だそうな。旅行代金の35%が補助され、旅行先で使う予算の15%に当たるクーポンに付与されると言う。予定としては日帰りが来年1月31日まで、宿泊の場合2月1日までで、修学旅行については3月15日までであるが、予算が無くなればお終い、とも言うから、もし使いたければ注意が必要である。

追記 2021年の暮れ、一旦は新型コロナウイルスの新規感染者数がほぼ0のレベルまで減っていたし、新政権の目玉でもあったのか、GoToトラベルの再開で多くの人の遊び心をくすぐっていた。

 ただし、前回よりは規模が小さくなっている。

 上限が2万円から1万3千円と減額され、旅行代金の割引額に付いては35%(上限1万4千円)から30%(上限が1万円)、クーポンに付いては旅行代金の15%(上限6千円)が定額となり、平日3千円、休日1千円となっている。

 そして年末年始のオミクロン株騒ぎ、第6波と言われる新規感染者数の急増等もあって、彼方此方で色々な企画が中止になり始めているから、最下位は先送りされている(2021年1月12日現在)。