sanso114の日記

日々気になったことを気楽に書き留めています。

人は見た目が9割!?(最新版その8)・・・R3.12.8②

              その8

 

 令和2年3月9日、月曜日の朝のこと、藤沢慎二は何時も通り今の職場である心霊科学研究所東部大阪第2分室に7時50分頃に着き、玄関ホールの受付前に設置してあるタイムレコーダーに職員証をスリットした後、階段を息を切らせながら3階まで階段で上がり、割り当てられた執務室に入る。

 既に正木省吾、すなわちファンドさんが来て居り、ちょっと古めのiPhoneの端に何本か大きなひびが入った液晶画面を熱心に見詰めては何やらぶつぶつ独り言ちながら、頻りにメモを取っていた。

「おはよ~う」

「おはようございま~す」

 何時もの朝の挨拶を交わした後、世界では新型コロナウイルス感染症の騒ぎが益々大きくなっていること、相変わらず不織布の使い捨てマスク、トイレットペーパーが買い難くなっていること、今のファンドさんにとっては最大の関心事である株価に大きな変動が起こっていること等、一頻り世間話をし、慎二は自前の中古ノートパソコン、「神の手」をおもむろに開いた。そして、上手く書けたと思う時は即座にブログにアップ出来るように、そばにはテザリング用に格安のSIMを挿したスマホまで用意しておく。

 その後は何を書き、何を書かないか暫らく考えて、それからおもむろにメインで使っているスマホを取り出して、通勤電車の中でメモしておいたものを見ながら「神の手」に起こして行く。

 ファンドさんの関心は既に投資情報に移っており、またiPhoneの液晶画面を見詰めてはぶつぶつ独り言ちながら、熱心にメモを取り始めていた。

 

          朝のひと時雑詠

 仕事のある日、朝は先ず前日使った不織布マスクを洗う。

 1枚で少なくとも1週間は使う気でいる。

 それはまあともかく、出る準備である。

 前の日に帰ってから直ぐ洗っておけば済む話であるが、元々が使い捨てのマスクなもので、使った直後は気持ちがすっかり離れている。

 でも翌日になって出る時が近付くと、新しいのを使うのが何となく惜しくなって来るのである。

 みみちい話ではないか!?

 我ながら朝から気の萎える話でもある。

 でも、こんなときもあるのが普通の人間で、仕方の無いことなのだ。

 取り敢えず書き留めておこう。

 ところで、今朝は濃い霧が出ている。

 これから晴れて来るのであろうか?

 それで少しは気持ちが明るくなるのかも知れないなあ。フフッ。

 

        先ずマスク洗い仕事に出る支度

 

        霧の朝みみちい自分カバーして

 

 そんな曇りがちな気持ちを少しは晴らしてくれるのがスポーツの中継やニュースである。

 ただ、先週のゴルフツアーの方は欧州男子ツアーの川村昌弘、米国男子ツアーの松山英樹共に振るわず、モヤモヤさせられていた。

 仕方が無い。

 そんなときもある。

 また次の機会に期待しよう。

 アジアンツアーの方では星野陸也の4位を筆頭に、上位争いをした選手が何人かいた。

 まあまあの実力を持つ選手達の手に合うツアーがあるようで、少しはホッとさせられる。

 それからスキージャンプのワールドカップであるが、昨夜は悪天候で結局、男女共に中止になったそうな。

 自然が相手であるから、これもまあ仕方が無い。

 今日代替の試合が行われるという話もあるから、もしそうであれば、其方に期待しよう。

 ウィンタースポーツでは他にスピードスケートのワールドカップで男女共に快挙が達成されている。

 男子では新濱立也が500mの最終戦で今シーズン3度目の1位となり、この種目の総合優勝を果たしている。

 これは清水宏保以来だそうな。

 まだ24歳と若く、身長183㎝、体重89㎏と、外国人選手と比べても見劣りしないぐらい立派な体格をしている。

 女子では第一人者の小平奈緒が500mの最終戦で2位となり、この種目で3度目の総合優勝を達成している。

 これはもう、ただただ凄い!?

 彼女も今シーズンで1位になったのは確か3回であったような。

 ともかく、流石としか言いようがない。

 それに何より、昨日の名古屋ウィメンズマラソンが凄かった。

 俄かの私は名前ぐらいしか知らなかったのであるが、一山麻緒が雨の中、2時間20分29秒の素晴らしい記録を出して優勝し、東京オリンピック代表を射止めている。

 何でもこれは日本人選手では4番目の記録となり、国内で出した記録としては最高だと言う。

 男子の琵琶湖、女子の名古屋共に雨の中、走っている選手達が大変そうに見えた。

 おまけに男子はどういう加減か、号砲一発! とは行かなかったから、余計にそうであった。

 女子の方は幸い、運営はきっちり行けたようで、そんな中、凄い記録が出て、ちょっと吃驚であったが、男子の方も実は悪天候がそれぞれの選手にすれば極端に悪影響として出たわけではない!?

 そんな気がした。

 ともかく、女子だけでも胸の空く思いをさせてくれて、好かった、好かった。ホッ。

 

        一山や周りの気持ち晴らす春

 

        一山や周りに笑い運ぶ春

 

 それはまあともかく、何時もと違い、今日は本来休日にしている月曜日なのに急ぎの仕事があって出勤日となったが、昨日のアスリート達の活躍が今朝も元気を与えてくれたようだなあ。フフッ。

 

 その辺りまで書いて慎二が「神の手」の液晶画面を観ながらしみじみとしていると、

「おはようございま~す」

「おはようございま~す」

「おはよ~う」

 井口清隆、すなわちメルカリさんが執務室に入って来た。

 慎二は、ちょっとは自信が出て来たようで、メルカリさんの方に「神の手」の液晶画面を向け、見せながら問いかける。

「メルカリさん、どう、これぇ? 来る時に通勤電車の中でスマホにメモしておいたものを元に書いてみたんやけどぉ・・・」

「そうですかぁ~? 流石ブログさん、毎朝、よう精が出ますねえ・・・」

 半分呆れ、半分感心しながら、

「どれどれ、ふむふむ、・・・」

 気の好いメルカリさんはさっと目を走らせながら、

「フフッ。ブログさん、マスクが足りなくて、大変そうですねえ。フフフッ」

 ちょっと気の毒そうな、それでもちょっと自慢気な目で見る。

「そりゃメルカリさんは一杯持っていると言ってたもんなあ!? でも、別に安く都合してくれんでもええでぇ~」

 慎二がちょっと恨めし気な顔をしてそう言うと、メルカリさんにはそれが慎二なりの自虐的な冗談だと分かっているので、期待に応えるように笑いながら、

「ハハハ。ブログさん、まだ恨んでますねえ。ハハハハハ」

「いや、別にそんなこと無いねんけどなあ・・・」

 この話題もそれぐらいが頃合いと見たか? メルカリさんはそこからは軽めの話題に転じる。

「それはまあともかく、女子マラソンの方は、記録的には世界から見たら微妙なところやろけど、スピードスケートの2人、ほんま凄いですねえ・・・。2人共世界でトップですかぁ~!?」

「そうらしいでぇ。ほんま、朝から元気出たわぁ~!」

「そう言うたらブログさん、今日は月曜日やからぁ、何時もやったら休みの日のはずですもんねぇ!?」

「そうやねん! そやからまだちょっと眠いわぁ~」

「まあ頑張ってください。フフッ」

 そう言ってメルカリさんはさっと立ち上がり、給湯室までコーヒーを淹れに行った。

 すると、2人の話を聞くともなしに聞いていたか? 事務を担当している若い依田絵美里が慎二の机に静かに近寄り、そっと熱いお茶を淹れた備前焼のぷっくりした湯飲みを置く。

 何時もであればそれだけで終わるところであるが、この日は慎二にすれば休日出勤としてわざわざ出て来ているので、その労いの意味もあったのか? ちょっと高級そうな個包装のクッキーを2枚添えた。

 それを目にした途端に甘党の慎二の顔がパッと輝き、若い女性の気遣いであることも心地好く自尊心をくすぐって、更に働く元気を得たようであった。

 

        若い子の気遣いオヤジ元気付け
        仕事する気が出て来たのかも