sanso114の日記

日々気になったことを気楽に書き留めています。

理想のパソコン⁉・・・R2.3.23②

 藤沢慎二はかねてから、キーボードに指を置いただけで湧くように文書が打ち出されるパソコンはないものか!? と夢見ていました。

 要するに書くことに少々疲れを覚えていたのです。

 でも、何か纏まったものを書いてみたい。

 そのジレンマから、そんな下らない、夢とも言えないような妄想を抱いていました。

 また、こんなことも考えていました。

 現実にはあり得ないような番組で満足させてくれる薄型大画面テレビはないものか!?

 基本的に慎二は電気製品が大好きなのです。暇さえあれば大型電気店を覘いて目を楽しませ、時には懐具合と相談しながら値引き交渉までしてみます。そんなときは涎を垂らさんばかりになっていました。

 でも、ほんのたまに思い切って買ってみると、3日にもすれば飽きてしまいます。パソコンがあっても大した文章が打てるわけでもないし、テレビが新しくなっても番組が変わるわけではないからです。

 結局、欲張りなのです。電気製品が好きならば製品そのものを楽しんでいればいいのに、ついその責任を超えた成果まで求めてしまう。これでは満足出来るわけがない。

 しかし、求めてみるものです。叩けよ、さらば開かれん! 本当に慎二が望んでいたようなパソコンがとうとう見付かりました。

 それは大阪日本橋の裏通りから更に路地に入ったところにある夢見堂と言う、一見中古屋でのこと。何か掘り出し物はないかと物色していたら、店主が含み笑いを浮かべながら、黙って慎二の方を窺っています。

「どうせ買わないのに、と思っているんやろぉ~? 失礼な奴やなあ! まともな物を売っていないから買う気がしないだけやぁ~」

 突然聞こえて来たそれは、今、まさに自分が思っていることだったので、慎二は吃驚して目を白黒させていました。

「フフフッ。どうです、こんなボイスレコーダー、欲しくありませんかぁ~?」

 一見何の変哲もないそれを差し出しながら店主は、得意そうに鼻を蠢かせ、更に、

「それともこんなパソコンかなぁ~? フフッ」

 慎二がその液晶画面を覗くと、何と、今ボイスレコーダーから流れて来たのと同じ文章が打たれていました。

 しばらく効果を楽しんだ後、また店主がおもむろに口を開きます。

「どうです。こんなもの欲しかったんだぁ~、と思っていた物ばかりでしょう? 少々値は張るけど、買って損はない。退屈しませんよぉ~」

 慎二は度肝を抜かれたまま、あれよあれよと言う間に店主の口車に乗せられて、総額

30万円の30回均等払いで買ってしまいました。

 ごく普通に見える中古ノートパソコンにしてはべらぼうな値段(※)です。新品でも、今ではかなりの高性能パソコンの価格でしょう。

(※令和元年暮れ、Windows10プロ、CPUが第3世代のCOREi3、512GBのSSD、8GBのメインメモリ、DVDマルチプレイヤー内蔵、Microsoftのoffice2019付きで税込み19800円であった)

 でもまあ、夢を買ったと思えば、そう高くないのかも知れない。

 小心者の慎二は何とか自分を納得させながら、一方では期待に胸を膨らませて家路につきました。

 さて、生駒トンネルを抜けて、矢田丘陵の山麓にへばり付くように建てられた我が家に戻って来た慎二は、早速書斎にパソコンを持ち込み、キーボードに指を置いてみました。

 するとどうでしょう。指が吸い付けられるようにフィットしたかと思うと、

  カタ、カタ、カタ、カタ、・・・・・

 止め処なく打たれ、液晶画面上に文章が次から次へと湧き出て来ました。

「わっ、わっ、す、凄い!」

 今日の印象に残る出来事が実に手際よく纏められているのでした。

 慎二は普段から日記を付けていますが、こんなに素早く打てたことはありません。指の動きだけではなく、頭の回転の方もです。

 それが今日はどうしたことでしょう? 何時もの数倍で、頭に浮かぶ間もなく、しかも流麗な文章となって出て来るのです。

 それからも慎二は得意になって打ち捲り、その成果を次から次へとブログに発表して行きました。そしてそれがある程度評価されたものだから、これまでに経験して来たことを素材にどんどん創作化して行きました。

 そして数日後、パタッと指の動きが止まり、我に返ると、慎二は何も思い出せないことに気付き、背筋が寒くなりました。

「あれぇ~、一体僕は何をしているのかなぁ~? ここはどこ? 私はだあれ?」

 その時、書斎のドアが勢いよく開き、

「父ちゃん、もうええかげんにしいやぁ~!」

 そう言う妻の晶子の顔を見ても、最早誰のことか分からなくなっていました。

 それから更に数日後、夢見堂のショーウインドーには、またその中古パソコンが無造作に置かれていたと言うことです。

 どうです、欲しくありませんか? 今なら安く買えるかも知れませんよ。フフフッ。

 

        思うこと直ぐに打ち出すパソコンに

        吸い出されたら呆け出すのかも

 

     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆

 

 これも何かを思い出しながら10年以上前に書いたものである。

 

 もしかして長い休みを取っていた時のことで、書くことに些か疲れていたのかも知れない。

 

 そんな作家が主人公のドラマを観ていたからかも知れない。

 

 それに、もっと前に歩いたことのある大阪・日本橋の中古屋街を思い出したのだろうか?

 

 薄暗く細い裏通りに、元は大手電機メーカーに技術者として勤めていた店主が修理しながら売っている店があった。

 

 ちょうどLDプレイヤーを探していた頃であった。

 

 以前に買ったLDが20~30枚あり、使っていたLDプレイヤーが壊れたので、まだある内に買っておきたかったのである。

 

 その頃の同僚に連れられて初めて行った店には何台か並んでおり、1番安いパイオニア製のプレーヤーが19800円であった。

 

 リモコンは無かったが、使っていたプレイヤーがヤマハ製で、バッタ屋で買った所為か、ディプレーが点灯しない代物だったので、それに比べれば十分であった。

 

 そのLDプレイヤーも買って15年以上経ち、CDは読まない等、完全には機能を果たしていないが、それ以後ネット等で買った中古の電化製品もそんな感じである。

 

 それはまあともかく、AIの発達で、今は色々な機能が電化製品に盛り込まれ、便利になっているが、他人から操られる時代になっている。

 

 韓国ドラマでは脳内に埋め込んだチップに信号を送り、外から人を操るところまで出て来る。

 

 我が家では子ども等がiPhoneに話し掛けて遊んでいる。

 

 でも、あんまりそれに頼り過ぎると、上のお話のようなことにもなりかねないから、不便でも、中々出て来なくてむずむずしても、やっぱり少しは自分で動き、考えなくっちゃね。フフッ。